2015年04月25日

ハーバード・ビジネススクール (51)

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 ハーバード・ビジネススクールAMP (上級管理者プログラム)のエッセンスをお届けします。

 究極の相乗効果 − サービス・プロフィット・チェーン

 AMPでは、すぐれたサービスが長期的な増益に直結することを示して、質の高いサービスの提供がいかに重要かを教えている。

 そして、AMPのありがたいところは、上記の相関関係にまず学生の目を開かせ、その相関関係をどう利用すればいいかを教えてくれることである。

 AMPは、人間(顧客と従業員の双方)を重視し、人間をどう結び付ければ、サービス・プロフィット・チェーン (サービスと利益の連鎖) がうまく機能して業績が伸びていくかに重点を置いている。

 AMPのアール・サッサ−教授は言う。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

顧客ロイヤルティーは、長期的な利益の伸びに大きく貢献します。そして、顧客ロイヤルティを勝ちとるには、企業は何よりもまず、顧客を繰り返し喜ばせねばなりません。従業員の満足と顧客ロイヤルティと企業の収益性がしっかり結びついたものが、サービス・プロフィット・チェーンです。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

 このチェーンは次のようにつながっている。

 ● 利益と成長は、主として顧客ロイヤルティによって刺激される。
 ● 顧客ロイヤルティは、顧客満足の直接の結果である。
 ● 顧客満足は、顧客に提供するサービスの価値に大きく左右される。
 ● 価値を生みだすのは、仕事に満足し、忠誠心があり、生産性が高い従業員である。
 ● 従業員満足はおもに、質の高いサービスを提供して顧客に喜んでもらうこと、それができる会社の方針から生まれる。

 顧客満足は利益極大化の決定的要因であり、顧客を満足させるといいことが4つある。
 1. 顧客が離れていかなくなる。
 2. 顧客と自社の関係が深まる。
 3. 顧客は値段をあまり気にしなくなる。
 4. 顧客が友人知人に自社の製品やサービスをすすめてくれる。

 顧客サービスの質を左右する動態的要因がすべて、密接にリンクされている。そして会社は、従業員を導き、育て、サービスの現場に権限を与え、従業員は顧客を満足させて収益を伸ばすことに重要な役割を果たしている。それが理想である。

 従業員を満足させることができれば、従業員は会社に長くとどまり、仕事には一段と熱が入り。。。以下、メルマガよりお楽しみ下さい。

 (引用: ハーバードAMPのマネジメント 世界最強のビジネスエリート養成コース )

 

 ( 英語で読み解くハーバードAMP )


( 映画 『 ペーパーチェイス 』 ハーバード・ロースクール(法科大学院)の青春を描いた作品。英語の習得に最適です。)

 

2015年02月24日

ハーバード・ビジネススクール (50)

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 ハーバード大経営学部が企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースです。


 4 SWATチーム・サービス

 市場を問わず、あらゆる企業のあらゆるマネージャーが次の問いに答えを見つけなければならない。自分のチーム、自分の組織が、あらゆる面で高水準の品質を達成するにはどうすればいいか?

 だいたい返ってくる答えは、お決まりの文句でリップサービスにすぎない。多くのマネージャーにとって、品質は、理詰めではいかない問題であり、ファイナンスやマーケティングやテクノロジーの戦略的方向にしにくい問題だからである。

 ほとんどの人が認めたくないだろうが、もっともよく見られる品質に対する取り組みは、しっかりした品質基準をつくり、その基準を守るよう、しかるべき人を配置すればいいというもので、あまりに表面的であり、単純すぎる。

 幸いなことに、すぐれた品質を達成するということがいかに重要かを認識している人は、品質改善のアプローチにもっと創意工夫を凝らす。彼らは強い決意で、質の高いサービスの基本要素とダイナミズムを理解し、目ざましい成果を出せるようにジグソーパズルのピースを並べ替えようとしている。

 通念や慣行をひっくり返し、新しいやり方を試すことも恐れない。

 何年かまえ、世界的なコンサルティング会社のCEOから、クライアントに完璧なサービスを提供することが自社にとっていかに重要か、という話を聞いた。そのCEOはえんえんと熱弁をふるった。

 うちでは、あらゆる業務、規則、手続き、指示が縦横に交差するシステムが出来上がっている。すべては、最高水準の顧客サービスを達成し、維持するために設計されている、と。

 しかし、そのCEOは、だからわが社のサービス体制は万全なのだと自慢するのではなく、どんなに精妙巧緻なシステムがあっても、システムだけで問題がすべて解決するだろうかと、強い疑いを持っていた。そして、その懸念を説明するのに、おもしろい話をしてくれた。

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 私がM&Mのチョコレートを買うようになってから40年以上になる。子供の頃に病みつきになってしまってどうにもやめられないんだ。たぶん、これまでに買ったM&Mチョコレートは5千袋じゃきかないだろう。ところが一度だって、ひどいものをつかまされたことがない。

 匂いや味がおかしいもの、つぶれたもの、変色したものなど、ただの一袋もなかった。品質管理がしっかりしているからだと、みんな思うだろうが、私は長い間経営の仕事をしてきたから、そんな単純なことじゃないとわかる。

 マーズ家(M&Mの創業一族)は品質を会社の礎石に据えたんだ。経営者と従業員のやることすべてが、そこに立脚している。それは掟であり、宗教であり、長い月日のうちに習慣になってしまったのだ。

 最高の品質を達成したいと考えている会社はみな、このシステム化できないものの重要性を認識しなければならない。その認識がなければ、どんな基準も手続きもミッション・ステートメントも絵に描いた餅に終わる。それは、ルールは破られるためにある、ということを実証するようなものさ。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
 
 この話にタイトルをつけるとすれば、「SWAT (緊急出動)チーム・サービス」 ということになるだろうか。すぐれたサービスを組織の習慣にしてしまう最良の方法について、斬新な発想と視点...

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 (つづく)

 (引用: ハーバードAMPのマネジメント 世界最強のビジネスエリート養成コース )

 

 ( 英語で読み解くハーバードAMP )


( 映画 『 ペーパーチェイス 』 ハーバード・ロースクール(法科大学院)の青春を描いた作品。英語の習得に最適です。)

 

2015年01月11日

ハーバード・ビジネススクール (49)

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 ハーバード大経営学部が企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースです。

   “参入障壁をつくりライバルから守る”

 参入障壁について、AMPのウィリアム・フルーハン教授に聞いてみた。

 ― サウスウェスト航空、クラウン・コーク、マイクロソフトのケースは、大企業の経営者や大きな事業部門のトップには貴重な教訓になるのでしょうか。もっと小さなプレーヤ−、たとえば限られた地域でオフィス用品を販売している会社の社長などの場合、どうやって参入障壁を築けば良いのでしょうか。


「 基本的に、障壁には二種類あります。一つは、規模の経済、商標、特許、企業秘密、必要資本などで、どれも頑強な参入障壁があります。その壁で新規参入を相当防げますから、激しい競争に巻き込まれずに済み、収益を伸ばすことができます。

 これはどれも相当思い切った冒険が必要で、ビジネスモデルを変えるといったたぐいの話になります。しかし、もう一つ、私が 「マネジメントのちょっとした質」 と呼んでいるものがあります。どんなビジネスでも、変数が20はあります。その半数を正しく調整すれば、15%の利益が得られます。

20の変数すべてを正しく調整すれば、利益率は20%まで高まるでしょう。「マネジメントのちょっとした質」 にもっと注意を払えば、最初にあげたような大冒険をしなくても、利益率を上げることができるのです。

先ほどあなたは、限られた地域でオフィス用品を販売している会社の例をあげましたが、どんな規模の会社でも、マネジメントの質を改善することはできます。業界の競争原理を根底から変えてしまうことはできなくても、競争相手を苦しめることはできます。競争相手が減れば、当然、利益率は上がります。

 フルーハン教授が指摘しているのは、マネジメントの質を高めることの重要性である。ミシシッピ・ケミカルの副社長、エセル・ツル―リーに、参入障壁について話を聞いてみた。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

従業員が果たす重要な役割を、私はまえから理解していましたが、人材育成戦略が唯一の、持続可能な競争優位であるという事実には気づきませんでした。AMPに参加して、はじめて分かったのです。人間以外の企業資産はすべて、お金で買えるし、すぐにほとんど同じものが手に入りますが、よく訓練され、ヤル気満々の人間集団だけでは、そう簡単に行きません。

 キャッチアップには少なくとも10年はかかるでしょう。すばらしい文化というものは、魔法の杖をふるっても、どんなにお金を注ぎ込んでも、一夜にしてできるものではありません。

 そのことが分かってから、私は以前にもまして、競争優位に直結する人材の育成に力を入れるようになりました。さいわい、うちの社員はみな勤勉で、これまで数々の技術革新を成し遂げてきましたが、それで満足するわけにはいきません。課題が3つあるのです。

 ● ビジネスのあらゆる面でイノベーションを起こす。
 ● 顧客に顔をむける。
 ● 市場、戦略、手順、設備、機材などの変化にすばやく適応する。

 この課題を念頭におき、私たち経営チームは、従業員の強みと弱みを分析し、現状とあるべき姿のギャップを測定しました。そして、二つのプログラムをスタートさせました。

 ひとつは “マネジメント訓練・支援プログラム” です。私たちはそれまで、やがて管理職になろうとする人たちへのサポートをまったく考えていませんでした。次の序列から、いちばん優秀な人を選んで、管理職につけていきました。

 たとえその人に、部下をまとめていく経験がなく、スキルがなかったとしてもです。つまり、新しい地位に求められる能力とは関係のない能力にもとづいて昇進を決め、あとは自分で苦労して覚えていきなさい、という姿勢だったのです。

 現在は、次のような能力を高める研修をしています。

 ● 戦略的思考
 ● プライオリティ(優先順位) のつけ方
 ● フィードバックの与え方、受け取り方
 ● コミュニケーション・スキル
 ● 効率的な面接の進め方
 ● 対立の解消
 ● 会社の戦略、方針、手続きについての十分な理解力 (研修をはじめてみると、そうしたものをみんなまるで理解していないことがわかりました)。
 ● ITスキル

    私たちは研修を一括管理するセクションをつくり、研修マネージャーのポストを新設し、あらゆる種類の教育に対して、投入する経営資源を大幅に増やしています。

 もう一つは <能力開発プログラム> です。従業員の評価というのは、昔からやり方が決まっています。大体、現在までの仕事ぶりを評価し、成績表を渡してそれでおしまいというやり方です。これではいけないと思い、私たちは業務評価と能力開発を結び付けるシステムを考えたのです。

 まず、360度評価を取り入れました。同僚と上司と部下と顧客から評価を受ける制度です。点数をつけるのではなく言葉で評価するように、上層部が指摘した現状とあるべき姿のギャップについて意見を述べるように、抽象論ではなく具体例をあげるよう、指導しています。

 いまのところ、360度評価の対象外になっている人だけを研修していますが、いずれ対象者にも研修を受けてもらいます。このシステムのよいところをみんなに理解してもらい、最終的には全従業員を360度で評価したいと思っています。

 自分の強みと弱みがわかったらすぐに、当人は上司といっしょに、力を伸ばしていく分野を一つから3つ選びます。私たちは、上司と部下がいっしょになって、きちんとスケジュールを立てて、能力開発プランを作成するよう研修しています。

セミナーに参加したり、ためになる教材を読むなど、昔ながらの学習方法も取り入れていますが、仕事をしながら成長していくことに重点をおいています。たとえば、特殊技能を身につけられる活動に参加させたり、プロジェクトチームのリーダーに任命したり、一時的に他の部署で働いてもらったり。

 必要な経験を積むのにもってこいの社会貢献活動に参加させることまでしています。私たちは成績表を渡す代わりに、能力向上とキャリアアップへの跳躍台となるツール、会社の競争力に不可欠と思われるスキルをみがくツールを提供しているのです。

 こうした努力の成果が出てくると、うちのCEOはこう考えました。当社の戦力が適宜、有効に知的に進化していかなければならないとすれば、上級幹部に前線を離れてしずかに考え、構想を練り、計画を立てる時間がもっと必要だと。

 これはさっそく実行に移され、上級幹部は月に4日、仕事場を離れ、読書やプランニングに専念するルールができました。

 遠くに行かなくてもいいよう、本社の敷地内にある別のビルのなかに、専用のスペースを設けました。また、自己啓発の本を集めて図書館もつくりました。お気に入りは 『孫子とビジネス術』 です。古代中国の兵法家の戦略を現代ビジネスの問題に応用したもので、AMPに行ったときにむさぼり読んだものです。

 また、経営陣は定期的に会社を離れ、新しいビジネスチャンスと会社の方向を考えるために会合を開いています。年に一度、経営幹部と取締役が社外で合宿し、戦略などの問題を徹底的に話し合っています。

 私たちの目標は、すばらしい文化をつくるために、組織のあらゆるレベルで、研修と評価と能力向上の好循環を起こしていくことです。私たちを取り巻く世界がどんどん変わり、つねに新しいスキルと戦略が求められているときですから。

 私たちの努力は実を結びはじめています。持続可能な競争優位の源泉となるいろいろな分野で、改善がみられます。

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  “ 衆に抜きん出る術 ”

  マイクロソフトやナイキなどの会社は、イノベーションの力で参入障壁を築き、それを維持している。イノベーションの余地は産業の性質によって決まるという説があり、なかなか人気を集めている。差別しようがない製品を販売している成熟産業は、創造力を発揮する余地がほとんどなく、したがって、確固とした競争優位を築きにくいというのである。

 これは間違っている。どれほど定型化したビジネスでも、独創的なアイデアを活かすことはできる。いやむしろ、同業者がみな、狭い視野で小競り合いを繰り返しているなら、ちょっとしたイノベーションでライバルに大きな差をつけることができる。

 ここから重要な結論が導き出される。めざましい成長を妨げているのは、産業の性質ではなく、市場で差別化をはかれない視野狭窄のマネージャーである。

 ウルトラ・ダイヤモンド・シャムロックの副社長、ポール・アイスマンの話を聞いてみよう。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

 うちのビジネスは石油精製です。原油を買ってきて、そこからガソリンをつくる、それがうちの仕事です。バイオやIT産業のように、華々しい産業でも急成長産業でもありませんが、だからといって、ぼんやりしているわけにはいきません。

 でも、どうすれば大きく成長し、株主を喜ばせる収益を上げることができるのか。私たちの産業では、強力な競争相手がみな、同じような製品を売っているのです。しかし、この世の中には、同じような条件下で離れ業をやった人、限られた任期中に奇跡を起こした人がいます。

 そういう人たちから、何か学べるはずです。そうしたリーダーは、アイデアとエネルギーと熱気をいくら注ぎ込んでも効果がなさそうな会社を率いて、それをイノベ―ティブで積極果敢なカテゴリー・リーダーに変えてしまったのです。

 組織構造と斬新な商品提案で優位に立った、そうした会社を調べていくと、共通点が3つあることがわかりました。

1.業務効率の高さ − そうした企業ではみな、ビジネスのあらゆる構成要素が機能的にリンクしています。職能や分野を問わず、従業員同士、部署間、従業員と経営陣の間のコミュニケーションがすばらしく、一致協力体制が整っています。
 
  会社を経営している人、会社のどこかを動かしている人ならだれでも、相互シナジー効果が自然には起こらないことを知っているでしょう。コミュニケーションが当たり前の生活になる環境をつくらなければならないのです。

2.使命感 − 仕事をやって代金を回収するだけではダメです。経営陣も従業員も、差別化はできないとあきらめている同業者のなかで、自分の会社をひときわ輝かせる使命が自分にあると、認識していなければいけません。

3.イノベーションに集中 − すぐれた企業は、ビジネスのあらゆる要素で − 価格設定でも、マーケティングでも、購買でも、製造でも、配送でも − いちばんわかりやすい当たり前のやり方が、いちばん効率がよく生産的なやり方とは限らないことを知っています。

だから、イノベ―ティブなやり方を見つけるまで、当たり前のやり方を掘り下げていきます。すぐれた企業は、そうして、競争相手に大きく差をつける道を発見しているのです。

 私の目からみると、こうしたことはすべて、知の力をどこまで活かすかという問題に行き着くと思います。偉大な企業は、どうすればもっとうまくできるかを学びつづけ、学んだことを組織の隅々まで行き渡らせています。

私はハーバードAMPから帰ってきてから、<製油所横断学習> と名付けたシステムをつくって、すばらしい企業の学習方法を真似しています。うちでは全部で7つの製油所がありますが、一つの製油所で確立されたベスト・プラクティスをすべての製油所に広げていこうと考えたのです。

イントラネット上のチャットルームが学習の場になっています。技術関係の人たちが、新しいコンセプトや最新情報を交換しあうフォーラムがあるのです。

石油精製はたしかに華々しいビジネスではないかもしれないのですが、業界のリーダーになって高収益をあげる道はかならずあります。私たちはそこに焦点を当てています。

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2014年12月07日

ハーバード・ビジネススクール (48)

【 ハーバード・ビジネススクールの教授陣の著作より紹介します。連載記事はカテゴリー欄から通してご覧ください 】

 ハーバード大経営学部が企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースです。

   7-S モデル (3)

 “7−Sモデルを使って組織を変える”

 組織改革を提案するツール、改革プランを評価するツールとして、7−Sモデルと使うときには、ポイントが3つある。

● 7つのSはすべて、つながっている。それを総合的に調整することなしに、前進することはむずかしい。組織改革に失敗したケースをみると、だいたいが、それぞれのSが果たす役割を十分に認識していなかったことが原因である。

● 変革のスタート地点が決まっているわけではない。どのSが組織効率に最大のインパクトを与えるかは、一概には言えない。スタッフィングが決定的に重要な場合もあるし、システムや構造が戦略の遂行を妨げている場合もある。

組織の整合性を診断してはじめて、どこに力を集中すべきかがわかる。

● 総合的な診断によって、どのSを変える必要があるか、わかってきたとしても、改革の難易度はSによって違う。 「ハードのS」 と呼ばれる戦略、構造、システムが、比較的変えやすいと言われている。

 実際、ハードのSを変えることから改革に着手するリーダーが多い。一方、「ソフトのS」 と呼ばれるスタッフィング、スキル、スタイル、共有する価値観は、いきなり変えるのはむずかしく、かなり時間がかかるのが普通である。

 しかし、優良企業はハードのSと同じくらい、ソフトのSにも注意を払っていることが、調査で分かっている。

   “競争相手の撃退方法”

 マイケル・デル (デル・コンピュータ創業者)も、ビル・ゲイツも、セルゲイ・ブリンも、
「 人より上手にネズミ捕りを作れば、世の人々があなたのところにやって来る。 」 というエマソンの言葉に全面的に同意するだろう。

 しかし、話題の新製品を市場に投入するには、かなりのリスクがともなう。「世の人々があなたのところにやってくる」 とすぐに、他の会社がもっと性能が高くて魅力的なネズミ捕りを低価格で売り出す。

 そうなると、あなたのリードはみるみる縮まっていく。

  数えきれないほどの国内市場、国際市場でこうしたことが繰り返されている。経営者はだいたい、経済上の進化論 (適者生存)の避けられない副産物として、これを受け入れている。しかし、それを避けられぬ運命として受け入れず、競争相手を撃退し、長期にわたって高収入をあげ続ける道を発見する企業もある。

 クライン・コーク&シールのCEO、ジョン・コネリーは、競争の激しくないグローバル市場に進出するローリスク・ハイリターン戦略を模索していたとき、発展途上国の政府と開拓権の交渉をすればいいという画期的なアイデアを思い付いた。

  産業基盤を整備する見返りに (といっても、アメリカで旧式化した設備をリサイクルするだけの話だが)、同社の中核製品である缶と王冠(キャップ) を一手に製造販売する権利を与えてほしいという交渉である。

 じついいいところに目をつけた。交渉は次々と成功し、クラウン・コークは新興国の缶・王冠市場を独占した。

グローバル市場のジョニー・アップルシード (アメリカの伝統的な開拓者、果樹園王) ともてはやされたコネリーが引退した1989年、クラウン・コークの海外事業拠点は62カ所まで増え、営業増益の54%を海外市場が占めていた。

AMPのウィリアム・E・フルーハン・ジュニア教授は言う。

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 偉大な企業は資本コストを大幅に上回る収益を上げています。多くの場合、参入障壁を築くことによってです。自社の顧客基盤を食い荒らされないよう、他社の侵入をブロックできれば、優勢は揺るぎないものになります。

 厚い壁があれば、競合他社は挑戦する意欲を失い、挑戦したとしても、市場に十分食い込むには大変な犠牲を強いられます。その結果どうなるかと言えば、売上高と利益率は高水準で推移し、資本コストをはるかに上回る収益を確保できるのです。

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 “ビル・ゲイツ流の持続可能な競争優位”

経営者はこれまでずっと、希少性が競争優位になると考えてきた。ところが今日、いろいろな産業を見回すと、遍在性が持続する優位を創りだしている。言い換えれば、どこにでもあるものほどいい、ということである。

ハイテクなどの産業には、絶対数のルールがあてはまる。簡単に言うと、十億ドル企業になっても、顧客基盤は比較的小さいまま、ということがありうる (たとえば、アップルの技術対ウィンドウズ/ インテルのユーザー基盤)。

 このような場合、ビル・ゲイツのお気に入りのコンセプトの一つ 「インターネットの外部性」 が幅をきかす。製品の価値は、その設置基盤の規模に応じて高まるという法則である。電話が世界に一台しかなかったら、電話の価値はゼロである。

 それが2台に増えても、価値メーターの針はほとんど動かない。ところが電話の設置数が大幅に増えると、電話利用が爆発的に増え、関連製品が次々とつくられるようになり、電話の価値がぐんぐん高まっていく。

 インテルがアップルに対する優位を保っている秘密はここにあり、エグゼクティブや起業家が事業育成やキャリアアップの効率を高めるうえで、貴重なヒントがここに隠されている。

 事業に成功し、市場で確固とした地位を築きたいと思っている企業でも、気を抜いてはいけない。持続する競争優位を手に入れるためには、さらにアクセルを踏み込まなくてはいけない。

 ハーバード・ビジネススクールのマイケル・ポーター教授は、市場のダイナミクスを解明し、競争と戦略の道しるべを提示している。

 新しい市場への参入をうかがう経営者は、次の5点をしっかり把握すべきだと、ポーター教授は説く。

● 買い手の力はどうか?
● 売り手の力はどうか?
● 新規参入の動きはどうか?
● 代替製品、サービスの脅威はどうか?
● 競争の激しさ、競争の力関係はどうか?

ポーター教授によれば、その産業の魅力度を測るには、5つのチェックポイントがある。

● 製品・サービスの供給者の数が少なく、強い力をもっているなら、その産業には魅力がない。
● 次から次へと新規参入があるようなら、その産業には魅力がない。
● 製品でもサービスでも、代用できるものがたくさんあるなら、その産業には魅力がない。
● 同業者間の競争がし烈なら、その産業は魅力がない。
● 買い手の数が少なく、強い力をもっているなら、その産業は魅力がない。

 ポーター教授の研究は、どんな市場でも、繁栄する道は基本的に2つしかないことを示している。強力な差別化戦略をとるか、低コスト生産者になるか。。。市場のリーダー、そして新たに参入して成功した企業は、正しい戦略を選択している。

 機内食や指定席などを廃止して、低コスト・低料金を実現したサウスウェスト航空がその好例である。同時には満たせない条件を取捨選択することで、ライバルに大きく水をあけたのである。

 ライバル会社の業績が航空業界の乱気流に揉まれているなか、サウスウェストは一貫して利益を上げ続けた。はたから見ると、いとも簡単そうに見える。ユナイテッド航空のドル箱路線である西海岸に、サウスウェストが進出を決めたとき、豊富な資金力を背景に自信満々のグローバル企業がだまって見ていたわけではない。

 ユナイテッドの経営陣は、サウスウェスト航空成功の秘密を探り、重要なポイントを3つ見つけ出した。

1. 運航機種をボーイング737一種に絞って、整備、部品、燃料のコストを削減した。
2. ハブ・アンド・スポーク方式ではなく、ポイント・ツー・ポイント (ハブ空港を経由しない二点間直行) により、乗務員の数を減らし、ロジスティックスを簡素化した。
3. 大都市の空港ではなく、すこし不便で混雑していない空港を使って空港使用料を下げ、折り返し時間を短縮した。

そんなことを真似するのは簡単だと、ユナイテッドの経営陣は思った。そして、さっそく真似をした。さまざまな改革におよそ5億ドルを投じて。それでサウスウェストを撃退できるだろうと思いきや、サウスウェストと戦っている間に業績はどんどん落ち込み、ついに巨額の損失を計上する羽目になった。

 その後の調査により、敗因がわかってきた。サウスウェストがひよっこから恐るべき鷲に変身した見えざる要因を、ユナイテッドは見落としてきたのである。

サウスウェストのCEO、ハーブ・ケレハーは、各種業務間の連携とチームの一致団結をはかることに全力を集中し、従業員とテクノロジーとシステムの間にダイナミックな相乗効果を生み出していたのである、。

 ユナイテッドは、空港折り返し時間 (着陸してから、乗客を降ろし、機体を点検整備し、必要なものは積み込み、あらたに乗客をのせて飛び立つまでの時間) の30分の壁をどうしても破ることができなかった。

 ところがサウスウェストは、同じ飛行機を使い、同じ空港を使い、同じ数の整備員を使いながら、その半分以下の時間で折り返すのを定例業務にしてしまった。

 サウスウェストは、バリュー・チェーン (その連鎖の中には、驚くほど士気が高い従業員も入る) の隅々まで、競争優位が浸透していた。CEOのケレハーは現場に足しげく通った。わからないことは質問し、出された質問には必ず答えた。

 従業員がなによりも大切であることを、ことあるごとに示した。だからこそ、サウスウェストの実力の証明であり、強力な資産である愛社精神、骨身を惜しまぬサービス精神、チーム・スピリットが生まれ、生産性が上がった。

 簡単に言えば、会社の隅々までみなぎる勝利への意欲が、サウスウェスト成功の原動力だったのである。
折り返しの15分の差など些細なことに思えるかもしれないが、その些細な時間に毎日の便数をかけてみれば、どれだけ大きな競争優位になるかわかるだろう。

 サウスウェストは一機あたりの運航効率を上げ、利益を増やしているのである。そして、格安運賃のリーダーとして航空業界に君臨している。

 (つづく)

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 (引用: ハーバードAMPのマネジメント 世界最強のビジネスエリート養成コース )

 

 ( 英語で読み解くハーバードAMP )


( 映画 『 ペーパーチェイス 』 ハーバード・ロースクール(法科大学院)の青春を描いた作品。英語の習得に最適です。)

 

2014年10月18日

ハーバード・ビジネススクール (47)

【 ハーバード・ビジネススクールの教授陣の著作より紹介します。連載記事はカテゴリー欄から通してご覧ください 】

 ハーバード大経営学部が企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースです。

   7-S モデル (2)

 “スタッフィング(Staffing)”

スタッフィングとは、人材はどう育成するかの問題、具体的に言えば、新入社員をどう教育し、会社にどう溶け込ませ、一体化するか、最終的には、社員の力をどう活かしていくかという問題である。

 経営者の口癖のようになっているセリフ 「社員がもっとも大切な資産」。それが本当なら、組織の力はおおむね、組織内にどういう人間がいるか、組織がその人間をどう育てていくかによって決まってくる。

 すばらしい業績をあげている企業は、組織にピッタリの人間を採用し、潜在能力を引き出すのに必要な研修と機会を与えることに、大変な努力を払っている。自社のスタッフィングに関して、次のように自問してみよう。

● 組織はどのようなやり方で人材を募集し、採用した人間の能力を開発しているか? (正式な研修制度やメンター制度はあるか)

● 経営陣になにか偏った特徴があるか? (経歴、学歴、年齢、性別、国籍、得意分野、社外での経験など)
● 組織内のどこに最強のリーダーがいるか?リーダー不在の部署はないか?

 “スキル(Skill)”

スキルとは、人間、やり方、システム、技術など、組織の総合力であり、その組織ならではの力のことである。その会社のお家芸をスキルとみなす人が多い。

 スキルを新しい市場にどこまで応用できるかによって、ビジネスチャンスの幅が変わってくる。たとえば3Mは、画期的な接着剤技術を幅広い市場に応用している。しかし、新しいスキルや異質なスキルが必要になったときには、それまでのスキルが足かせになる場合もある。

 消費者の優先順位が変わったとき (たとえば質から価格へ)、未経験の市場へ参入するときなどがそうである。その場合は、新しいスキルを習得し、古いスキルを忘れる必要があるかもしれない。

 自社のスキルに関して、次のように自問してみよう。

● 自社がもっとも得意とするもの、他社には絶対にマネができないものは何か?
● 会社はどんな新しい能力を開発する必要があるか?先のことを考えると、どんな能力を捨て去る必要があるのか?

 “スタイル (Style)”

スタイルとは、経営トップのリーダーシップの姿勢であり、組織全体の仕事に対する姿勢である。スタイルは組織内の一人か二人のリーダーの性格で決まることが多いが、ここで問題にしたいのは経営陣の行動パターンである。

 たとえば、どのように時間を使っているか (いつも会議室にいるか、それとも、いつも会社のなかを歩きまわっているか)、どこに目を向けているか (会社の内か外か) という問題である。

 自社のスタイルに関して、次のように自問してみよう。

● 経営トップはどういうやり方で意思決定をしているか? (従業員参加型か、それともトップダウン方式か? 現実重視か、それとも願望重視か?)
● マネージャーは何に時間を使い、どこに注意を向けているか? (正式な会議か、それともインフォーマルな対話か? 現場か、それとも研究所か?)

“共有する価値観 (Shared Values)”

共有する価値観とは、組織の行動原理となる価値観のことである。それは会社の概要に書いてある企業目的を超えたもの、組織内の人間にとって何よりも大切なものである。みんなが共有する価値観があると、社内、社外がどれほど揺れ動こうと、軸がぶれない。

 自社の共有する価値観に関して、次のように自問してみよう。

● 会社がなぜ存在するのか、全社員が共有の理解をもっているか?
● 会社が掲げるビジョンについて、全社員が共通の理解をもっているか?
● 経営陣がいちばん重視しているもの、いちばん軽視しているものは何か?
(目先の業績か、それとも長期的な発展か、社内の問題か、それとも社外の問題か?)
● これだけはうちにしかないと、社員が自慢できるものは何か? (品質へのこだわりか、社員を大切にすることか?)

“7-Sモデルを使って、改善の機会を見つける”

組織の行動様式と業績を決定する要因を明らかにするという複雑な問題に取り組むとき、リーダーやコンサルタントはよく7S モデルを使う。このモデルの根底にある理論は、単純である。

 組織のいろいろな部分がうまくかみ合っていなければ、次から次へと問題の対応に追われ、持てる力を十分に発揮できない。うまくかみ合っていれば、相乗効果が加速し、すばらしい業績をあげることができる。それだけのことである。

 組織の問題を診断するとき、7Sモデルの使い方はいろいろあるが、大事なのは、それぞれのSがどれだけかみ合っているかを分析することである。たとえば、

● スタッフィングのプロセスは、組織が考えているスキルの開発を支援するものになっているか?
● 構造は、組織が追求する戦略にぴったり合っているか? 

7つのSがちぐはぐになっている例を2つ紹介しよう。

● ある小売業の場合。顧客を感動させるサービスを売り物に競争していこうという戦略を立てながら、マネージャーはもっぱら収益目標の達成度に応じて報酬をもらっている。トップダウンンのスタイルをとっているため、感動的サービスの提供に必要な現場での意思決定ができない。

● ある投資銀行の場合。資産運用、投資信託の販売、株式の売買など、総合的なサービスを提供して、顧客と幅広い関係を構築しようとしているが、会社全体の業績ではなく、各部門の業績だけが査定される報酬体系になっている。

また、幅広い金融知識を持った人はたくさんいるが、社内外の対人関係のスキルをもった人がほとんどいない。

 双方のケースとも、7-Sモデルを使って分析すれば、会社の成長を妨げているエリアがくっきり浮かびあがってくる。組織は外部環境 (製品市場、労働市場、社会情勢、政治情勢など) の変化には常に注意を払っていなければならない。

 戦略を立て、残りの6つのSをその戦略に沿って調整したときには、競争環境がすっかり変わっているという問題がよく起こる。

たとえば、すべてのSの照準を製品の差別化戦略に合わせている組織の場合、消費者の購買基準が価格にシフトしていることがわかったら、すぐに戦略を変え、あとのSもすべて方向を転換しなければならない。

 組織の業績が低迷してきたら、リーダーは7つのSのどこがちぐはぐになっているかを見つけ、ちぐはぐになった原因を分析し、その原因を取り除く方策を考えなければならない。

 (つづく) 

エヴァの世界観を凝縮したカードが、ついに登場。


 (引用: ハーバードAMPのマネジメント 世界最強のビジネスエリート養成コース )

 

 ( 英語で読み解くハーバードAMP )


( 映画 『 ペーパーチェイス 』 ハーバード・ロースクール(法科大学院)の青春を描いた作品。英語の習得に最適です。)

 

2014年08月22日

ハーバード・ビジネススクール (46)

【 ハーバード・ビジネススクールの教授陣の著作より紹介します。連載記事はカテゴリー欄から通してご覧ください 】

 ハーバード大経営学部が企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースです。

   7-S モデル

 経営者は多くの意味で組織の設計士である。組織のさまざまな構成要素を組み合わせ、統合し、戦略目標と目的に向かって組織を駆り立てる青写真が必要である。

 このことを念頭におき、顧客サービスで業界のリーダーとなり、競争優位を追求する自分を想像してみよう。このとき、直面する問題がいくつかある。

 ● 超一流のサービスを提供したいという情熱を、従業員の間にどう植え付けるか?
 ● どういう給与体系にすれば、従業員の顧客満足への貢献を反映できるか?
 ● 顧客サービスの研修に投資すべきか否か?
 ● 社員の採用は、顧客志向の強い人に限定するのがベストかどうか?

 話を複雑にするため、あなたが統括する事業にはたくさんの事業所があると仮定する。

 ● サービス基準を統一するために、各事業所をどうマネジメントし、連携させていけばいいか?
 ● グローバルな視野から互いに協力しながら、担当地域内のビジネスチャンスの発掘に起業家精神をもって取り組むよう、各事業所のトップを導くにはどうすればいいか?
 ● あなたの目標を達成するには、どういう価値観、どういう報告制度、どういう情報システムが必要か?

 競争優位を確保するには、会社をどう組織し、どう動かすのがベストなのか。どこから手をつければいいのかと悩むあなたに、分析と行動のためのツールを紹介したい。

 ハーバードとスタンフォードのビジネススクールの教授と、マッキンゼーのコンサルタントがチームを組んで開発した 「7-S モデル」 である。

 このモデルの考え方はこうである。

 組織効率を考えるときには、戦略 (Strategy)、構造 (Structure)、システム (System) 、スタッフィング(Staffing)、 スキル(Skill)、スタイル (Style)、共有する価値観 (Shared Value) の7つのS の要素の理解が欠かせない。

 組織効率を高めるためには、この7つのSをぴったりかみ合わせ、緊密に連動させなければならない。つまり、それぞれのSが他のSと一貫性があり、相互に補強しあうものでなければならない。

 “戦略 (Strategy)”

  戦略とは、持続可能な競争優位を確保するために、組織が策定するプランであると考えてほしい。いくつか例をあげてみよう。

 ● コストで競争する。
 ● 顧客により大きな価値を提供する。
 ● 他社にはない製品機能をつける。
 ● いままでにない販売・サービス方法を考え出す。

 エッセンスを煮詰めれば、戦略とは、「 自社の強みを最大限活かして、どこで勝負するか 」 ということの組織的意思統一であり、そうあるべきである。

 自社の戦略について、たとえば、 こんなふうに自問してみよう。

 ● 持続可能な競争優位の源泉になるものは何か? 
(コストか、品質か、サービスか、技術力か?)
 ● 戦略上、何を最優先すべきか?
(新しい市場への参入か、新製品の開発か、発売を急ぐことか、顧客サービスの改善か?)

 “構造 (Structure)”

構造とは、組織構成員の活動をうまく機能させるための枠組みである。大事なのは、何を誰とやるかを明確にして、従業員がやるべき仕事に全力を集中できる構造をつくることである。

 リーダーが直面する難問は、専門家の要請と総合化の要請のバランスである。たとえば、製品開発のプロセスでよく問題になるのは、製造と設計とマーケティングの人間がばらばらに動き、十分な意思の疎通が図れないことである。この種の問題を解決するには、構造を変えるのが一番である。

 基本的に、職能別、事業部別、マトリックス型、ネットワーク型の4つの形態がある。

 いちばんよく見られる構造が職能別組織で、事業遂行に欠かすことのできない主要業務の種類別に人員を配置するやり方である。通常、製造と販売は部門が分かれ、それぞれの長が経営トップに報告する。

 この形態は、環境が比較的安定していて、部署間の連携がまだ大きな問題にならない小さな組織の場合はうまくいく。各部署が担当分野の専門知識を深めていける利点があるが、部署間の協力がうまくいかない欠点がある。

 この問題を解決するため、職能横断チームをつくる組織が多い。

 事業部制は、製品別、地域別、市場セグメント別に組織をつくるやり方である。各事業部のなかに、製造、マーケティング、研究開発など、必要な機能がすべて揃っている。

 各事事業部への経営リソース(資源)の配分、事業部間の調整、長期戦略の策定は本社がおこなう。各事業部が必要なリソースをすべて手元に持っているので、製品や市場や地域に特有の脅威やチャンスに、すばやく効率的に対応できるメリットがある。

 半面、大きな欠点が二つある。事業部ごとにリソースをもつため、会社全体でみると重複という無駄が生じ、スケール・メリット (規模の経済) をうまく活かすことができない。

 また、事業部間の協力がむずかしく、コストがかさむ場合もある。たとえば、いろいろな事業部の営業マンが同じ顧客に電話をかけ、混乱や不和が生じることがある。

 マトリックス型は、職能別と機能別のいいところをうまく引き出そうとしたものである。どちらのマネージャーも組織内で同じ権限をもち、部下は双方に報告義務を負う。

 これによって、専門的な知識や技能を活かしながら、事業部の独立性を維持できるという利点がある。しかし、どちらに主導権と説明責任があるのか明確ではないため、責任の所在がぼやけたり、激しい対立を生むこともめずらしくない。

 マトリックス構造をうまく活かすには、信頼しあい、期待しあい、刺激しあう環境をつくらなくてはいけない。

 90年代になって、俄然注目を集めたのがネットワーク型である。いろいろな種類があるが、いくつか共通点がある。

 第一に、比較的規模が小さく、なかば独立したグループ同士が、共通の目標を達するために、一時的あるいは長期的に手を組んで仕事を進めていくことである。 (プロジェクトチームがその好例)

  第二に、組織の内外を隔てる壁は風通しがいい。取引先や顧客とパートナーの関係になるため、組織の内と外がぼやけてくる。

 第三に、正式な肩書よりも、持っている力やリソースがものをいう。転変めまぐるしい今の時代に、柔軟に変化に対応し、変身していけるところが、ネットワーク型組織の最大の強みである。

 大体どの組織でも、以上あげた4つの構造をいろいろ組み合わせている。リーダーが肝に銘じておくべきことは、次の2点である。

 一つ。部下が大事な仕事に力を集中し、さまつなことにエネルギーを消耗しないで済むようになるかどうかは、構造の選択で決まる。

 二つ。どの下部組織が最大のパワーと影響力をもつかどうかも、構造の選択で決まる。
自社の構造に関して、次のように自問してみよう。

 ● 自社の構造の基本形態は何か?
 ● 権限はどのように集中しているか、分散しているか?
 ● 下部組織の相対的な地位と権限はどうなっているか?

 “システム (system)”


次に、組織効率を大きく左右するのがシステムである。マネージャーはもっぱらシステムに従って判断を下すからだ。多くの組織が職能横断チームをつくっている事実を考えてみよう。

 このアプローチの最大の障害のひとつが、チームの成績を評価せず、個人の成績だけに目を向ける従来の給与体系である。

 リエンジニアリングの場合もしかりである。従来の垣根を横断するプロセスをつくっていくのがリエンジニアリングだが、新しい業務の流れを支援するために、給与システム、情報システム、資本配分システムなど、既存システムをオーバーホールしなかった場合は、ことごとく失敗している。

 自社のシステムに関して、次のように自問してみよう。

 ● 事業遂行に必要なシステムが揃っているか? (たとえば、顧客満足をモニターするシステムがあるか?)
 ● 経営陣は会社経営にどんなシステムを使っているか?
 ● どのシステムにもっとも注意が払われているか?

 (つづく) 
 (引用: ハーバードAMPのマネジメント 世界最強のビジネスエリート養成コース )

 

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2014年08月03日

ハーバード・ビジネススクール (45)

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 “HPウェイ”

 相反するものを組織レベルでどう混ぜ合わせていけばいいかを考えるために、対照的な二社、アップルとヒューレット・パッカード(HP) を比較してみましょう。アップルは浮沈が激しく、HPは好調に業績を伸ばしている。

 どこがその分かれ道になったのかを探るとき、条件反射的に両者の技術力を比べ、どちらが強いかという話になりやすい。しかし、それでは真実から遠ざかる。答えは技術力の中にはないからである。

 アップルとHPは、まったく異質な哲学の上に成り立っていたのである。

 アップルでは、技術 − 同社製品の形態と機能に反映された技術 − が宇宙の中心にあった。競争を勝ち抜き、成長を続けられるかどうか、それを左右するのは技術革新である。

 それが、アップルの絶対的真理だった ( 創業者のスティーブ・ジョブズがCEOに復帰するまえのアップルはとくにその傾向が強かった )。そのため、他社にはない技術が成功のカギになり、従業員個々の努力は二次的なものと見なされた。

 HPは違う考え方をした。創業者のデイビッド・パッカードとウィリアム・ヒューレットは、市場の風向きがどう変わろうと、競争相手が何をつくろうと、それに関係なく競争優位を維持できる組織をつくりたいと考えた。

 その夢を実現するため、対立するものの統合と強化を文化の土台に据えたのである。これが、のちに有名になる “HPウェイ” である。

 HPはどちらかを切り捨てざるをえないと思われるものを両立させてしまった。すなわち、個人プレーに拍手を送り、同時に、チームワークを全面的に支援する環境をつくりあげたのである。

 おもしろいことに、日本人がHPを訪問すると、まるで日本の会社のようだと言う。チームワークと助け合いを大切にするのが、日本企業の特色である。アジアでは、個人よりも集団が優先される。

 それを端的に象徴するのが、日本企業の朝礼だろう。しかし、HPをそのクローンに近いものと見るのは正確ではない。

 HPの人間は組織横断チームでことに当たるよう教えられているが、幅広い権限を与えられた事業部門の成績と個人の成績の両方が評価の対象になっている。最大の違いは、日本企業では、終身雇用が原則だが、HPでは高い成績をあげないと追い出されることだろう。

 アメリカ企業でも日本企業でも、HPのように相反するものを統合できず、個人主義かコンセンサスづくりか、いずれかの極端に走ってしまった企業は、業績不振に苦しんでいる。

 多種多様な競争相手と戦うときに、硬直したものの考え方はかならず弱点になるからだ。

 デイビッド・パッカードはこう言っていた。

「 創業まもない頃、うちのような会社をどう経営していけばいいかと悩むと、私はいつも自分に言い聞かせた。一つの目標に突き進むことにみんなの合意を得られ、会社が何をしようとしているかをみんなに理解してもらえれば、従業員を自由に解き放っても、みんな同じ方向に進んでくれる。」 

 HPでは初めから、価値体系の枠組みのなかに目標が設定されていた。HPの従業員が同僚や顧客にどう接すべきか、その規範となるものがしっかり確立されていたのである。

 デイビッド・パッカードは1989年に、HPの価値観 − HPの中核を成すもの − を次のように書き記している。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

 HPの価値観

 ● 私たちは、適切な手段と支援を与えれば、従業員はよい仕事をやりたいと望み、それをやり遂げるという信念にもとづいて、あらゆる状況に対応する。わが社には、高い能力を持ち、多様性と創意に富んだ人たちが集まっている。

 私たちは、その人たちの努力と会社への貢献を認める。

 ● 当社のお客様は、HPの製品とサービスに、最高の品質と長続きする価値を期待している。その期待に応えるため、HPの人間はすべて、とくに管理職は、お客様のニーズを満たすためにはどんな努力もいとわない熱狂をつくり出すリーダーでなければならない。

 ● 私たちはHPの人間に、心を開いて誠実に仕事にあたり、人から信頼され愛されるようになってほしいと期待している。どんなレベルの人たちも、商道徳のもっと高い水準を守り、少しでも不道徳なものは断固として退けることを期待されている。

 ● 私たちは、組織内、組織間の協力がうまくいってはじめて、私たちの目標を達成できると考えている。

 ● 私たちは、HPの人間の多様性を支持し、イノベーションを刺激する自由闊達な職場をつくる。組織にとって最善であると信じる方法で、各自が臨機応変に目標に向かって進むことを認める。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

  ほとんどの会社は、職能の壁のなかで、人間を採用し、教育し、昇進させていく。HPはその壁を突き崩し、多様な人間の採用からはじまり、上に昇る階段、横へ移動する道がたくさん枝分かれしているキャリアの迷路をつくりあげている。

 HPの人間は会社を辞めるまでに、4つから6つの部署を異動するのが普通である。この異動によって、幅広い知識が身につき、他社がうらやむチームワークが育っていく。同社のマネージャーの一人が、端的にこう説明してくれた。

 「 うちにはキャリアアップのパターンやお決まりの出世コースはありません。何も考えず、ただフローチャートに従って進めばいいという会社はたくさんあります。F点をめざすなら、まずA点に行け。

 B点を通り、C点を通り、D点を通り、E点にたどり着いて、はじめてゴールが見えてくる。上に行くには、決められた通過点をすべて通らなければいけない。そういった会社が多いのですが、うちでは全く違います。

 人事異動のときは、最適の人を最適のポストにつけるだけです。ゴールへの道は一本ではありません。たくさんあるのです。新しい責任ある地位についても、立派な肩書がつくとは限らないし、給料が上がるとも限りません。 」

 AMPのマイケル・ビア教授は、競争がし烈なビジネスでHPが成功した理由を次のようにまとめてくれた。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

 ミッション・ステートメント (企業理念) に美辞麗句を書き連ねるだけでは、HPが達成したことを達成できません。ミッション・ステートメントは、どういう会社になりたいかという意志表示なのです。

 なりたいと思った会社になれる唯一の道は、上の人間が組織を導き、管理している実際のやり方が、ミッション・ステートメントに一致していると、従業員みんなに思ってもらうことです。

 つまり、リーダーがミッション・ステートメントを体現していなくてはならないのです。自分の行動がミッション・ステートメントと一致していないと気づいたリーダーは、行いを改めるか、それができないなら他の人に席をゆずるべきです。

 私が知っている限り、組織を効率的に変える方法はそれしかありません。

 ( つづく )

 ( 引用: ハーバードAMPのマネジメント 正解最強のビジネス・エリート養成コース )

 

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 ( HPウェイ − シリコンバレーの夜明け )



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2014年07月21日

ハーバード・ビジネススクール (44)

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 “ マネージャーのためのレッスン 白か黒か、それとも灰色か ”

 机上演習を実際の戦場で活かすには、戦略上の優位を見定め、それを魅力に活かさなければならない。組織として、文化として、相反するもののどちらかを切り捨てるのではなく、両方のいいところを活かそうとする姿勢があるかどうかが問題だと、ハーバードのマイケル・ビア教授は言う。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎  

 今日の企業環境では、上に立つ人は、組織の力を結集して目的を達成する決意を示すことで尊敬を集めています。そのために必用なのは、ムチではなく、柔軟性と勇気なのです。

 リーダーは成功を妨げている障害に立ち向かうことにも強くなければいけません。その障害が、上司であろうと部下であろうと、企業文化であろうと、自分自身の欠点であろうとも、です。

 リーダーシップには、思いやりと権威の微妙なバランスが必要なのですが、そのバランスを取れないマネージャーが多いのです。そういう人は、間違った内なる声にしたがって仕事をしています。自由放任か、さもなくば厳しい締め付けか、それしかないと思っているのです。そのどこが間違っているか、考えてみましょう。

 自由放任のマネージャーは、自分が絶対になりたくないと思っている暴君よりも、たくさんのトラブルを巻き起こします。自分にも、会社にもです。部下に白紙委任状を与えるのが自慢のタネかもしれません。
問題をよく考え、自分で決断し、決めたことは断固やり抜けと、いつも部下に言っているのでしょう。

 しかし、過半数意見が正しいとする民主主義に傾きすぎると、マネージャーは、目標に向けて会社を邁進させるのに必要な強権の発動を嫌がるようになります。

 そうなると、リーダーシップ不在の組織が出来上がります。そうした状況では、マネージャーは組織内のさまざまな力を結び付けることができず、その結果、部署間の対立、審査部と営業部の対立、技術部と人事部の対立など、衝突のエネルギーを生産的なエネルギーに変えていくことができなくなります。

 自由に柔軟に行動できることはいいことですが、個人の自由を野放図に認めると、わなにはまります。そこにエンパワーメント (権限移譲) のパラドックスがあるのです。

 人間は規範やルールの枠内で仕事をする必要があります。その枠組みがあってはじめて、個人の目標、組織の目標を達成するために、自分の能力やエネルギーをどう使えばいいかわかってくるのです。

 越えてはいけない一線がどこにも示されていなければ、かならず道を踏み外す者が出てきて、その人を処罰せざるをえなくなる。処罰された者がでると当然、部下は委縮し、混乱し、疑心暗鬼になります。

 ヘッドライトを当てられた小鹿のように、金縛りにあってしまうのです。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

 ビジネスに成功する法則のうち、重要にもかかわらず、忘れられがちなのは、相反するものを矛盾として排除するのではなく、双方を統合していけば、すごいパワーが生まれるという法則である。

 個人レベルでも、組織レベルでも、この法則がはたらく (個人レベルでいえば、バランスの取れたマネージャーは、自由か独裁かの両極端にいるマネージャーよりも、すばらしい仕事ができる)。

 しかし、マネージャーは両立するとは思えない二つの概念を持ち出し、白か黒かの誤った二分法で考える傾向がある。

 ● マネージャーは独裁者になるべきか、無政府主義者になるべきか。
 ● 会社は株主を第一に考えるべきか、従業員を第一に考えるべきか。
 ● 会社は権限を集中すべきか、分散すべきか。

 こうした考え方はすべて間違っている。間違っているだけでなく、会社の業績を高水準に保つ障害にさえなる。ビア教授は言う。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

 組織レベルで、硬直した二分法が受け入れられやすいのは、個人のスタイルや見方、文化や構造を、手っ取り早く理解したり説明したりするのに、そのほうが便利だからです。

 しかし、この種の二極思考はものごとを単純化し、誤解をまねきやすく、ビジネスの世界で、白か黒かに分けるのではなく、灰色の度合いを調整するのが理想的なやり方であるという事実を見落としています。

 複雑で競争の激しい世界で成功するには、相反するものを受け入れて、うまく混ぜ合わせなければならないのです。

 (つづく)

 ( 引用: ハーバードAMPのマネジメント 正解最強のビジネス・エリート養成コース )

 

 ( 英語で読み解くハーバードAMP )


( 映画 『 ペーパーチェイス 』 ハーバード・ロースクール(法科大学院)の青春を描いた作品。英語の習得に最適です。)

 

2014年07月13日

”ビジネスの戦闘準備” ハーバード・ビジネススクール (35)

 【 ハーバード・ビジネススクールの教授陣の著作より紹介します。連載記事はカテゴリー欄から通してご覧ください 】

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 “交渉の達人になるには”

 ハーバード・ビジネススクールのジェイ・O・ライト教授は選択科目の 「交渉」 において、交渉を有利にはこぶ数々の知恵を披露している。

 − ビジネスパーソンが交渉に臨むとき、ビジネスパーソンが犯す最大の過ちは何だとお考えですか?

 「 話し合いを対決のように考え、エゴをむき出しにすることです。こんなことを何度聞かされたかわかりません。 “この俺をなめると、痛い目にあうぜ。お前なんかに鼻っ面を引き回される男じゃないから、心してかかってこい。”

 こんな態度で臨むのは、交渉とは言えません。それじゃケンカと同じです。そんなマッチョ・ゲームなら誰でもできます。真実はこうです。切り分けたパイの一番大きいのを取ってやると考えて交渉に臨めば、まず失敗します。 」

 − ちょっとお人よしのように聞こえますが、切り分けたパイの小さいほうを取れとおっしゃるのですか?

 「 いいえ違います。視野とアプローチがいかに大事か、みなさんはそれを見落としていらっしゃるのです。こっちの好きなようにパイを切って、大きいほうを取ってやろうと考えるのではなく、どうすればパイをもっと大きくして、自分が欲しい分だけとれるかと考えるのです。

 いい例をひとつ、紹介しましょう。ビジネススクールで教材に使っている古典的な交渉のシナリオなのですが、それは、軍用機メーカーと外国政府の間で実際にあった交渉をシミュレートしたものです。

 外国政府というのは、この場合、産油国の政府です。その軍用機メーカーは、単にジェット戦闘機をできるだけ高く売りつけようとするのではなく、石油製品の供給を代金の一部に充てるなど、いろいろな取引条件を提案し、双方ともに得るものが大きくなる道を発見したのです。

 パイを切り分ける前に、パイを大きくすることを考えるという格好のお手本です。 」

 − 交渉を成功させるには、ほかにどんな戦略がありますか?

 交渉の達人は、交渉のテーブルについたら、もう準備するには手遅れであることを知っています。たとえば、4者間、5者間、6者間の複雑な交渉を考えてみましょう。もちろん、それぞれが達成すべき目標があります。交渉が巧みな人は、テーブルにつく前に、他の2者か3者と同盟を結ぶことに時間をかけます。

 交渉が下手な人は、交渉のプロセスできわめて重要な、このポイントをまったく見落としているのです。

 私は受講生にいろいろな訓練をやらせますが、その一つは、陣営づくりに関係しています。この訓練を積んでいくとはっきりわかってくるのですが、前もって2者か3者と強力な同盟を結んでいると、こちらの思う方向に話がどんどん進んでいきます。

事前に同盟を築くことに失敗した。言い換えれば、事前にあらゆる可能性を探り、本気で取り組まなかったから負けたのだと。

 “ビジネスの戦闘準備”

 競争相手にいつ不意をつかれるかわからない。顧客基盤を侵食されたり、流通業者が敵に寝返ったりもする。技術や価格競争力やイノベーションや品質で、いまは業界一を誇っていても、その地位が安泰だとはかぎらない。

 ある朝、目がさめてみると、当然だと思っていた強みや資産が、市場シェアを守るのに無力であることがわかって呆然とする。

 そうなってからでは、打つ手が限られてくる。敵の攻撃からすでにダメージを受け、防戦一方になって拙速を強いられる。じっくり戦略を考えている余裕などなくなり、やみくもに走り出すことも少なくない。

 そうなると、間違いが − 間違いがもたらす害が − 増殖していく。

 この悪夢を避ける最善の方法は、机上演習を行って、敵がどう出てくるかを予測し、反撃策を用意しておくことである。そうすればビジネスの戦闘準備が整い、どこから攻撃をしかけられても浮き足立たずにすむ。

 机上演習は、戦略策定の効果的プロセスとして使える。たとえばトヨタが、今後3年間の製品、価格、宣伝の計画を立てるとき、机上演習をやれば、今後3年間のホンダやGM、BMWの戦略を見越して先手を打てるようになる。

机上演習を繰り返していると、未来を透視し、さまざまな戦略シナリオを思い浮かべ、どういう事態にどう対応すべきかを準備できる。

 防戦戦略を立てるAMPの机上演習アプローチは、次の4つの問いに答えを見つけることからはじまる。

1. 敵は現状に満足しているか。
2. 満足していないとすれば、どういう攻撃を仕掛けてくるか。
3. 敵の最大の弱点はどこか。
4. こちらがどういう行動をとると、手昨日攻撃を誘発するか。
 
 この分析を行うと、戦場は現在どうなっているか、予想される戦闘が起こると、戦場がどう変わっていくかが見えてくる。

 ハーバード大のアール・サッサ−教授は言う。

◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 
 
 戦況を正しく判断し、正しい戦略を立てるには、社外で机上演習をおこなうのが一番です。A社が演習をやるとして、その進め方を説明しましょう。経営幹部を集め、自社の司令官は誰々、競争相手のB社、C社、D社の司令官は誰々と決めるのです。

 それが決まったら、A社のアキレス腱を発見するために、競争相手の司令官はA社の司令官を質問攻めにし、仮想の攻撃を仕掛けていきます。みんなが知恵を合わせて、隠れた弱点を次々と掘り出していく目的は、A社の競争上の地位を強化することです。

 このプロセスは、いろいろな業種に応用できます。たとえば、IT専門のコンサルティング会社があります。社名をY社としましょう。この会社は、提案書やプレゼンテーションの出来次第で、顧客を得たり失ったりすることが多いのです。

 Y社とその競争相手は、最高の売り込みをして、サービス提供の契約を獲得したいと思っています。

 Y社の経営陣は新規契約の獲得率を上げようと決意し、自社のエグゼクティブを辛辣な審査員にして、提案コンテストをシミュレートしたのです。それはこういうやり方でした。

 まず参加者を、自社を代表するグループと、競争相手を代表するグループに分けます。そして、新しいビジネスチャンスが生まれたと仮定し、すべてのグループにクライアント獲得のための提案書を作成するよう求めました。

 その作成が終わると、審査委員会がそれぞれの提案書を読んで点数をつけるのです。どのグループがどの提案書を出したのかは、わからないようになっています。

 審査が終了したとき、Y社の実際の提案チームが出した提案書が、いちばん点数が低いことが分かったのです。経営陣はただちに提案書のプロセスを見直し、提案チームをそっくり入れ替えました。

◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

 競争環境をシミュレートして、自社の弱点を発見することが、机上演習のキーポイントである。弱点がわかれば、どこをどう変えればいいのかがわかり、市場での勝率を上げていく隙の無い効果的戦略を立てやすくなる。

(つづく)

 ( 引用: ハーバードAMPのマネジメント 正解最強のビジネス・エリート養成コース )

 

 ( 英語で読み解くハーバードAMP )

2014年07月10日

ハーバード・ビジネススクール (43)

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 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

 “ 交渉の達人は終わりから始めて後戻りする ”

 組織が戦う集団としてどこまでうまく機能しているかは、だいたい交渉の成否をみればわかる。交渉の達人は何か秘訣をもっているのか。どうすればその秘訣を盗み、自分の戦略や戦術に取り入れることができるのか。

 達人が会得している 「 交渉の勝ち方 」 をどうすれば自社の文化に根づかせることができるか。それを考えながら、以下を読み進めて頂きたい。

 私たちは誰でも、いろいろな場面で交渉の責任者になる。仕入れ価格を値切るのも交渉だし、昇給を要求するのも交渉である。得るのも失うものが何であれ、私たちはとにかく、自分が欲しいものしか頭になく、自分の主張を通すことだけを考えて、交渉に臨みやすい。

 それが普通のやり方ではあるが、ビル・ゲイツやマーク・ザッカ−バーグやセルゲイ・ブリンはそんなやり方はしない。彼らは、自分の要求から切り出すことはせず、テーブルの反対側に座ったつもりで打つ手を考える。

 まずは相手が何を求めているかを自問する。そして、交渉に勝ったという幻想を相手に与えて、自分が望んでいたものをしっかり持ち帰る戦略を考える。

 つまり、テーブルの上を行き交う条件提示の応酬は、いわば余興にすぎない。交渉に未熟な者は、そこが主戦場だと勘違いし、脇が甘くなって、交渉の達人の思うがつぼにはまっていく。

 まず学ぶべきことは、落としどころさえ分かっていれば、妥協は失点ではなく得点になるということである。

 AMPの卒業生で世界銀行のカントリー・ディレクターをかつて務めたオーイ・ミースークの話を聞いてみよう。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
 
 AMPには <交渉> という選択課目があり、それを受けたおかげで、交渉の決裂は、単に合意を得られなかったという話では済まず、完全な敗北を意味すると思い知らされました。

 距離を縮めるどころか距離をひろげ、殺気だった部屋のコーナーから双方がにらみ合う。そうなると、相手の非を鳴らすだけで、どちらも一歩も譲ろうとしない。それは失敗を認めているにすぎないのです。

 ハーバードでは、そうした行き詰まりを避ける方法を教えてもらいました。私はいま、きびしい交渉の席で頭を抱えたくなったとき、AMPで学んだケースを思い出すようにしています。

 それは利害が複雑にからんだ多者間の交渉でした。どんなことでも、調整ができれば、みんなが得をするのです。交渉が決裂さえしなければ、みんなが積み重ねたポイントを持って帰れたのです。ところが交渉が決裂したがために、すべてがパーになってしまったのです。

 その実例から、私は学んだのです。こちらに妥協する用意がない限り、双方とも何も得られない、ということをです。そのことはみんな、頭ではわかっているのですが、交渉の席でアツくなってくると、感情が邪魔をするのです。

 話し合うものをきちんと腑分けし、合意がなければ得点はゼロだということを肝に銘じておけば、感情を抑え、実利に徹することができます。

 大事なのは、交渉のスキルを、相手を叩きのめすためではなく、双方が歩み寄れる妥協点を探るために使うことです。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

 しかし、妥協すべきところを間違わない、ということも同じくらい重要である。交渉と言うのはほとんどの場合、苦渋の決断を迫られ、それは双方の業績に激震を及ぼしかねない活断層の上に家を建てるようなものである。

 AT&Tの副社長を務めたキャスリン・アンダーソンは、そうした状況で正しい決断に導いてくれる枠組みとなる戦略を使っている。

  ◎  ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

 交渉の席で持ち上がってきそうな問題を片っ端から取り上げ、それを5つか6つに煮詰めることをAMPで学びました。

 当方にとっていちばん大事な問題、相手が絶対に譲れない問題を、それぞれ5つか6つに絞り込むのです。それぞれのイシュー(問題)で、こちらの主張が全面的に通った場合のメリットを、きちんと金額に出します。

 そして、どの段階で譲歩すれば、どれだけのメリットがあるかが一目でわかるように、スプレッドシートを作成します。それができたら、交渉の最中にそのデータを使えるよう、私は自分のチームにカンニング・ペーパーをつくらせます。

 これは強力な武器になります。交渉はギブ・アンド・テイクで進んでいきますが、わたしたちはさまざまな段階で、譲歩しても得られるものがセント単位で正確に分かっているのです。

 そして私たちは、当方にとって大事なポイントと相手にとって大事なポイントを分けて考え、それを事前に把握していますから、交渉の間ずっと、どこに力を集中すべきかが分かっています。

 ですから、リアルタイムであらゆる影響をチェックしながら、きちんと裏付けがある決断を下すことができるのです。

 つい先日、8,000万ドル ( 約80億円 ) がかかった大事な交渉があり、私のチームはこのやり方で大成功を収めました。私たちは相手側の重要なポイントをきちんと整理していたので、交渉の席で相手がそのポイントから話をそらしたとき、なにかおかしいと気づきました。

 私たちは大きな譲歩をしたのです。そこを譲れば、相手に大きな利益があると、事前の計算でわかっていたからです。しかし相手は、そんなことはどうでもいいと言わんばかりに、それを一蹴したのです。

 それで、裏になにかあると気づいたのです。カンニング・ペーパーが手元にあったおかげで、相手の不可解な行動を見抜くことができたのです。相手チームは、社内の何か重大な政治的要因に気を取られていることがわかったのです。

 相手が不可解な行動をとる理由がわかり、相手が追い詰められている方向がわかったので、私たちは一気に優位に立ちました。

 カンニング・ペーパーがなくても、何かがおかしいと気づいたかもしれませんが、その用意があったからこそ、背後に何か大きなものがうごめいていると、すぐにぴんときたのです。

 私たちが勝利をおさめたのは、相手のことをよく研究し、相手が求めているものが首里宣言であることを知り、こちらが獲物を逃さずに、相手に勝利の幻想を与えるコストを正確に把握していたからです。

 (つづく)

 ( 引用: ハーバードAMPのマネジメント 正解最強のビジネス・エリート養成コース )

 

 ( 英語で読み解くハーバードAMP )

2014年03月23日

ハーバード・ビジネススクール (42)

【 ハーバード・ビジネススクールの教授陣の著作より紹介します。連載記事はカテゴリー欄から通してご覧ください 】

 ハーバード大経営学部が企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースです。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

BMWの最大の財産−性能

この戦略は何もないところから出てきたわけではない。高性能こそ、BMWのブランド・アイデンティティだったのである。BMW ( Bayerische Motoren Werke ) は、内燃機関のパイオニアの息子、グスタフ・オットーが1916年に創設した会社であり、最初は航空機エンジンを作っていた。

自動車を作りはじめたのは、1920年代も後半になってからである。ちょうどその頃、自動車レースが盛んになり、BMWのエンジニアは、流線型のボディ設計、新しいサスペンション・システム、高性能エンジンなど、数々の新しい発想や技術を身につけ、貴重な経験を積み上げていった。

レーシングコースでの成功に加え、新たに売り出したスポーツカーが人気を呼んで、流行をリードし、BMW者の性能の高さは定評となり、以来ずっと、高性能がBMWのセールスポイントだったのである。

スタイリングだけでなく、BMWは研究開発にも多額の投資をし、エンジン出力とエンジン効率、大気汚染対策、安全第一の車台設計、サスペンション・システム、エレクトロニクス、トランスミッションなど、車の重要な部分で、他社の追随を許さぬ技術力をつけていった。

世界中どこを探しても、性能とハンドリングと安全性で、BMWに太刀打ちできる自動車メーカーはないだろう。世界のベストカーを選ぶ投票となると、毎年きまって、あらゆるクラスで、BMWのモデルは多くの票を集める。

BMWの抜きんでた技術力の背景には、職人の伝統を大切にするヨーロッパ文化があった。BMWに入って、技術関連の仕事に就こうと思えば、こわい親方について3年間みっちりしごかなければならなかった。

BMWはこの徒弟制度と、それが生み出す人間を誇りにしていた。
「うちの技術者は100分の1ミリ単位で考えている。それが、うちの品質を支えている。」 というのが、経営者の口癖だった。

80年代後半の日本勢の輸出攻勢は凄まじかった。BMWは反撃に出るため、会社発展の原動力になってきた 「高性能」 に再び焦点をあてた。核となる顧客が快適な運転を重視することを知っていたので、高級セダンでスポーツカーと同じ爽快感が味わえる設計や機能に投資をした。

それは目覚ましい成功をおさめ、やがて登場した新モデルは拍手喝さいを浴びた。この新しいゲームプランによって、日本勢の快進撃は止まり、劣勢だったアメリカ市場で販売台数が急増に転じた。

「欠陥なし」 に 「性能」 で対抗する戦略は、まんまと図に当たったのである。

自分の部署で問題になる品質を考えるときには、視野をひろげて、進むべき道をはっきりと教えてくれる戦略を策定すべきである。その戦略があって初めて、自社にとって、自社の顧客にとって品質とは何か、企業目標を達成するのに品質がどういう力になるのかが見えてくる。

忘れないでほしい。品質はもちろん大切だが、品質のどの側面に力を集中し、競争優位を確保するかという戦略のほうがもっと大事なのだ。

AT&Tの幹部でAMP卒業生のキャロル・クナウフは、単に欠陥をなくすという標準的なアプローチにとらわれない戦略をとり、自分が率いる事業部を活気づけ、競争力を向上させる品質改善システムをつくりだした。

その基盤となっているのは、細部に注意を払いながら、ベンチマーキング(競合相手、該当市場での比較) と評価と改善をすべて、自分のチームと顧客の対話プロセスに組み込んでいく統合的なアプローチである。

クラナフはこう語る。
「 わたしの事業部の品質水準を上げるという不退転の決意を示すため、私は外部から専門家を招き、その人にすべてを任せ、品質測定システムをつくってもらうことにしたのです。

地位を問わず、全員が品質に責任を持つように、品質改善への貢献度を勤務評定に加えることにしました。これは2段階で進めました。まず、品質測定システムをつくり、やるべきことをどこまでやったか、その進行度に応じて採点することにしたのです。

全員がスケジュールを立てます。そのスケジュールどおりにどこまで進んだかを見るのが、貢献度を測定する最初の方法になりました。それから、測定システムがうまく機能しはじめたら、お客さんがつけてくれる点数で部下を評価するようにしました。

おかげで、品質改善がどこまで進んだかマネージャー別に簡単に把握できるようになりました。

品質のスペシャリストが作ってくれた測定システムのおかげで、自分たちの相対的な位置がわかるようになりました。つまり、自分たちがどこまで進んだかがわかると同時に、業界のベスト・プラクティスにどこまで近づいたかもわかるようになったのです。

その測定システムには ”顧客付加価値” という名前をつけました。ちょっと複雑な仕組みですが、簡単に言うと、自分が買ったものに代金に見合うだけの価値があるとお客さんが考えているかどうか、それを突き止めるものなんです。

もしイエスなら、お客さんがそういう結論を出した要因を分類していくのです。たとえば、こんな質問を投げます。

● 当社の社員は新設ですか?
● 当社の社員は高度な商品知識を持っていますか?
● コールセンターに一度電話をかけただけで、ご要望は満たされましたか?

返ってくる答えを分析し、うちの製品やサービスに対するお客さんの評価と合わせて考えていくと、私たちのビジネスの質を上げる重要なポイントがわかってきます。

それから、その分析データをすべて、競争相手の顧客満足の水準と比べます。データが十分に揃っているので、品質評価の点数を上げようとするとき、どこに力を入れればいいのか、正確にわかります。

それが分かると、的を絞りやすくなり、品質改善の速度があがってきます。言うまでもなく、お客さんとの関係を改善していくうえでも、この測定システムは大きな力になります。

私たちの努力は二重に報われることになりました。競争相手に比べて、製品やサービスの質がどうなのか、その測定の確度があがってくると、品質と市場シェアには直接の相関関係があることが分かってきました。

私たちの品質の点数があがると、それにともなって私たちの市場シェアも伸びていくのです。それで、ビジネスの成功には品質改善が不可欠であるという重要なポイントを再確認することになったわけです。

◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

品質管理の3原則

1.経営の上層部は、品質管理を単に支援するだけでなく、そのプロセスに全面的にかかわらなくてはいけない。それは、自社の製品やサービスを第三者が評価することを認め、その評価結果を受け入れ、それにもとづいて行動を起こさなくてはならないということである。

2.品質改善を、専任のチームや委員会の仕事にせず、全社をあげて取り組むミッションにしなければならない。

3.品質がどこまで改善したかを測定すると同時に、その改善がマクロ、ミクロの事業目標にどのような影響を与えているかも測定しなければならない。

 (つづく)




2014年01月26日

ハーバード・ビジネススクール (41)

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 “競争に勝つ戦略と戦術”

 以前も述べたように、AMPのカリキュラムはハーバードのケースメソッドに基づいているので、企業の重大な決断とその後の足跡を詳細にたどることに重点を置いている。卒業生は、こと細かな事実関係よりも、そこから抽出される戦術や教訓のほうに興味をもつことが多い。

 ケース分析が終わったあとに、自分がその立場だったらどうするかという観点から、もっともよく出ている質問が次の3つである。

 ● その会社のCEOはどうやって交渉に成功したのか?
 ● そのCEOが使っている独特なスキルと戦略は何か?
 ● 自分が交渉に臨むときに仕える青写真はあるか?
 
 事業部門を率い、出世につながる実績をあげていくには、次から次に直面する難問を解決していかなければならない。大きな成功を収めているマネージャーは、当たり前のやり方がいちばん有効であることはまずないと、早くから気づいている。

 柔軟性のあるマネージャーは、常識にとらわれない思考法で、競争順位を見つけだし、その優位を存分に活かすことができる。マネジメントの強力な武器になる思考法を身につけることが、AMPで学ぶいちばん大切なことだと言ってもよい。

 ここでは、マネジメントにはいろいろな選択肢があるのだということを分かってほしい。あなたのエネルギーも創造力も業績も、部分の総和より大きな組織をつくりあげていくうえで、大いに役立つイノベーション (単純なものもあれば複雑なものもある。) にフォーカスを当てる。

 ここでの目的は、決まりきったやり方で対応すれば良いと思われがちな問題をとりあげ、行動のための新しい視野と機会に目を開いてくれるプリズムをとおして、それを眺めることにある。

 “品質は大事だが、戦略はもっと大事”

  経営者や管理職にクオリティ(品質)とは何かを聞いてみると、だいたいこんな答えが返ってくる。寸分たがわぬ完成品、欠陥ゼロ、最高の出来ばえ。。。こうした狭い見方をしていると、品質とは実は戦略なのだ、というもっと大きな心理が見えてこない。

 1980年代から90年代にかけ、日本車がアメリカの高級車市場に襲いかかったことは記憶に新しいが、これはグローバル市場でエンジニアリングとマーケティングの力がいかに大きな競争力になるかを教えてくれる格好の教材であった。

 アキュラが、レクサスが、インフィニティが、ぐんぐん市場シェアを伸ばしていったのは、デザインがしゃれていて、つくりが精巧無比で、価格も安いという、それまで絶対に無かった高級車だったからである。

 J.D.パワー (アメリカの自動車産業調査会社) が公表したデータによると、品質ベストテンには日本車が7車種も入っていた。BMWも他の自動車メーカー同様、日本勢の高級車市場戦略を恐れていた。同社の経営陣は、日本車が “品質価格比” で群を抜いていることを認識していた。

 言うまでもなく、完全無欠に等しい車をつくり、それを競争力ある価格で提供することにかけては、日本車メーカーに太刀打ちできる会社は世界のどこにもなかった。しかし、BMWの経営陣は日本の強さを認めながらも、屈服する理由はないと考えた。
 
 そして、競争上最大の武器となるもの、すなわち独創的な戦略を使って、反撃に出たのである。BMWの経営陣は日本車の猛攻を受けて自社の地位を分析したとき、「故障の少なさ」 で差をつけることが敵の戦略であると気がついた。日本車は、あらゆる部品とシステムが99.999%、仕様どおりに作られ、仕様どおりに働く。

 事実上、欠陥ゼロ。完璧と言っていい。スイス時計に匹敵するのが日本車だ。

 BMWの人間はため息をついた。素晴らしい。品質基準を99.999%から100%に上げようとしても、日本勢に勝てるわけがない。しかし、ドイツ人はひとくちに品質と言ってもいろいろな側面があることを知っていたから、BMWのチームは欠陥ゼロ競争よりもはるかに勝ち目がある方向を見出した。

 自社の 「品質」 基準の重要な要素として、 「性能」 を全面に押し出す戦略を取り、その戦略にもとづいて日本勢を迎え撃とうと決意したのである。
 
 (つづく)




2013年12月29日

ハーバード・ビジネススクール (40)

 部下に”変えたいという気を起こさせる“

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 ハーバードが企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースです。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

  頑張った分だけご褒美を増やすことは、大きな変革の力になりうる。方向を見失っている人、積極性の欠ける人には、とくに効果がある。しかし、変化を脅威だと思う人、変化に抵抗しようとする人には、どうすればいいのだろう。

 そういう人たちは、会社をいまのままにしておけば、自分の職と給与と地位とライフスタイルは安泰だと思っている。ほんとうは違うのだが、そう信じ込んでいる。

 多くの場合、そういう人たちは、前身を阻むおそろしい障害になる。

 チャレンジ精神に富んだ経営者にとって、これほど頭の痛い問題はない。つねに先駆者でありたいと思う一方、従業員は公平に扱いたいと思う。

 この 「公平に正当に」 が、つまづきのもとになる。たしかに、変化をなかなか受け入れようとしない人には、考え直す機会を与えなければならない。激励するものいいし、ほかの部署に移すのもいい。しかし、ほとんどの場合、もっと冷酷にならなければならないという厳然たる事実をAMPは教えてくれる。

 成績がなかなか上がらない人がいたとしよう。その業務に求められる能力と改革への意欲から判断して、今の部署は向いていないという考え、その人の力をもっと活かせそうな部署に配置転換する。よくある話だが、たいていの場合、これはうまくいかない。

 ある仕事で求められる結果を出せない人は、どこへ行っても、同じ結果しか出せないのである。逆に、すごい成績を上げている人は、どんな仕事を与えても、すごい結果を出す。

 サバンナ電力のマイルス・グリーアはこう語る。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 
 
 壁にぶつかって悩んでいる人がいたら、私たちはやさしくたずねます。変わりたいと思いませんか、と。それがどういう意味であるか、その人に何をしてほしいのかを、具体的に話します。身を乗り出してくれる人には、私たちの仲間に入るチャンスを与えます。

 意欲はあるのだけれど、技能や経験が求められる水準に達していない場合には、トレーニングやカウンセリングのかたちで支援します。しかし、なんの反応もない場合には、違う仕事を探したほうがいいとアドバイスします。

 平凡な成績に満足しないことは、落ちこぼれにも居場所を与えるという、私たちの業界の伝統に反しますが、伝統を守っていたら、もはや競争できないのです。

 わずか数人を例外扱いしても害はないと考える人は、きわめて重要な点を見落としています。かかわっているものは、数人の運命ではなく、企業文化の運命なのです。

 変革に抵抗する人、変革を妨害する人に、会社に居すわることを認めれば、会社のミッション・ステートメントを支持するかどうかは任意だというメッセージを広く伝えることになるからです。

 もっと悪いことに、ヤル気がない人たちは、同僚の姿勢や成績に悪影響を及ぼすのです。そうなると、文化は厳しさを失い、会社は高いツケを払うことになります。

 たとえば、サバンナ電力では、変わっていく世界で競争するには、マーケティングと顧客サービスを大幅に変えなくてはいけないことがよくわかっていました。私たちは組織構造を調整することで、難問を解決しました。

 送電の技術者をエンジニアリング部からマーケティング部に移すといった、常識に反するような手も打ちました。停電すると、法人顧客に大変な迷惑をかけるからです。電気が消え、コンピュータも生産機器も動かなくなれば、業務が完全にストップしてしまう会社もあります。

 当然、復旧が早いほど、お客さんの怒りはおさまりますが、私たちは技術上の失態をカバーする以上のことをやりたかったのです。

  私たちはいつもお客さんのことを気にかけている、お客さんが困らないように細心の注意を払っている、ということをはっきり示したかったのです。だから、送電復旧に責任がある人たちをマーケティング部に送り込んで、サービスを提供してお客さんを喜ばすことを仕事にしている人たちとチームを組ませたのです。

 この異動によって、停電に対する技術者の視点が、技術上の問題から顧客サービスのミッションに変わりました。そして、予想以上の効果がありました。この組織改革を断行して以来、顧客満足度調査の点数が35%もはねあがったのですから。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

 サバンナ電力は以下の重要なステップを踏んで、変革を推進し、顧客サービスの水準を上げていった。

 ● 顧客に接する従業員には全員 − エンジニアから検針員にいたるまで、部部分的にではあるが、顧客サービスの評点にもとづいて報酬を支払う。

 ● 経営陣はそれぞれの職能グループと面談し、会社のサービス倫理を説き、会社がどこで道を誤ったのか、その過ちをどう是正できるかについて、意見を求める。

 ● 経営陣は従業員のすばらしい提案を取り上げ、その貢献に報いる。

 制約を取り払い、変革の主役になるように従業員にお願いし、そこで止まってはいけない。従業員の提案によって、実際にビジネスのやり方が変わっていくことを、経営陣は示さなくてはいけない。

 AMPは、画期的な改革を断行するもっとも有効な手段を教えてくれる。飛躍する力を新たに生みだせないのであれば、改革する意味がない。大事なのは、まず事業環境の現実を把握し、それをきちんと整理できたなら、流れに逆らうのではなく、流れに乗って競争優位を築けるように、現実を並べ変えることなのだ。

 ジグソーパズルの完成に決定的に重要なピースをしかるべきところにはめ込まなければ、規模に関わりなく、どのような部門も事業ユニットも会社も、ミッション・ステートメントにどのような美辞麗句を並べても、それは単なるお題目になり、目的達成の手段とはなり得ない。

 AMPはそのことをよく理解しているから、プログラムのあらゆる段階で、概念から実用への転換を重視している。AMPを受講すると、すばらしい業績をあげている企業では、思考と行動が分かちがたく結びついていて、発想と理解と行動をシームレスにつなぐ橋がかかっているという事実を思い知らされる。

( 引用: 『 ハーバードAMPのマネジメント 世界最強のビジネス・エリート養成コース 』 ) 



 ( 英語で読み解くハーバードAMP )




 

2013年11月12日

ハーバード・ビジネススクール (39)

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 ハーバードが企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースです。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

 "いまいる所と行きたいところを直線で結ぶ"

 AMPの卒業生で、マサチューセッツ・ゼネラル・ホスピタルの執行副社長、リチャード・クレーターはこう語る。

 「 AMPに行ってまっさきに学んだことのひとつが、フォーカス(焦点)の力でした。その力を経営手法に活かすと、目標から逸脱せずに、スタート地点で心に描いたゴール目指して、まっしぐらに進むことができます。

 道に迷うことなく、経営資源を無駄づかいすることなく、組織のエネルギーを浪費しないですむようになります。

 私はいい方法を見つけました。決断を迫られるたびに、自分に言い聞かすのです。計画や予算が大切な事業計画に結び付く線が現実的に見えてこなければ、計画や予算を承認してはいけないと。

 二点間に直線を引けるかどうか、つまり、現在位置と目指すゴールを直線で結べるかどうかが問題なのです。直線で結べないものはすべて、時間を無駄にし、資源を浪費する回り道なのです。」

 なるほど、単純ではあるが、すばらしい考え方である。日々の仕事に追われてフォーカス(焦点)がぼけてきたときには、大いに役立ちそうである。エグゼクティブならだれでも、出張や会議、提案された戦略の予算確保などに忙殺されているだろう。

 こうしたことの大半は、時間と経費がかかるかわりには投資効率がよくないことを、みんなうすうす知っている。

 出席を要請された会議にすべて条件反射的に顔を出すのではなく、頼まれたことをやみくもに引き受けるのではなく、それぞれの行動に 「直線テスト」 を実施してみたらどうだろう。

 これから取る行動が、事業目標に直結するかどうか。答えがノーなら、あるいはイエスと断言できないなら、要請を拒否したほうがいい。予定表に書き込むのは、「直線テスト」 に合格した項目だけである。

 “組織目標に照準を絞るためのリスト作成”

 AMPの卒業生で、K&Wマニュファクチャリングの社長、ビル・グリフィンは、会社が目標を見失わないように、ハイテクとは言えないが、パワー抜群の装置を使っている。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

 「 エグゼクティブはみんな、自分の進路上に持ち上がってくる問題はすべて、自分が処理しなければならないと考えています。しかし、立ち止まって冷静に考えてみると、持ち上がってくる問題にはキリがないことがわかります。

 すべての問題に対応していると、当然、本来やらなければならないのに、なおざりにする仕事が出てきます。手がまわらない。目が届かない。壊れていても直さない。なんとか動いているものには触らない。

 AMPに参加したとき、私は年商2億ドルの会社を経営していました。いまの会社は年商100万ドルです。小さな会社を経営していると、次から次へと問題が発生していることが実によく分かります。

 些事や雑用に忙殺されず、会社の目標をしっかり見据えて進むには、スケジュールをしっかり管理するツールやプロセスをつくることがいかに重要か、あらためて思い知らされました。

 私はいま、こうしています。

 ● 毎日、最優先すべき事業目標に関して、やり遂げたいことを書き留めます。

 ● オフィスを出るときに毎晩、すこし時間を取って、その日を振り返り、リストを見ながら、何をやり遂げたか、何を中断してしまったかをチェックします。

 ● それから、次の日のTo Do リストを作ります。たいてい、その日手をつけながらやり遂げられなかったことを、次の日にまっさきにやるようにします。

 ● 毎日、リストをつくるまえに、紙のいちばん上に必ず私の第一目標を書きます。今期、売上を3倍伸ばす。 − それが第一目標です。いつも、その目標をじっとにらみながら、何をすべきかを考えるわけです。

 毎日、リストの上位にあるものから順番に仕事に取りかかります。もちろん、大口顧客との間にトラブルが発生したので助けてほしいと頼まれれば、予定変更ということになります。

 その日、ふたたびリストを取り出しても、やるべきことをすべてやるには到底時間が足りません。それでも、このリスト・プロセスに従っていれば、マイナスの影響を最小限に抑えることができます。

 会社を出る前に、その日の棚卸をやり、やり遂げたこと、やりはじめて中断していることをチェックしながら新しいリストをつくるので、次の朝は正しい軌道に戻っているのです。

 To Do Listパワーは、日々の責務遂行の効率を上げるだけではありません。マクロの目標、私の場合は売上3倍増ですが、その目標をつねに見据えて進むことができます。

 どの会社にも戦略プランがありますが、それを印刷して、フォルダーに入れて、忘れてしまいます。そんなことはないと言うのなら、ちなみにご自分の会社のプランをちょっと見せて下さい。

 2,3ページ読めば、会社がやると言っていたことと、実際にいまやっていることの間に、なんのつながりもないことがわかるでしょう。そうなってしまうのは、経営者が毎日の仕事に追われ、目標を見失ってしまうことが最大の原因です。

 私が考案した To Do Listに従うと、会社の目標が毎日の仕事に入り込んでくるので、効率の低下や戦略からの逸脱を避けることができます。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

  以下は、ビル・グリフィンとのインタビューである。

 − 戦略目標追求のモチベーションを高めるために、どういう方法をとっていますか?
 「うちでは、ボーナスを最大のモチベータ−として使っています。」

 − 年1回のボーナスで十分ですか?成績に関係なく、ボーナスは毎年もらえるものだと、みんな考えるようになりませんか?

 「 うちのボーナスは年1回ではありません。毎月、ボーナス査定があり、支給があります。ですから、働きと報酬がしっかりと結びついています。その月の要求された水準を達成できなければ、その月のボーナスはありません。話は簡単です。それで明確なメッセージが伝わります。 」 

 − たしかにボーナスがあればみんな一層頑張るでしょうが、努力と戦略の方向が一致しているかどうか、みんなの努力が会社のためになっているかどうかを、どうやって見極めるのですか? 

 「 うちのボーナスには、具体的な支給基準があります。たとえば、その月に、生産高がX%増えた場合のみ、あるいは受注から出荷までにかかる時間がX%短縮された場合のみ、ボーナスを出すというように条件を明示しています。

 ですから、従業員の働きぶりと企業戦略の達成度と頑張ったご褒美が直接つながっているのです。みんなが得をするように、全員が考えて行動すると、おもしろいことが起こってきます。

 それまで霧がかかってたものが、はっきり見えてくるのです。新しいボーナス制度を導入するまえ、生産面で深刻な問題を抱えていたのですが、何が原因なのか、よくわからなかったのです。やがて、霧が晴れてきました。

 設備保守のスタッフが製造スタッフより1時間あとに出社していたために、なにか故障があったりすると、製造の人間はみんな、保守の人間が出てくるまでぶらぶら遊んでいたのです。

 対策は簡単でした。保守スタッフが製造スタッフより早く出勤するように変えたのです。それだけで、生産性は大きく上がりました。 」

 ― お金だけで、みんなやる気を出し、生産性を上げる方法を見つけるものでしょうか?

「 いいえ。人間はみな、認められたいと思っています。私たちは、自分の努力は十分に認められていると、従業員に実感してもらえるよう、いろいろと工夫しています。たとえば、何かすばらしいことを達成したときには、豪華なランチを用意して成功をお祝いします。

 こうした行事に加え、従業員の努力に感謝の意を表わす努力をしていくと、仕事に対する誇りが生まれ、張り合いが全然違ってきます。いい実例があります。

 私がここでモチベーションを高める方法を変えるまえ、受注から出荷まで、6週間から8週間はかかっていました。いまでは、受注した翌日に出荷しています。どんなに遅くても1週間以内には出荷が完了します。 」

 − 金銭的なものにせよ、精神的なものにせよ、どんなインセンティブを用意しても、従業員がさっぱり反応しないときにはどうするのですか?あなたがいくら変えようとしても、目標水準を下回る仕事しかしないときは?

 「 一人ひとりを呼んで、問題点を話し合います。うちの方針は単純明快です。要求される仕事ができない人には警告を発する。それだけです。

 追加の研修も実施していますし、場合によっては、社内の違う部署に移る機会も与えています。それでも仕事ぶりが変わらないのであれば、辞めてもらいます。

 会社によっては、ぬるま湯の文化があるため、そこそこの成績を受け入れているところもあります。経営者は怠け者を解雇できず、なにごとも大目にみようというわけです。

 うちの会社でh、そこそこの仕事で満足していたら、自分の部署は業績目標を達成できず、そうなれば自分のボーナスばかりか、クビになることを、管理職はよく知っています。ですから、部下がだらだら仕事をしているなら、上司は必死になって事態を変えようとします。 」 

( 引用: 『 ハーバードAMPのマネジメント 世界最強のビジネス・エリート養成コース 』 ) 



 ( 英語で読み解くハーバードAMP )



2013年09月29日

ハーバード・ビジネススクール (38)

 【 ハーバード・ビジネススクールの教授陣の著作より紹介します。連載記事はカテゴリー欄から通してご覧ください 】

 ハーバードが企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースです。

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 "戦略を行動に結び付ける3ポイント・システム"

 ラバット・ブリュワリーズで大西洋事業を統括するブルース・エリオットは、AMPの多くのケーススタディの核心になっている 「草の根マネジメント手法」 を用いて、組織が持つパワーを解き放ち、自分の組織を活力にあふれ、強い競争力をもつ企業体につくりかえている。

 エリオットは1995年に大西洋事業部の最高責任者に就任して以来、市場シェアも生産性も利益も大きく伸ばしてきた。このハットトリックを達成できたのは、戦略と従業員と経営陣をシームレスにつなぐことに成功したからである。

 エリオットの話を聞いてみよう。

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 AMPを卒業してすぐ、私はいまの事業部のトップになりました。そして、経営チームを評価してみると、大改革が必要であることがわかりました。

いろいろな部署の従業員と話をしてみると、上層部には、見方によっては聡明といえるけれど、リーダーとしての能力がない人がたくさんいることがわかってきました。

 その中には、会社の中に根をはやしたような人もいました。私はどうやら、ヘッドコーチを代えるのはいいことだと考える人間のようです。

 上層部の能力を評価し、どこまで期待できるかを判断するには、世の中の動きをみないといけません。現状のままがいいと思っている人もいたし、少しずつ変えていくなら構わないという人もいましたが、私は劇的に変えたかったのです。

 私は管理職の仕事ぶりを観察し、その下で働く人たちの意見を聞きました。その結果、上層部には改革の意欲がまったくないことがわかり、決心しました。変えるときが来ていたのです。

 私は可能性の追求、高成長の実現に的を絞りました。中途半端なことはやりませんでした。上層部の8割を入れ替え、クビにしたのです。

 すると会社にぐんぐん勢いがついてダイナミックになりました。

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 「的をしぼる」 ことは大事なことである。レーザー光線を当てるように、掲げた目標にぴたりと照準を絞って、回り道を避けることは、口で言うほど簡単なことではない。

 AMPの訓練を受けると、単純だが巧妙な仕掛け、誰にもマネができる仕掛けをつくれば、回り道をしないで済むことを学ぶ。

 以下はブルース・エリオットの成功のシステムである。

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● 組織の下層や中層の改革に取りかかるまえに、まずは上層部にメスを入れることです。経営陣がお粗末では、とても大きな前進はできません。

● 社員全員 − フォークリフトを動かす人からトップの役員に至るまで − 全員が勝利めざしてスクラムを組むのがいい会社です。私は最初の3ヶ月、あらゆるグループの代表と話し合い、私たちがめざすべき方向、やらざるをえない改革、獲得しなければならない経営資源など、重要な問題について、意見を交換しました。

そうした議論からメモの山ができていき、その山の中から事業部の戦略プランが出来上がっていきました。

● 会社のすべての基幹部署から代表を送り出す、多様性に富んだリーダー集団をつくるべきです。大西洋事業部は長い間、役員のみで構成される経営委員会がかじ取りをしていました。

私はその統治構造を変え、労使双方の代表が会社の決断・運営に責任をもつリーダーシップ委員会を発足させました。すぐにはうまくはいきません。双方のグループが協調の枠組みに慣れるには、時間がかかります。

 私たちはまだ初期段階にありますが、これまでのところ、驚くほどうまくいっています。お互いに敬意を払うことも、チームワークも、以前は考えられなかった水準に達しています。

 私たちは創業以来はじめて、事業計画、損益計算書、業績見通しなどの細かい情報をみんなで共有することになりました。それがなぜ大事かといえば、ミッション遂行に多大な貢献をするには、自分たちがどこにいるか、どこへ向かっているのかを、全員が知らなければいけないからです。

  ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

  エリオットはこう続ける。

  ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

従業員の態度が変わったといえることに、私は誇りを感じます。それが一番大切なことなのです。会社で働く人全員を巻き込むということは、意思決定にも参加してもらうということです。

 “脳みそは会社の入り口に置いてこい!” うちの経営陣はそんな態度でした。いまは全く違います。従業員はみんな、会社のこと、会社の将来を気にかけています。

 会社の将来と自分の将来が結びついているからです。 「私の知ったことか」 というのが以前の従業員の態度でしたが、いまではみんな 「私がやらなければ」 と思っています。

 うちの会社は長い間、生産性を高めるために、莫大な設備投資をしてきましたが、たいして変わりばえがしないこともありました。ところが、時給で働く人たちの重要性を認識し、その人たちにも目標達成に参加してもらうよう組織を変えていくと、それほど設備投資をしなくても、生産性が驚くほど向上していったのです。

 (引用: 『世界最強のビジネス・エリート養成コース ハーバードAMPのマネジメント』 )



( 『 英語で読み解くハーバードAMP 』 ) 


2013年09月17日

ハーバード・ビジネススクール (37)

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 リーダーシップ入門 − ジャック・ウェルチ・ウェイ

 AMPの卒業生で、K&Wマニュファクチャリングの社長、ビル・グリフィンは言う。

 ジャック・ウェルチのことを勉強して、業界のリーダーになれないなら経営は失敗だ、というのがウェルチの哲学だと思いこんでしまう人が多い。しかし、私がウェルチから学んだことは違います。ウェルチのやり方は、私がいま経営しているような小さな会社にも応用できると思います。

 うちの会社はとても業界のリーダーになれないでしょう。スタートした事業規模が小さすぎますから。でも、もっと大事なことを成し遂げたいと願うことはできます。規模ではかなわなくても、業績内容では業界ナンバーワンになれると思うのです。

 最良の製品やサービスを、最低の価格と最高の条件で提供できれば、会社の知名度や売上ランキングなどに関係なく、お客さんが集まってきます。

 こんなふうに考えてみたらどうでしょう。うちの会社は昔はもっと大きかった。製造や出荷のプロセスに問題があったために、いまのように小さくなってしまった。お客さんに会うと、よくこう言われる。X社の方ですね。昔はおたくからよく買っていましたが。。。

 うちの会社はいま、業績がめざましく伸びていますが、昔のお客さんが帰ってきたと考えることにしています。私たちはナンバーワンになると誓ってから、売上を2倍に増やしました。現在、3倍に増やすことを目標にしています。

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 ジャック・ウェルチの従業員に対する敬意は、リンカーン・エレクトリック・カンパニーの創業一族のひとり、ジェームズ・F・リンカーンの経営姿勢を受け継いだものともいえる。リンカーン・エレクトリックは1世紀以上にもわたり、高い尊敬を集めてきた企業であり、その長寿の秘訣は、明確な組織哲学にある。

 同社は、従業員に敬意を払い、チームに欠かせないメンバーとして従業員を扱う、開放的で協調的な組織につねに高い価値を置いてきた。ジェームズ・リンカーンがまとめた 「経営の観察記録」 はいまなお、新しさを失っていない。

 部下にやる気を起こさせ、抜群の成績をあげたいと思っている今日のマネージャーも、大いに学ぶところがあるはずである。

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“ ジェームズ・リンカーンの観察記録 ”

 ● カネよりもはるかに効果的なインセンティブがたくさんある。そのひとつが地位である。

 ● 労働者は別世界の生き物ではない。経営者と同じものを必要とし、同じ望みをいだき、同じ反応を示す。労働者は自分が罰せられる計画にはいっさい協力しない。

 ● 経営者は、会社が安定した収入を必要としていることを痛いほどわかっている。ところが、労働者もそうであることをうっかり忘れている。

 ● ほとんどの会社は、株主の支配下で、雇われ経営者が経営している。その結果、会社の目標が、顧客に喜んでもらうことから、株主への配当を増やすことに移ってしまった。

 ● 経営者は専門的な知識や技能のある労働者に仕事をしてもらう。その専門家をアゴでこき使っているかぎり、心からの協力は得られない。

 ● 給与、職の保障、昇進、敬意などの面で、時給労働者と同じ待遇を受けてみれば、経営者にも経営の真の問題が理解できるであろう。

 ● 適切に使えば、もっとも効果があるインセンティブは次の3つである。

 @ 生産に見合う昇給
 A 達成に報いる昇進
 B 労働者の貢献と技能の継承

 ● 労働者の仕事を正当に評価し、適切な賃金を払っていれば、公平を保てるだけでなく、労働者の間に協力的、生産的な競争意識が出てくる。

 ● 労使間の協調には、さまざまな形態と程度がある。能率と進歩への貢献と一口に言っても、黙々と働く人から、創意着想に飛んだ人まで、労働者にはいろいろなタイプがある。
 
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 この最後の項目を考えてみたいので、最近AMPを卒業したパシフィック・コープの経営幹部、マイク・ピットマンに経験談を聞いてみよう。

 『 AMPを受けて、静かな人のパワーに気づきました。それはこういう意味です。私たちはどうしても、個性が強い人に注目しがちです。会議室に飛び込んでくるなり、とうとうとまくしたてて、自分の考えをボードに書きなぐり、誰にも何も言わせない。

 そういう人がいますよね。たいていは、そういう人が意思決定にいちばん影響力をもっています。

 しかし、AMPを受講して分かったのですが、その手のタイプにはたしかに圧倒されるけれど、そういう人が必ずしも、よく考えていて、抜群の独創性があるとは限らないのです。むしろ、静かな人、会議を仕切るようには生まれてきていない人のほうが、すごいアイデアを持っていることが分かります。

 そうした人は、こちらから意見を聞かないと、なかなか口を開かないのです。

 AMPの受講中、生活をともにするグループの中に、マレーシアから来た人がいました。あまりに控えめなので、最初は僕らアメリカ人の基準で判断して、いてもいなくても同じ人だと思いました。ところがやがて、ぽつりぽつり話すのを聞いているうちに、その人が同じグループの中で一番頭がよく、有能だとわかってきたのです。

 この経験をしたおかげで、他人を押しのけるスタイルの人ばかり、ちやほやされることがいかに多いか、はっきりと見えてきました。そして、そのグループばかりに注目していると、同じように考え、同じように行動する人ばかり雇うことになります。それでは困ります。

 今日の複雑な状況に対応するには、さまざまなスタイルや技能や視野をもった人たちでチームを組む必要があります。だからこそ、静かな人のパワーを引き出すことが重要なのです。 グローバルな問題を扱うときには、なおさらそれが重要になります。』

 ( つづく ) 
 ( 引用: ハーバードAMPのマネジメント ) 


2013年06月23日

ハーバード・ビジネススクール (36)

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 リーダーシップ入門 − ジャック・ウェルチ・ウェイ
 GEの元CEO、ジャック・ウェルチほど、組織改革の重要性を心から信じている者はいない。ウェルチの率いたGEは、技術力に定評があるが、GEという巨大組織に変革を浸透させるために、ウェルチが大切にしてきたのは、人間のプロセスであった。

 ウェルチは90年代に、長い間視界のすみにチラチラしていた問題に取り組もうと決意した。どこのオフィスでも工場でも、管理職と一般社員の間にぶあつい高い壁が築かれていたのである。従業員の疑問、不満、意見はすべて、この壁で遮断されていた。

 GEの従業員は、黙って手足を動かしていればいいと思われていたのである。ウェルチは、この呪いを解かなければならないと考えていた。どんな人の意見も歓迎する。オープンで協調的な職場をつくりたいと考えた。

 従業員の力を封じ込めるほど馬鹿げたことはないと思い、経営陣が主催し、ウェルチ自身も参加するタウンホール・ミーティング (全社員会議) “Work out ” を制度化し、4つの目標を掲げた。

● 協調の文化をめざし、みんなの考えをみんなで共有する。
● 責任と権限と説明義務を現場の従業員にできるだけ譲渡する。

● ムダなこと、不合理なこと、重複することを作業工程から排除する ( 何を排除するべきかは、従業員からのフィードバックで明らかになると考えた。 )

● アイデアと努力の相互供与を妨げる障壁を壊す。これまでは従業員と管理職、あるいは従業員同士、管理職同志を分け隔てる壁があったが、それをたたきこわし、職掌や部門にとらわれずに協力しあう文化を作り上げていく。

ワークアウト、そして、それが生み出すアイデアの自由な流れは、上司と部下の関係を根底から変えるものだった。ウェルチは 「株主への手紙」 でかつてこう語った。

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 従業員一人一人が、創造力とイノベーションの泉です。従業員によく働いてもらう最善の方法は、従業員の仕事を邪魔しないことである、という旧習にさからう事実を、GEの人間全員に受け入れてもらえるよう、私たちは努力しています。

 従業員のエネルギーと情熱を解放してはじめて、私たちは生産性で断然優位に立ち、その優位を持続でき、世界中どこへ行って、どのようなビジネスをしても、競争し、勝利する自由が手に入るのです。

 1990年代、私の考えの根底にあったのは職場の解放です。従業員の持てる力をフルに引き出したいと思うなら、従業員に自由を与え、全員に参加してもらわなければなりません。いつでも自分で正しい決断ができるように、誰もがすべてのことを知らなくてはいけないのです。

 古い文化では、マネージャーの権力基盤は情報の秘匿にありました。利益率や市場シェアなど、部下が知らないことを知っていたから力を持っていたのです。しかし、誰もがその情報を入手してしまえば、王様は裸であることが分かってきます。

 新しい文化では、ビジョンを掲げ、賛同を集め、ビジョンを実現することがリーダーの役割です。その役割を果たすには、すべての従業員に心を開き、すべての従業員を思いやる。対面コミュニケーションが必要になります。

 明確なビジョンを示せない者は絶対に成功しませんが、成功する者は一段と心を開いていくようになるのです。成功が自信を生み出すからです。

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 “ ウェルチが教えるリーダーシップの6つの法則 ”

1. 自分の運命を支配せよ。自分で支配しなければ、他人に支配される。

2. 現実を直視せよ。過ぎ去った過去ではなく、望ましい現実ではなく、目の前の現実を。

3. 誰に対しても誠実に、謙虚に。

4. 管理するな、リードしろ。

5. 変わらざるをえなくなるまえに変われ

6. 競争優位を築いていないのなら、競争するな。

 ( つづく ) 

 ( 引用: ハーバードAMPのマネジメント ) 


2013年03月31日

ハーバード・ビジネススクール (35)

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  “ OFPのロードマップ ”

OFP ( Organizational Fitness Profile 組織健康診断 ) のプロセスが自分の会社や部門にとって有益だと思ったなら、以下のロードマップに従って進んでみよう。

1. オリエンテーションとプランニング − コンサルタントを議長として、1日のミーティングを開く。
 
 まず経営陣が、会社の競争環境や業績目標や事業戦略と、求められる組織や文化の変革とを明確に結びつける。 「戦略と組織の方向性」 を文書にして公表する。

 意思の疎通を図り、戦略の背後にあるロジックを説明して、何が戦略実行の障害になるかについて、組織内から情報を集めるための文章である。

 その作成と配布が終わったら、さまざまな職能や事業から中間管理職を選んでタスクフォースを結成し、情報収集に乗り出す。

2. データ収集 − 組織の内外で忌憚のない意見を集められるよう、タスクフォースを訓練する。どの慣行や仕組みが、どの戦略の遂行を望外しているか、具体的に聞き出すテクニックが重要になる。

 コンサルタントは経営陣に一人ひとり個別にインタビューし、トップ・マネジメントの問題を聞きだす。

3. ミーティング − タスクフォースがデータの収集を終えた時点で、OFPミーティングを開き、組織がどれだけうまく機能しているかを分析する。
 
 その分析ができたら、、組織の新しいビジョンを実現するためのプランを策定する。OFPミーティングは次の5段階に分けて行うのがよい。

ステップ @ 経営陣が中央のテーブルを囲むU字型カウンターにすわり、中央のテーブルにすわるタスクフォースの報告を聞く。

社内の力関係に影響をおよぼすきわめて微妙な問題でも、戦略遂行の障害について、タスクフォースが現状を正確に報告できるよう、このプロセスは細心の注意を払う必要がある。

鎧を脱いだコミュニケーションの基本ルールに従い、報告がひとつ終わるごとに、経営陣はタスクフォースと対話する。

報告と質疑応答がすべて終わったならば、タスクフォースは退室する。そのあと、コンサルタントが、経営陣とのインタビューから得た情報をもとに、重要な問題を取り上げて報告する。

 経営陣のうち誰かの役割やスタイルが大きな障害になっていることが分かれば、その問題を協議する。

ステップ A 経営陣は体系的なモデルを使って、タスクフォースの報告で明らかになった組織の弱点を認識し、その原因を突き止める。

ステップ B 経営陣はOFPを使い、会計の設計をどう変えれば、新しい戦略を効果的に実行できるか、そのモデルとビジョンを考える。同時に、実行プランも策定する。

業績の向上に直接つながるプロジェクトと並行して、間接的にかかわる問題 − 組織設計や経営トップの機能 ( とくに、役割、責任、会議、意思決定 ) など − の見直しも進める。

プロジェクトは通常、コンサルタントが側面支援する組織横断チームが遂行し、会社上層部のチームがその進捗状況をチェックする。

 ステップ C 経営陣とタスクフォースがたびたび同席して、報告された内容を再検討し、今後の対応を協議する。その後また別室に分かれ、タスクフォースは提案された対応策を吟味検討し、結論を出して経営陣にフィードバックする。

 これは、経営陣が出したプランにどれだけ実効性があるかチェックする機能を果たす。このステップを通じ、経営陣と従業員は会社を変えるパートナーになる。

 ステップ D OFPがいちばん成功した例をひな形にして、組織学習と組織改善を継続化していく。

● タスクフォースは引き続き、組織の前進を監視し、新たな成長の機会を模索する役割をになう。
● 組織の問題の検討、その解決策の実行、その成果のレビューを継続していく 「マネジメント・システム」 プロジェクトを立ち上げる。
● 会社全体のOFPを定期的に繰り返していく。
 
 “エボリューション + レボリューション = ソリューション ”

 市場の変化に合わせて事業ユニットをどう変えていくかは、マネジメント・スタイルの問題である。ほとんどのマネージャーにとって、進化的変化は選択形式の問題である。このアプローチをとる場合、企業リーダーは、変革を推進し目的を達成するための方向を定め、分担を決め、無理のない期限を設定する。

 進化的変化は比較的おだやかで、人にやさしく、苦痛が少ない。しかし、時代を先取りするうほど早く徹底的に変われないところに、重大な欠陥がある。

 タイミングが成否を決定的に左右する状況では、革命的変化が必要になる。まさに社運がかかっていて、与えられた対応時間が少ないときは、突然の変化、場合によっては破壊的な変化を起こさなければ、会社の競争力を維持できないことも出てくる。

 AMPの卒業生で、世界的な航空機メーカーの副社長であるD氏はこう語る

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 AMPを受講して、90年代にアメリカの産業界に吹き荒れた合理化の嵐に匹敵するような、思い切ったダウンサイジングとリエンジニアリングを避けては通れないと痛感しました。エスカレートするグローバル競争を考えればなおさらです。

 市場から激しくせっつかれるとき、マイペースで進むことは許されません。少しずつ組織を手直ししていけばいいなどと、悠長なことを言っていられません。

 このような時代の競争を生き残るには、会社は猛スピードで効率性と生産性を高めなければならないのです。自然減など、進化的な変化を待っているのではなく、緊急事態への即応を求められるマネージャーは、革命的な変化を考えなければなりません。

 人員の削減、工場の閉鎖、製造中止、手続き撤廃など、革命的なことを、すばやく断固としてやり遂げなければならないのです。

 ただ、このやり方は極端に振れすぎることもあります。忍耐がなく、なにごとも変えればいいというような文化ができあがると、新しい計画や人間が、根を下ろし、安心し、成長していく時間がなくなってしまいます。

 また、人を育てるのではなく、人を怯えさせるピリピリした職場になってしまうと、会社のために頑張ろうという気にはなりません。

 そうなると、リーダーは、バランスの取れた現実的なやり方を追求できず、現実世界への対応よりも、社内政治にエネルギーを奪われることになります。

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 つまり、進化的変化だけでもダメ、革命的変化だけでもダメなのである。リーダーは次の等式を肝に銘じていただきたい。

 “ 進化 + 革命 = ビジネスの正しい解決策 ” 

 AMPの卒業生で、テムズ・ウォーター、スコットランド・アイルランド事業部の元CEOであるデズモンド・ボナーは、この種のリーダーシップは、かなりの部分、「連結」 を見つけ、活用する能力に関わってくると言う。

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マネジメントとは、ものごとを変えていくプロセスです。変化を先取りし、変化を自分のものにし、変化がもたらす機会を活かしていくことです。決まった道筋はありませんし、決まったルールもありません。

 しかし、方法論はあります。私はこのプロセスは、人体の機能のようなものだと考えています。中枢神経系は、あらゆる肉体的、精神的刺激に応えるため、たくさんの選択肢を脳に提供する数百万の連結部から成っています。

 だからこそ人間は、鈍いロボットよりも俊敏に優雅に働けるのです。

 会社もまた、組織を構成する人たちの心や才能という形をした、同じような連結部から成っています。しかし、それは有効活用されていないことが多いのです。

事業戦略、そして顧客対応や事業開発に関するノウハウがすべて、会社上層部の占有物と考えられている場合がそうです。

 そのような会社では、経営陣と現場の従業員との間の連結が機能せず、問題や機会に直面したとき、攻めるにせよ守るにせよ、選択肢の幅が限られてしまいます。

会社はいままでやってきたことを型どおりにやるしかなく、変化にうまく対応するのに欠かせない俊敏な動きや微妙な呼吸といったものが失われてしまいます。

賢明なリーダーは、現場にある知識の宝庫をうまく使えば、連結というテコの力を存分に活かせることを知っています。お客さんについて、もっとも新しくて、もっとも正確な情報を持っているのは、現場の人間です。

お客さんは何を考えているのか、何を求めているのか、どういう時にどういう理由で、他社の製品やサービスに切り替えてしまうのか、それをいちばん良く知っているのは、現場の人たちです。

たとえばIBMは、マッキンゼー出身の経営者、ルイス・ガースナーのもとでダイナミックな復活をとげましたが、ボトムアップで学ぶのがうまかった、それが成功の一因だと思います。

どうすれば連結を強め、連結を活用できるか、よくわかっていたのです。私はロジアン&エジンバラ・エンタープライズでそれをやりました。従業員に直接、こう問いかけたのです。

● 戦略の優位性をどうすればいいか、教えてほしい。
● 今後5年間の投資の優先順位をどうすればいいか、助言してほしい。
● 会社のどこをどう変えていけばいいか、提言してほしい。

 従業員の声をよく聞いて行動し、連結を強化して従業員の知的資源を存分に活かす、それが経営者の務めです。それができれば、選択肢が広がります。そして、変わっていくには学習が必要です。

 うまく連結すれば、学習効果がぐんぐん加速します。

 ( 引用: 『世界最強のビジネス・エリート養成コース ハーバードAMPのマネジメント』 )

 ( つづく ) 



2013年02月12日

ハーバード・ビジネススクール (34)

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 ハーバードが企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースです。

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ボトムアップ学習 − 部下の批判が上司を育てる

 マネージャーが変革の最大の障害になるというケースはよくある。自分は頭がよく、万事順調だと思い込んでいるので、変えなければならない理由など思いつかない。部下は、そうは思っていなくても、口に出すことはどうしてもはばかられる。

 上司に面と向かって、あなたの戦略や管理手法を変えないかぎり、会社の現在の目標あるいは長期的目標は達成できません、などと言える人はいないのである。

 率直なフィードバックをつねに求めていかなければならない理由はまさにここにある。そのためには、360度評価という、いい方法がある。

 部下に、同僚に、他部署に自分のマネジメント能力を評価してもらう方法である。匿名を保証すれば、四方八方から率直な意見が次々と出てくる。不快になることもあれば、傷つくこともあるが、自分の欠点・弱点をみつけ、事態を変えていくためには有効だ。

 大手通信機器メーカーのCIO ( 最高情報責任者 ) で、AMP卒業生のC氏はこう語る。

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 マネージャーにとって、現状に満足することは死を意味します。AMPに行くと、現状維持と戦うには鬼にならなければならないと、頭に叩き込まれます。私はAMP卒業後、学んだことをただちに行動に移しました。

 進化するグローバル・スタンダードはうちの製品設計にとって大きな脅威でした。テクノロジーへの進化を急げと私は力説しましたが、CFO ( 最高財務責任者 ) が頑として首をタテに振りません。

 CFOは会社に深く根づいた文化を代表する人でした。いずれ、その文化と戦わなければならない日が来ると思いました。そして決戦の日はいずれやってきたのです。行動を起こすのが一日遅れていたら、ドイツのメーカーにシェアをがっぽり持って行かれたところです。

 私のチームは行動を決意し、私が先頭に立ちました。私の部門にとって、私の会社にとって。それ以外に進むべき道はないとわかっていたからです。私は衝突を恐れず、社運をかけたビジネスの問題に力を集中しました。

 そこから貴重な教訓を得ました。政治よりミッション (使命) を優先させれば、どんな大きな障害も克服できるという教訓です。 ( C氏 ) 

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“ 組織のフィットネス・チェック ( OFP: Organizational Fitness Profile ) ”

 どんなに有能なリーダーでも、自分のチームが力を最大限発揮するのを妨害している深刻な問題や障害に気づかないことがある。それは、個人の弱点、組織の弱点が、組織構造の中に隠れていることが多いからだ。

 真犯人をかくまうと ( 真犯人は経営陣の中にいるかもしれない )、業績が伸びない理由がいつまでたってもわからない。

 ビア教授は、コンサルタントのラッセル・アイゼンスタットといっしょに、組織健康診断の画期的な方法を開発した。オーガニゼーショナル・フィットネス・プロファイル、略してOFPである。これはX線検査を行って組織の弱点を発見し、是正するものである。

 OFPは、経営幹部が集まり、組織とリーダーシップの病根にメスを入れようと固く決意することからスタートする。次のステップで、鎧を脱いだコミュニケーションの基本ルールをつくる。

 第3のステップで、検診のやり方と目的を明確に定め、顧客と従業員にインタビューするタスクフォースを結成する。この特殊部隊は、組織内でもっとも有能な人材で構成しなければならず、インタビューで必ず聞かなければならない問いはこうである。

 “戦略遂行と目標達成をめざすとき、この会社あるいは事業部の強みは何だと思いますか。障害物は何だと思いますか。”

 インタビューが終わったら、3日間のOFPミーティングを開き、タスクフォースは回答を整理し分析する。このミーティングは初日がいちばんつらい。タスクフォースはたいてい悪いニュースを持ってくるからである。

 したがって、経営幹部にはそうとうの覚悟が必要である。 「 悪いニュースを持ってくるメッセンジャーを打つな! 」 と書いたバッジを胸につけておくことをおすすめしたい。

 タスクフォースは部屋の中央に置かれたテーブルのまわりにすわり、経営幹部はそれを囲むU字型のテーブルにつく。いよいよ鎧を脱いだコミュニケーションの開幕である。

 まず、タスクフォースがインタビューの結果を報告する。話があちこちに飛ばないよう、あらかじめトピックを整理しておく。組織分析によく使われる古典的なモデルに従えばよい。

 たとえば、顧客と従業員は経営陣の能力をどう評価しているか、というのが代表的なトピックである。その他のトピックとしては、次のようなものが考えられる。

 1. 経営陣のトップダウンのやり方は強圧的すぎる。あるいは、自由放任のやり方は無責任に過ぎる。

 2. 経営陣が組織を効率的に動かしていない。

 3. 部署間のチームワーク、協調体制がお粗末である。

 4. 戦略が不明瞭。あるいは、組織のさまざまなところで優先順位が矛盾している。

 5. 上下の意思疎通が不十分。経営陣が何を考えているのか、従業員にはさっぱりわからない。

 6. リーダーシップや管理能力に疑問符がつく。


  タスクフォースの報告が終わったら、どんな結論が出ようと、経営幹部は出た結論について対応を協議する。どうすればもっとうまく組織をリードしていけるか。どうすれば自分たちの行動パターンを変えることができるか。

 そして、組織の活性化にはどういう組織再編が必要か。

 そこに至るには気を付けなくてはいけない点がある。

  @  OFPでは、個人に危害が及ばないように留意する。タスクフォースは自分の意見を言うのではなく、他人から得たデータを使うだけである。そして、グループとして報告するのであって、個人として報告するのではない。

 A  コミュニケーションの基本ルールを守る。

 OFPでは、きわめて難しい問題を話し合わなければならないし、心を開いて、率直に、柔軟な姿勢で、話し合わなければならない。一番大切なのは、個人攻撃をしないということ。

 報告を受ける側であれば、兜や鎧を脱いでから話を聞かなければならない。
「 そんな話をだれから聞いた 」 とは言ってはならない。気に入らないデータが出てきたからといって、人を攻めてはいけない。

 タスクフォースは自分の意見を言うのではない。経営幹部は、タスクフォースの報告に耳を傾け、不明な点があれば質問する。認知すなわち事実であることを、経営陣は理解しなければならない。

 組織として何かを認めたら、その組織に関するかぎり、それは事実になるのです。そして、その事実を直視しなければなりません。

 ( つづく ) 
 
  ( 引用 : 『 ハーバードAMPのマネジメント − 世界最強のビジネス・エリート養成コース 』 )  



2012年12月24日

ハーバード・ビジネススクール (33) 世界最強組織の作り方 

 【 ハーバード・ビジネススクールの教授陣の著作より紹介します。連載記事はカテゴリー欄から通してご覧ください 】

 ハーバードが企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースです。

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 世界最強組織の作り方 − 変革の方程式

 経営者や管理職から耳にタコができるほど、こんなぼやきを聞かされる。 
「 やらなければならないのはわかっているんだが、できない。文化がやらせてくれないからだ。うちの会社は変化への抵抗が強く、何かを変えようとすればかならず争いが起こり、改革は動き出したとたんに止まる。 」 

 たしかに、そういうこともあるだろう。発想の硬直化に 「 うちのやり方が一番 」 というおごりが加わると、どんなにすばらしいアイデアも、客観的な検討さえ加えられずに葬りさられてしまう。

 しかし幸いなことに、そうした抵抗を克服するいい方法がある。そして、それは比較的簡単な方法である。人間の問題をビジネスの問題から切り離せば良いのである。

 会社の文化に行く手をはばまれるとは、いったいどういうことか? すこし考えてみればわかるが、それは要するに人間に行く手をはばまれるということである。

 みんなが自分の利益だけを考え、変革の道にさまざまな障害物を築き上げているということである。争いを起こしたくないために、トラブルメーカーの烙印を押されたくないために、人間という障害物にひたすら我慢しているのだ。

 それは、事業目標が敵の個人目標に膝を屈している状態を放置するということである。そうなれば、自分の使命を果たすことはできず、決まりきったやり方を繰り返していく以外に手がなくなる。

 企業の目的を果たすには、文化を変えなければならず、必要とあれば、仲間のなかに敵をつくらなければならない。

 そのためには、所属する部署にかかわらず、志を同じくする者が集まってチームを作り、文化の障壁に風穴をあけることが第一歩である。エンジニアリング部門からも、マーケティング部門からも、製造部門からも、同志を集める。

 コラボレーション ( 連携 ) の幅が大きいほど、抵抗の壁を打ち破り、大きく前進する可能性が高まる。AMPではこれを、マネジメントの中心課題だと考えている。

 マイケル・ビア教授の話を聞こう。

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 “ 波風を立てたくない ” ということをよく聞かされますが、まったくナンセンスです。マネージャーには、波風を立てる責任があると、私は思います。マネージャーの仕事は、変化を創りだす対話を促進することです。

 たとえ与えられた権限は小さくても、組織全体に広がっていくさざ波くらいは起こすことができます。私は変革を起こす方程式をつくりました。

 変革 = D  x M x P > コスト 

 Dは不満 (Dissatisfaction) 、Mはモデル (Business Organizational )、Pはプロセス (Process)のことで、どれも変革に欠かせない要因です。そして、D x M x P が変革のコストよりもかならず大きくならなければいけません。

 変革のコストとは、変化が起こったときに、組織内の人たちが損失と感じるものです。これを費用対効果と考えないでください。原動力対障壁の綱引きなのです。コストは障壁です。

 そして、コストが高ければ、不満の水準を高め、よりよいビジネスモデルをつくり、プロセスをもっと工夫しなければなりません。 そうしなければ、コストの障壁を乗り越えることはできません。

 ビア教授の変革の方程式をじっくり見てみよう。

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  D = 不満 (Dissatisfaction)

リーダーとして機能するには、現状に対する不満をつくらなければいけません。変化は避けられないのだから、変化に対応するより、変化をリードしたほうがいいのです。

  M = モデル (Business Organizational Model)

 改革のための改革では、誰もついてきません。だからこそ、戦略的方向を示すビジネスモデルが必要になるのです。現在そして将来、成功するにはどういう組織が必要になるのか。モデルが、その問いに答えなければなりません。

 モデルは具体的なものでなければいけません。使命遂行に絶対に欠かせない人間は誰か、方針は何か、戦略は何か、資産は何か、構造は何か、価値観は何か、それを明示しなければいけません。

 P = プロセス (Process)

現状の打破には、もっとリソースが必要だ、ハイテク機器や有能な人材や大々的な宣伝が必要だと、考えがちです。たしかにそうした場合もありますが、そういうものをうまく結びつけるには、プロセスが必要なのです。結局のところ、変革への道をひらき、目標へまっすぐ向かう道筋をつけるのは、プロセスなのです。

 キーポイントに戻りましょう。不満 x モデル x プロセス が変革のコストよりも大きくなければならないことを思い出してください。コストとは、人々が失うものです。職の安定が奪われる。給料が減る。地位が下がる。そういったものがコストです。

 変革を求める力が、変革の結果失うと思うものよりも大きくならないかぎり、変革は起こりません。

 1980年代にアップル・コンピュータで起こったことが、よい例です。ジョン・スカリーがアップルのCEOに就任したとき、技術革新が世界を変えるという創業の理念が、文化として社内に根付いていました。この理念こそがアップルのアイデンティティであり、社員は皆それを誇りにしていました。

 スカリーが変革を起こそうとしたとき、社員が失うと思ったものはあまりに大きかったのです。長い間、会社のエースだった研究開発の人間がいちばんショックを受け、はげしく抵抗しました。そのため、スカリーは戦略も組織も変えることができなかったのです。

 スカリーの最大の失敗は、現状に対する現状に対する不満を十分にかきたてることができなかったことです。スカリーは企業戦略を立て、それに伴い組織をどう変えていけばいいかを考えたのですが、どうすればみんなを変革に駆り立てることができるか、その戦略がなかったのです。

 変革の障壁を乗り越える力はどこから生まれてくるか、つきつめて考えなかったのです。

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 ならばどうやって、障壁を乗り越えられるだけの力をつくりだせばいいのか。ビア教授はこう答える。

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 まず不満をつのらせることです。具体的に言いましょう。社員を会社の外に出し、お客さんの声を集めてこさせるのです。帰ってきたら、お客さんから出てきた苦情を、みんなの前で報告させるのです。すると、水面下に隠れていたいろいろな問題が浮かびあがってきます。

 日頃思っているほど、うまくはいっていない。現状にしがみつくのは危険だと、気づく人が増えてきます。このままではいけないという機運が出てきたら、それが要するに不満だということですが、よりよいビジネスモデルをつくる時期が来たのです。

 経営幹部を集め、表面化した問題に取り組むには、組織を、構造を、行動パターンをどう変えればいいのか、徹底的に議論し、きちんとした答えを出し、答えが出たら、その解決策を実行に移すプロセス、組織全員を巻き込むプロセスを考えるのです。

 ( つづく ) 
  ( 引用 : 『 ハーバードAMPのマネジメント − 世界最強のビジネス・エリート養成コース 』 )  



2012年12月11日

ハーバード・ビジネススクール (32) 世界最強組織のつくりかた

 ブログ視聴者の皆さん、お元気ですか?

 自ら意図してではなく、運命の導きに従ってやってきた米IT業界ですが、スピードの速さと、互いにライバルの米IT企業をぶっ潰そうという経営者の猛烈さは、米金融業界の “拝金主義” を越える、もっと原始的な人間の執念につき動かされている、まことにオトロシイ業界なのではないか!? と思うようになりました。

 過去の栄光から遠ざかる日本の家電メーカーをしり目に、なぜ今、世界のテクノロジーをアップル、マイクロソフト、グーグル、アマゾン、オラクル、シスコ、フェイスブック、ヤフーといった米IT企業が独占しているのでしょうか?

 創造性とスピード、前例や既存の常識をぶっ潰そうというダイナミズムが、他の国の価値観とは全然違うのです。

 【 ハーバード・ビジネススクールの教授陣の著作より紹介します。連載記事はカテゴリー欄から通してご覧ください 】

 ハーバードが企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースです。

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 企業派遣でAMP (アドバンスド・マネジメント・プログラム) に行く人、つまり会社から選ばれた人たちはみな、変革を求めている。

経営トップの一人であろうと、中間管理職であろうと、事業プランの目標達成のためには、自分が率いる組織をダイナミックな変化に対応できるようにしなければならない。これは、きわめてやっかいな仕事である。

 どんな規模の組織でも、変革を求めれば、マネージャーはニュートンの法則 − 静止している物体は、外からの力が作用しない限り、静止状態を持続する − にぶち当たる。変化を訴える者は、猜疑の目で見られ、怒りをぶちまけられ、強い抵抗に遭う。

 妨害にさえ遇うケースは、誰もが認めたくないほど多い。エゴと嫉妬と謀略がうずまくなか、どうすれば変革を推進できるか、AMPがそれを教えてくれる。

 私たちは、偉大なビジネスリーダーがあがめたてられ、報いられる文化の中で暮らしているが、自分がつくりだす組織より、教祖崇拝のほうが大事だと考えている人は、間違っているばかりでなく、哀れな末路が用意されている。

 GE (ゼネラル・エレクトリック社) の元CEO、ジャック・ウェルチが伝説の人になったのは、超人的能力をもっていたからではなく、多種多様な事業を成功させ、敵をうちやぶり、つねに変化の先をゆく、すごい組織をつくりあげたからである。

 ウェルチの偉大さは、2つの困難な目標を同時に達成したことにある。

 @ GEの事業ユニットを任せられる有能な人材を抜擢した。選ばれた人の多くは、男女をとわず、官僚主義の排除と新事業のたちあげに全力をつくす “起業家タイプ” の人材であった

 A マネージャー個人の成績を数字で判断できる業績報告システムをつくりあげたこと。
 メモや調査や主観的分析に加え、正確な統計が入るようになったために、ウェルチは将軍たちの善戦ぶり、あるいは苦戦ぶりを把握できるようになった。

 GEでは、きちんと結果を出しているかぎり、各事業の進め方についてはマネージャーにかなりの自由が与えられている。結果が出ていなければ、ウェルチはデータをもとにただちに行動を起こす ( =最悪のケースも含め )。

 ウェルチが作り上げた組織だから、シニア・エグゼクティブ (上級管理職) が事業に取り組む姿勢は、 “ 起業家そのもの” である。ここに、誰もが学べる “ 史上最強の組織 ” がある。

 変革を求める進めるために、自分の組織にはどういう選択肢があるのか。それを考えるのが、この “ 世界最強組織のつくりかた ” のテーマであり、強くたくましい組織をつくるのに必ず役立つ考え方 ( = 単純なものもあれば、複雑なものもある。 ) を取り上げていく。

 ( つづく ) 
 ( 引用 : 『 ハーバードAMPのマネジメント − 世界最強のビジネス・エリート養成コース 』 )  



2012年10月28日

ハーバード・ビジネススクール (31) 生涯学習のパワー

 ブログ視聴者の皆さん、お元気ですか?
連日連夜のハードワークを必死でこなしていますが、プロジェクトが終わるまでは当分、辛抱の日々です。

 2012年4月に丸の内の大手米銀をリストラされ、7月からは米系IT企業で働きはじめましたが、アメリカの金融業界とIT業界は、アメリカ経済を支える2大産業として、行動パターンが似ているのではないか? と思いはじめました。

 いずれその違いについて書こうと思っています。

 今日も休日出勤だったのですが、気の滅入るような日曜の出勤は、僕が金融業界で尊敬する師、松本大 氏 (まつもとおおき) の本を読みながらオフィスに行きました。

 若くして米系投資銀行で成功しながら、自分のキャリアとゴールドマンの創業者利得 ( IPO収入 )をいったんドブに捨て、起業の道を選び、今では東証1部企業の経営者の松本大氏は、その多忙な日々を過ごしながらも、1999年以来、毎日ブログを執筆しています。

 僕もブログ筆者ですから分かるのですが、毎日ブログを更新しつづけるには驚異的な努力が要ります。ゴールドマンの先輩、松本氏は、僕が近づこうと思っても近づけない偉大な人です。 

 【 ハーバード・ビジネススクールの教授陣の著作より紹介します。連載記事はカテゴリー欄から通してご覧ください 】

 ハーバードが企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースです。

自分の快適ゾーンを見つけ、そこから脱出せよ  

その人なしでは会社は成り立たないと思われる人でも、一週間かそこら会社を留守にしなければならないことがある。休暇や出張、あるいは入院となれば、あとのことは自分のスタッフに任せざるをえない。

 自分が留守をする間、とんでもないことが起こるのではないかと、心配で夜も眠れなくなる人も少なくない。しかし、ほとんどの場合、自分がいなくても何の支障もないことを知って驚く。

 ここから悟りが開ける。自分があれだけしっかり仕込んできた連中なのだから、自分がいなくても、やるべきことをきちんとやる。自分に出来る最善のことは、マンネリから脱し、新しいことに挑戦し、自分の視野を広げることだ。そう悟るのである。

 ほとんどの人にとって、毎朝いちばんやりやすいことは、前日やり残した仕事から手をつけることだ。それが、自分の快適ゾーンである。しかし、ビジネスの世界で、楽なことをしていて成功はない。

 このことを肝に銘じたならば、次に進むべき道は、新しい機会を見つけ、それにチャレンジすることである。

● 新しい市場を開拓する。
● 新しい製品やサービスの開発を考える。
● 新しいテクノロジーの実用化をテストする。
● 部下にヤル気を起こさせる方法と組織構造を白紙に戻して考え直す

 立てるべき行動戦略はこうである。日常業務については部下に権限を委譲し、 ( もちろん、リーダーとしての職務は果たす )、そこで空いた時間を使って、どこにどういうビジネスチャンスがあるかを考え、ビジョンを作り出すのがマネージャーの仕事である。

 この知的にして生産的な分業体制をとれば、成長力のある活気あふれた企業体が生まれ、長い目でみて、自分が 「 なくてはならぬ人 」 になっていく。

 ときには、自分の能力もスタッフの能力も超える問題が起こり、高度な専門知識を社外に求めざるを得ないこともある。
 以下は、フォーミュラ409の創業者でCEOだった故ウィルソン・ハレルの体験談である。

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 私が会社を経営していたとき、陰謀が企てられていました。従業員の一人、それはチームスターズ ( 全米トラック運転手組合 ) の幹部の奥さんだったのですが、その人がひそかに従業員を組織化していたのです。

 彼女はレーダーに引っかからずにことを進めるのがうまかったので、私が気がついたときには、チームスターズの代表を受け入れるかどうかを従業員の投票で決めようとしていました。

 私は根っからの起業家で、組合というものは我慢できません。思わずかっととなって、チームスターズを支援した者は全員クビにしようと思いました。

 そして、AMPを受けなかったら、たぶんそうしていたでしょう。AMPでは、労使双方の立場になって、あるときは経営側、あるときは組合側の代表として交渉のテーブルにつくという訓練があったのです。

 おかげで複眼的にものを見ることができ、労使交渉の複雑さがわかるようになりました。お互いなっとくして握手することがいかにむずかしいかを、思い知らされたのです。

 また、話し合いを尊重しなければ、面倒な訴訟に巻き込まれることも学びました。言うまでもなく、全員解雇など論外でした。

 それなら私はいったいどうしたか?アメリカで最高の労務のスペシャリストは誰かとアドバイザーに尋ね、推薦された弁護士をすぐに雇い、その人に大幅な交渉権限を与えたのです。

 それから、会社の幹部を集めてこう言いました。この問題については、きみたちは手を引きなさい。あとはプロに任せる。これからは専門の弁護士だけが、組合との交渉にあたる。

 そう告げたのです。労働問題にうとい者がしゃしゃり出ていたら、発火しやすいものにマッチを擦ったに違いありません。

 成功している起業家やCEOには、共通した特徴がいくつかあり、そのうち無視できないのが、危機が発生したとき、自分よりもうまく火を消せる人間はいないという思い上がりです。

 しかし、AMPに行くと、自分がいちばんうまくできることと、できないことを、虚心に見極めるよう教えられます。トップの座にすわり、お追従ばかりを聞かされ、裸の王様になってしまうと、この現実のチェックができなくなるのです。

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 生涯学習のパワー

 AMP受講生がまず戸惑うのは、オフィスから教室へという環境の変化である。ハーバードのキャンパスに来るまで、かたときも頭から離れなかった人間や仕事から切り離され、最初の数日間はどうにも落ちつかない。

 しかし、このもどかしさ、自分ひとり取り残されたように感じる時間が過ぎると、学ぶことのパワーに眼が開かれていく。

 AMPの卒業生、ロイ・リチャーズはこう語る。

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 ハーバードのプログラムに没入していって、はたと思いました。リーダーは永遠の学生でなければいけないと。

 教室に戻ることは、自分の知識基盤を拡げる最善の道なのです。

 毎日の仕事に追われていたら、まず学べそうもないことを学べるのです。そうわかってから、私は毎年、なんらかの訓練を受けようと心に決めています。教室に行くと、自分の技能と経験の欠落を埋めることができ、経験者としてひとまわり大きくなります。

 たとえば、私はいま、学校に戻って、スペイン語を勉強しています。中南米には5億人もの人が暮らしていて、そのうち電気のある暮らしをしている人たちは3分の1にしかすぎません。

 うちは電力関連のビジネスですから、そういう人たちについて、もっと知る必要があります。その人たちはどういう生活をしているのか、どういうマーケティングが効果的か、私のビジネスにとって何が障害になるのか、そうしたことをもっと知る必要があるのです。

 スペイン語の習得は、中南米の文化に溶け込むパスポートになるはずです。これはグローバル規模での成功に絶対欠かせません。

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 究極の成功をおさめたときでさえ、向上心に燃えるリーダーはあらゆる機会をとらえて知識を増やしていく。いつでも、どこでも、誰からでも学べることを知っている。

 それを裏付ける実話を紹介しよう。

 私は最近、カリブ海に浮かぶアングイラ島に遊びに行ったとき、高級リゾートのオーナーで、世界を股にかけるヘッジファンドの責任者である起業家に会った。

 南アフリカに同国最大のディスカウント店チェーンをつくりあげて、ひと財産築き上げた人である。

 彼が南アフリカでのビジネスに夢中になっているとき、思いもかけない人物から手紙が届いた。差出人の名は、サム・ウォルトン。そう、ウォルマートの創業者にして会長、当時、世界一の大金持ちだったサム・ウォルトンである。

 一面識もない人からの短い手紙にはこう書かれてあった。 − ご商売繁盛の秘訣を勉強しに、南アフリカ、ケープタウンまでお訪ねしてもかまいませんか − 。 

 ウォルマートの一大帝国に比べれば、南アフリカでの商売繁盛など物の数にも入らず、めもくらむほどの成功をおさめているウォルトンが、弟子と呼んでいい男に教えを乞うなど、常識では考えられないことだった。

 もちろん、その起業家は、ウォルトンが自分のビジネスに関心を持ってくれたことに大喜びし、心からお待ち申し上げますという返事を書いた。すると、すぐにウォルトンは飛んできた。遠路はるばるエコノミークラスで。。。ケープタウンの本社に付くとすぐに、スケジュール表に詰め込める限りの店舗訪問を詰め込んでいった。

 滞在日程は、帝王の謁見スケジュールではなく、学生の時間割だった。ウォルトンは売り場設計をじっくりと眺め、在庫を調べ、コンピュータ・システムを勉強し、集荷場にも足を運んだ。

 ノート片手に、店長にインタビューし、店員に質問し、お客さんの声を聞き、納品業者の話も聞いた。その間、ずっと学んだ詳細をノートに書き留めていた。

 おそらく、アーカンソー州ベントンビルに帰る飛行機の中で、ノートをじっくり復習したことだろう。

 小売り業者にさん然と輝く成功者が、自分のレーダー・スクリーンに映らないような同業者から学ぶチャンスに飛びつくというのは、常軌を逸している。

 しかし、このエピソードはまさにウォルトンの生涯を象徴している。ウォルトンは地球のどこを旅していても、暇さえあれば見学し、質問攻めにし、学習し、自分の知識基盤と視野を広げ、小売業経営者として一歩でも上に行くために役立つと信じることを何でも吸収した。

 ウォルトンの生涯学習の旅は、小売ロジスティックスの領域にとどまらなかった。マーチャンダイジングでも、従業員のヤル気向上でも、顧客サービスでも、宣伝でも、広報でも、競争戦略でも、学べることは何でも学んだ。

 ウォルトンは一度たりとも、教えを乞う相手を、成功の大きさや会社の規模で選んだりはしなかった。どんなレベルの成功者からでも、成功した人からはかならず学べるものがあると信じ、謙虚に学びつづけた。

 小売業界の頂点を極めたことなど、ウォルトンにとってはどうでもいいことだった。

いちばんよく知っている者、そしていちばんよく学びつづける者が勝つ
 − それが米国最大手の小売業者、ウォルマートの創業者、ウォルトンの信念だった。

 ウォルトンはAMPを受講していないが、生来の旺盛な好奇心に加え、小売業の複雑きわまるダイナミズムについては何でも知りたがる性格は、AMPが重視する生涯学習の姿勢そのものである。

 強力な組織をつくろうと思ったら、今日の競争に勝つだけでなく、変化が起こる前に、変化を見越して動き出す組織をつくろうと思ったら、学習ほど大事なものはない。

 ( つづく )

 【 引用: ハーバードAMPのマネジメント―世界最強のビジネス・エリート養成コース 】



 【 ハーバード・ビジネスレビュー リーダーは未来をつくる 】

2012年10月20日

ハーバードビジネススクール ( 30 ) 完璧さを求めるのは小物の証明

 【 ハーバード・ビジネススクールの教授陣の著作より紹介します。連載記事はカテゴリー欄から通してご覧ください 】

 ハーバードが企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースです。

 完璧を求めるのは、小物の証明

 キャリアのスタート時点では、みんなスペシャリストである。エンジニアであり、会計士であり、セールスマンであり、プログラマーであり、保険アクチュアリーであり、だれもが専門のせまい道を進む。

 私たちは出世しようと思うとき、才能と知性とエネルギーを、より高度な専門家に集中しようとする。エンジニアの中にエンジニアに、会計士の中の会計士に、セールスの星の中でひときわ輝くセールスマンの星になろうと考える。

 これはカルビニズム

  (  宗教改革の思想家ジャン・カルヴァンにちなんでカルヴァン主義と名づけられた。プロテスタントのキリスト教で、すべての上にある神の主権を強調する神学体系、およびクリスチャン生活の実践である。 ) 

 の勤労と修練の規範からみた自己最善の追求である。これはよいことだと世間では思われているが、組織の頂点に向かう道ではない。

 むしろ、キャリアの開花を妨げる道だと言ってもいい。

 ハーバードAMPのヒューゴー・ユタホーベン名誉教授は言う。

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 「 スペシャリストの目標は、自分の力を最大限活かせることに力を使うことである。エンジニアは最高の製品を設計したいと思う。財務責任者は経費抑制のもっとも効果的な方法を見つけたいと思う、などなど。

 しかし、シニア・マネージャーの地位にのぼるには、自己完成の追求をやめ、自分の下で働くスペシャリストの知識と技能のバランスを追求しなければならない。

 一選手から、チームプレーのプランナー兼コーチ兼まとめ役に脱皮しなければならない。

 この変身をむずかしい、あるいは不可能と考えているエグゼクティブが多いのは、自分を完璧なものにしたいという欲求を捨てきれないからである。

 今日のグローバルな経済における戦いでは、個人の熟練より、個々の力をうまくかみ合わせる方が重要なのだ。そのことを認識しなければならない。 

 たとえば、バイオリニストはオーケストラの主役である。いいオーケストラほど、コンサートマスターのバイオリニストは高い芸を求められる。演奏家は完璧を追求する。

 しかし、指揮者は演奏家とは違い、各奏者の至芸の追求と、各パートの総和を超えた音楽を生み出す目標とバランスを考えなくてはならない。そのバランスを取るには、専門志向が強いエグゼクティブには受け入れがたいと思うが、次の二点を受け入れる必要がある。

 @ 完璧を追求する自己中心の考え方から組織としての卓越へ、焦点を移さなければならない。
 A 自己の研鑽 ( けんさん ) に没頭せず、まわりと力を合わせるよう、チーム全員を説得しなければならない。

 バイオリニストの名人芸がオーケストラ全体の微妙なバランスを崩しているとしたら、そのバイオリニストはオーケストラ全体のために自己満足を捨てなければならない。
この微妙なバランスを保つことが、効果的マネジメントの前提条件である。 」

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 出世の階段をのぼっていくほど、このバランスを取るのがむずかしくなっていく。マネージャーがよく不意をつかれる隠されたパラドックスがあるからだ。

 こう考えてみよう。会社の地位が高くなるほど、あなたの下には、個性が強く、自信満々の人たちが増えてくる。部下の多くは、自分のほうが有能だと思い、あなたのポストをすきあらばと狙っている。

 つまり、上にいくほど、みんなの力を借りられるかどうかで、得るものも失うものも幾何級数的に大きくなっていく。知恵と、意志と、忍耐とビジョンの力で部下を率いていけるようになれば、自然と相乗効果が生まれ、それが会社の競争力を高めていく。

 ( つづく )

 【 引用: ハーバードAMPのマネジメント―世界最強のビジネス・エリート養成コース 】



 【 ハーバード・ビジネスレビュー リーダーは未来をつくる 】

2012年10月07日

ハーバード・ビジネススクール (29)

 【 ハーバード・ビジネススクールの教授陣の著作より紹介します。連載記事はカテゴリー欄から通してご覧ください 】

 ハーバードが企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースです。

 “ コーチング ”

 ケネス・ローゼンは、古い習慣を断ち切り、部下にかなりの自由を与える方向に転換した理由をこう語る。

 「 ハーバードに行って、世界を見る視野が俄然広がったのです。私は30年も、ここコネチカットでヘリコプターを作り続けてきた人間で、私が見る世界はごく限られたものでした。

 部下との接し方を学んでいくうち、自分はいままで部下にどう思われていただろうと、しきりに考えるようになりました。そして自分なりに出した答えは、大喜びできるようなものではありませんでした。

 いまが変わるチャンスだ。このチャンスを逃してはいけない。そう思いました。コーチングという発想に切り換えると、組織内の意志の疎通に新しい道が開けます。でも、そう簡単にはいきません。

 いままで独裁者だった者が、ある日突然コーチに変身しても、みんな戸惑うだけでしょう。みんなが受け入れてくれなければ、コーチとしていい仕事はできません。

 みんなが私のことをコーチとして見てくれるようになり、私がコーチとして信頼されるようになるには、すこし時間がかかると思いました。

 それからしばらくして、ボスに、つまり社長に 「 きみは最近ずいぶん変わったな、人間として大きくなった。 」 と言われました。

人生もある段階にくると、自分の成功や出世だけを追い求めるのではなく、人を救いたいと心から思うようになり、そうなると人間がどっしりしてくるのです。

 そして、度量が大きく成熟した人のあとに、みんなついていきたいと思います。その人のために、共通の目標を達成するために、もっと頑張ろうと思います。

 野心で胸がはちきれそうになっている若い頃には、こういうことはなかなかわかりません。実際は、人の気持ちを思いやり、コーチングやメンタリングに力を注ぐほど、どんどん高い目標を達成できるようになっていくのです。

 一方で、リーダーというのは権威ある存在でなければいけないのも事実で、大勢の人間を引っ張っていかなければならない。

 コーチングに走りすぎないよう、バランスを取る必要もあります。行き過ぎたときは少しバックできるようにしておかないといけませんね。中庸を見つけ出す必要があります。

 ただ、どこが中庸かは状況によって違います。そこが大事なところです。チームが完全に混乱状態に陥り、自分が介入して、指示を出さなければならない時もあります。

 しかし、そのときも、コーチであることを忘れてはいけません。中庸を見つけ出せたら、真のリーダーの証明であると言っていいでしょう。

 今は絶妙のバランスを取れるようになりましたが、最初は大変でした。

 ハーバードAMPに行く直前、私は体をこわして入院しました。あのつらい経験は忘れられませんが、ものごとを客観的に見る時間ができました。以来、会議で何かとんでもない話が出てきたときに、私は怒りを爆発させず、自分にこう言い聞かせるようになりました。

 「 いま、それがほんとうに大事なことなのか? 会議でごたごた言う人たちは、苦しんでいて、助けを求めているだけではないのか? 」 と。

 誰でも、人生にはつらいことがあります。個人的な挫折もあれば、仕事上の挫折もありますし、健康を害することもあれば、とんだ災難に遇うこともあるでしょう。

 仕事で厳しい試練に立たされたときは、かつて自分が直面した危機を思い浮かべて、状況を客観的に見つめなおすといいと思います。

 あわてて行動を起こさず、待てよと自分に言い聞かせ、心の中で十まで数えながら、自分はいま何をしようとしているのか、ほんとうは何をすべきなのかを、冷静に考えてみるのがいいでしょう。

 号令を下す人をみんなが必要としている様子がありありとうかがえたら、そのときこそ、歴戦のコーチが陣頭に立って全軍を鼓舞し、共通の目標に向けてチームをぐんぐん引っ張っていくときです。

 戦争の英雄さえ、矛 ( ほこ ) をおさめる 

 なによりもチームワークが求められているとき、ミクロ管理 ( こまごまとした業務上の指示を出すやり方 ) はうまくいかない。そして、AMPが強調しているように、グローバルの戦場で勝敗を左右するのは、チームワークである。

 AMPの卒業生、モシュ・レビほど、チームワークの力を知り尽くしている人はいない。警備大手セーフガーズ・テクノロジーズのCEOに就任したとき、レビはイスラエルの4度の戦争で磨き上げた独裁的スタイルを手土産に会社に乗り込んだ。

 有能な軍司令官であったレビは数々の勲章を受け、イスラエル軍人最高の栄誉である 「 イスラエルの英雄 」 にも輝いている。一切のミスを許さず、敵は皆殺しにする、この果断にして冷酷な男が、戦場と同様に、役員室でもコワい存在だったことは想像に難くない。

 レビはこう回想する。

 「 私は顧客も従業員も同様に扱っていました。私がボスだ。私がいちばんよく知っている。おまえらはただ、私の命令に従えばいい。質問も提言も意見も断じて許さん。

 いま振り返ってみると、軍司令官のスタイルをそのままビジネスに持ち込んでいたんです。AMPに行って、これは自殺行為だと気づきました。私はたしかに決断力はあった。しかし、ビジネスを成功させる最善の手段を踏んでいなかった。

 私は大きな過ちを2つ犯していた。一つ目は、人から得られる重要なインプットをドアに閉ざしていたこと。二つ目は、独裁者だったため、チームをつくれず、育てられず、チームワークの力を活かせなかったこと。

 これはどれも、AMPがいちばん力を入れているところで、AMPで学んでいくうち、正しい行動を取るためには、ごたごた文句を言ってもらうことが必要なのだとわかってきたのです。

 ハーバードから帰ってくると、私はすぐにお客さんに対する態度を改めました。ハーバードに行く前は、お客さんにはいつもこう言っていました。

 「 あなたのビジネスのことは、あなたがよく知っている。セキュリティのことは、私がよく知っている。だから、セキュリティのことは私に任せなさい。 」 と。

 私たちはお客さんにとって最善と思うシステムを考え出し、それをお客さんのところに持って行って説明していました。お客さんがそのシステムづくりに協力したいと言っても、私たちははねつけていました。

 お客さんの助けは要らないし、欲しくもない。まあ、もっと遠まわしに言うこともありましたが、とにかくそういう態度でした。しかし実は、お客さんからのインプットが必要だったのです。

 多くの場合、システムを設置してから、いろいろと問題が出てきました。原因ははっきりしています。私たちがお客さんを設計プロセスから締め出していたからです。今は違います。

 AMPで叩き込まれたのは、なによりも、人の話を聞け、みんなで力を合わせろ、お客さんに質問しろ、情報を共有しろ、ということでしたから。

 お客さんとチームをつくり、システムのコンセプトから設計、設置まで、お客さんと一緒にやっていくのが一番いいとわかったのです。お客さんは大喜びです。設置がスムーズにいき、お客さんの要求とニーズに最初からぴったり合うものが届けられるからです。

 レビはリーダーシップを新しい観点からながめ、AMPで学んだ新しいアプローチを自分のビジネスに応用して成功した。

 モシュ・レビが説く、強力なチームをつくる5つのステップ 

@ 自分がすべてを知っているという思い上がりを捨てる。

すべてを知っている人はいない。どれだけビジネス経験が長くても、顧客から、従業員から、取引先から、学ぶべきことはたくさんある。

  A 力をあわせろ。命令するな。

“ 知恵を貸してくれ ” “ 提案してくれ ” “ 批判してくれ ” “ 意見を聞かせてくれ ” と、みんなに頼めば、チームという意識が強まり、全員の生産性が上がる。

  B お客さんのところへ行ったら、売る前に聞け

  お客さんは自分たちが必要としているものを詳しく説明したいと思っている。そして、その話をよく聞いて、製品やサービスに活かしてほしいと思っている。

 C 会議を制圧したい衝動を抑えろ。

  ボスが次々と命令を下すだけの集まりは、会議とは言わない。ワンマンショーは、チームワークの精神に反する。

  D 部下にミスを犯す自由を与えよ。

  レビはイスラエル軍司令官だったとき、配下の将兵に 「 ミスを犯せば命はない 」 と言っていた。しかしビジネスでは、ミスを犯しても命は取られない。

 それは学ぶチャンスであり、体勢を立て直すチャンスであり、再度挑戦するチャンスである。人は失敗するほど賢くなる。

 ( つづく )

 【 引用: ハーバードAMPのマネジメント―世界最強のビジネス・エリート養成コース 】




2012年08月27日

ハーバード・ビジネススクール (28)

 【 ハーバード・ビジネススクールの教授陣の著作より紹介します。連載記事はカテゴリー欄から通してご覧ください 】

 ハーバードが企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースです。

先制攻撃のリーダーシップ − ロードマップになる秘密リスト 

 リーダーになりたいのなら、順応性が必要である。ロザンヌ・アントヌッチはAMPで学んだことを胸に、全国行脚に出た。

 前のポストで自分に仕えていた800人の部下に会うためだ。上司と部下の関係を突き詰めて考えていくうちに、ボスとして君臨するより、メンターとして、協力者として部下に接するほうが、多くのものを得られると気づいたからである。

 『 AMPに参加したのは、いまの会社に入ったばかりのときで、上司はミスターを付けて呼んでいました。しばらくして、CEOをファーストネームで呼ぶようになりました。

 私のレベルが上がったからではなく、ビジネス環境がどんどん変わっていて、その変化に対応しなければならなかったからです。

 名前をどう呼ぶかは、他愛もないことかもしれませんが、経営管理プロセスで非常に重要なことを象徴しているのです。わたしたちベビーブーマーは25歳の若手MBAには、むかし自分たちが扱われたのとは違う接し方をしなければいけません。 』

 自分を追いかけてくる人たちをみると、自身たっぷりで、言いたいことをはっきり言うし、私たちの世代よりもはるかにしっかり準備をしてから、会社に入ってくるようです。

 彼らは、単なる部下として働くことに満足しません。パートナーとして仕事をしたいと思っているのです。私はいい考えがあったらどんどん言ってくれと頼んでいますし、彼らの提言に耳を傾けています。

 そして、提言に現実的なメリットがあると判断したら、力を合わせてその実現をめざしています。

 ここには大きな見返りがあります。人間対人間として、私が接していることに気がつくと、相手も同じ姿勢をとってきます。ボスを喜ばせるにはどうすればいいかという発想から、使命を遂行するにはどうすればいいかという発想に変わり、行動も変わってきます。 』

  自衛が自縛であることを知れ

 野心に燃えるエグゼクティブは、自分が頭がよく、世渡りがうまく、押しが強いから出世できると信じ、経歴に汚点を残すようなミスだけは犯すまいと細心の注意を払っている。

 部下の失敗の責任を取らされるのはいやだから、細かいことにまで口を出し、部下を厳しく監視する。

 こうしたミクロ管理で規律はできるかもしれないが、 「 収穫減少 」 のポイントにすぐに達してしまう。一定の行動範囲内に部下を閉じ込めてしまうからだ。

 ミクロ管理は、チャレンジする意欲、限られたリスクを取る意欲、最初は全面的な指示を得られない画期的なことを提案する意欲を失わせ、会社と従業員の成長を大きく阻害する。

 それは事業部単位で見ても同じである。その部で働くひとはみな、ボスの言いつけを守ることに汲々とし、型破りなアイデアに挑戦したり、思い切った計画を実行に移したりすることは何もできなくなる。

 自衛が実は自縛につながるという、管理のパラドックスに陥るのである。

 こまかいことにまで管理統制しなければ気が済まないマネージャーは、手綱を緩めたら大変なことになると思っているから、手綱をきつく握って離さない。

 みんな勝手なことをやり出して、規律が失われ、下克上の世となり、大事な戦略を見失い、結局は成長目標を達成できなくなる。。。。

 そう思い込んでいる。しかし実際は、大体それと反対のことが起きる。

 上の者が手綱を緩めると、組織全体が生き生きしてくる。誰もが、もてる力をいかんなく発揮するチャンスが生まれるからだ。いいことがあるのは、下の方だけではない。上に立つ人間のほうも、大所高所からものを考え、先のことを見据え、自分の力をさらに磨く時間ができ、その意欲も高まる。

 シコルスキー・エアクラフトの役員、ケネス・ローゼンはこう語る。

 『 AMPから帰ってきてから、部下の仕事にうるさく口出しする時間より、先進テクノロジーについて考え、若いエンジニアをコーチするのに使う時間が増えました。

 驚くほどの変わりようです。以前、私は会議に出るときは、ピンストライプのスーツを着ていきました。それがパワーのシンボルだと思っていたからです。

 いまでは、もっとカラフルなものを使っています。自分の頭です。
部の会議に、私は君主として出席するのではなく、自分の経験を活かして有用な情報を提供できる者として出席しています。

 私は自分のやり方を押し通す権限を持っていますが、みんなを脅すためにそれを使おうとは思いません。私はリーダーとガイドの役目を果たしているのです。

 すると、実に面白いことが起こってきます。いまではみんな、会議で私に会えるのを楽しみにしています。私が大きな力になれることが多いから、というのもあるのでしょうが、もう一つ、私のほうもみんなの意見を聞くのを楽しみにしていることも大きな要因です。

 締めつけ管理をやめて、部下にかなりの自由度を与えると、おそろしくいいことが二つあります。

 @  自分が有能なマネージャーになる
  A  仕事が一段と楽しくなる。 』

 【 引用: ハーバードAMPのマネジメント―世界最強のビジネス・エリート養成コース 】

2012年06月18日

ハーバード・ビジネススクール (27)

 【 ハーバード・ビジネススクールの教授陣の著作より紹介します。連載記事はカテゴリー欄から通してご覧ください 】

 ハーバードが企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースです。

先制攻撃のリーダーシップ − ロードマップになる秘密リスト

 自分が熟知していて得意なことに時間の大半を費やしてしまうのは、人間として無理もない。一見すると、これはマネジャーの力をうまく活かす賢明な分業のように見える。

 だが、ここにおそろしい罠がある。人の上に立つ者が、楽しい仕事だけに力を注いでいると、苦しい仕事、厄介な仕事、不快な仕事が放置されて山積していく。悪い事態はいっそう悪くなる。

 そうした部署とその責任者が処分されるのは時間の問題である。

 サウスワイヤー・カンパニーのCEO、ロイ・リチャーズはこう語る。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 
 
  私たちはみな、仕事の上で不満を感じたもののリストを作っています。人には見せない秘密のリストです。

 通常、リストに載せるのは、なんとかしなければいけないものと分かっていながら、逃げたい気持ちが心のどこかにあるために、ぐずぐずと手をつけないでいる案件です。

 自分はかかわり合いになりたくない。その手のことはどうも苦手だ。そんなことをやるより、行動が成功に直結することに集中したい。その気持ちはわかりますが、好きなことだけやって嫌いなことはやらない、などということが許されるわけはありません。

 私たちはときどき、カギをかけたファイルから秘密リストを取り出して、棚上げしている問題にひとつひとつ取り組んでいかなければならないのです。

 AMPを受講すると、現状に満足したくないという気持ちが強まります。ハーバードから帰ってきて、自分のリストをながめると、私は守衛のような経営者になっていたと認めざるをえませんでした。

 先を考えて行動するよりも、全く守りの姿勢に入っていたのです。AMPを受けて、こんな行為は自殺行為に等しいことを知りました。会社の文化を変え、自分のリーダーシップのスタイルを変えるには、新しい声、快適ゾーンから私を引っ張りだしてくれる不快な声に耳を傾けなければならないと思いました。

 サウスワイヤーのような大きな同族企業でそれをやるには、そうした声を外から集めてこなくてはいけません。これは、AMPで私が学んだもうひとつ大切なことにつながってきます。

 すぐれたリーダーを研究し、なぜその人がすぐれたリーダーになったのか、そのアプローチの部分を自分の経営スタイルに取り込んでいくことです。やがて目の前に2つの道が見えてきました。

 @ まず、ビジネスの世界で尊敬するリーダーを選び出し、その人たちを取締役会に招きました。それまで、私はやや独善的になっていました。

 私たちになかった発想をもつ人が入ってくれると、会社としての視野が広がり、私自身、秘密リストの問題にチャレンジしようという意欲が高まってきました。

 A 一方で、先進的なIT企業のことを勉強していくと、そういう会社のリーダーは売上と利益を増やすことだけが得意なのではない、ということがわかってきました。

 彼らは、時を超えるエクセレンスを確立しようと考えているのです。会社が存続するかぎり、誰がかじ取りをしようと変わらない不滅のエクセレンスをです。

 それが会社にしっかりと定着すれば、何十年でも、どう時代が変わろうと、会社は業界のリーダーであり続けることができるのです。

 うちは電線業界のリーダー・カンパニーです。CEOとして私が会社に残せる最大の遺産は、時を超える不滅のエクセレンスなのだと思っています。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

 “ すぐれたリーダーは、昔のリーダーがつくったルールを書き換える ”

 短いとはいえ、波乱万丈のIT業界の歴史で、ジョン・スカリーのアップルでの采配ほど、貴重な教訓を残し、普遍的事実を伝えてくれる話はないだろう。

 風雲児として名をはせたアップルも、視野狭窄とずさんな経営のため、凋落の兆しが見えていた。宮廷クーデターが起こり、創業の君主、スティーブ・ジョブズが追い出され、救世主と期待されて玉座についたのは、ペプシコでマーケティングの才をふるったスカリーであった。

 が、やがて、スカリーが打ち出したアップル再建策はその場しのぎにすぎず、転変めまぐるしいIT業界では通用しないことがわかってきた。その後スティーブ・ジョブズがCEOとして元の鞘に収まったのはご存じのとおりである。

 同じような話は世間にたくさんある。会社再建のため外部から招へいされた救世主が、大火事を消し止め、会社を成長軌道に戻す。救世主は鼻高々、胸を張って勝利を宣言する。病は完治した。万全のモデルができた。さあ、次!

 ここに落とし穴がある。真のリーダーに求められる重要な資質のひとつは、しっかりしたビジネスモデルさえつくれば、自動操縦に切り替えて大丈夫だとは思わないことである。
( それがどんなに精巧なモデルであっても。 )

 ビジネスの世界には、完治も完了も完成もない。ビジネスのあらゆる面がたえず進行中だからである。もっとも成功しているリーダーは、このことを片時も忘れず、 「 教わり、学ぶ 」 永久運動によって、モデルを不断に改良していく。

 AMPのヒューゴー・ユタホーベン名誉教授は言う。

 「 すぐれたリーダーは、発見のプロセスを喜んで受け入れる。情報を求める旅に終わりはない。質問をし、インタビューをし、調査し、話を聞く。顧客、取引先、プロのアドバイザー、同僚、上司、部下など、情報を引き出す相手は数限りなくいる。 」

 アメリカン・ウーマンズ・エコノミック・デベロップメント・コーポレーションのCOO、ロザンヌ・アントヌッチは、その膨大な情報を吸収し、自分の経営スタイルを確立し磨き上げるのに使う方法を発見した。

◎  ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

 「 私が大学を出て就職したころ、会社の空気は堅苦しく、身が縮む思いがしました。ファーストネームで呼ぶ人はいませんでした。私はただ人の話を聞き、勉強し、言われたことをやればいいとうのが上司の態度でした。

 意見を求められたことは一度もありません。かりに私が生意気で世間知らずのあまり、意見を言ってしまったとしても、耳を貸してくれる人などいませんでした。

 私たちはみんな、部分的にせよ、学んだことを忘れられず、自分が扱われたように人を扱うものです。私も例外ではありません。一人前に仕事ができるようになり、責任もだんだん重くなっていって、部下をもつようになったとき、私は気づいたのです。

 自分が話を聞いてもらえなかったように、自分も人の話を聞こうとしないと。。。

 AMPでリーダーシップについて学んでいくうち、こう思いました。あらゆる世代の管理職が、新しいリーダーシップのあり方を考え、新しい道を発見しなければいけないと。

 経営管理のスタイルはつねに変わっていきますから、自分をリードしてくれる人を探していたときにうまくいっていたことが、自分が人をリードしようとするときにはうまくいかないだろうと思います。

 これは大事な点です。いまは、ビジネスの環境も文化もすっかり変わっていますから。基本的に、自分がむかし従っていたリーダーが作ったルールを書き換えるのが、すぐれたリーダーだと思います。 」

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

 ( つづく ) 
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 ( 引用: ハーバードAMPのマネジメント )

2012年03月28日

ハーバード・ビジネススクール (26) リーダーが犯しやすい最大の過ち

 【 ハーバード・ビジネススクールの教授陣の著作より紹介します。連載記事はカテゴリー欄から通してご覧ください 】


 ハーバードが企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースである。

 リーダーが犯しやすい最大の過ち 

 「 AMPを受講する前は、違う種類のマネージャーでしたか? 」

 ええ。絶対に妥協は許さないという、ストイックな求道僧のようなマネージャーでした。 
仕事のことでも、プライベートでも、やり方は同じでした。会社にいても家にいても変わらないなと、主人によく言われました。

 私はそうありたいと思っていたのです。AMPに行くまえ、私のリーダーシップのスタイルはずいぶん強気なものでした。世の中、いいこともあれば悪いこともあり、目をそむけたいこともある。

 つべこべ言わずに仕事をやりなさい。やればできるでしょう。みんなによくそう言っていました。。。

 AMPを受講してからずいぶんと変わりました。人には耐えられないこともある、ということがわかったのです。でも、突然、方向転換するのはよくありません。みんながそれを受け入れ、成長しているように。

 変化を起こし、新しいコンセプトを導入し、部下にフィードバックを与えるうまい方法を考え出す必要があります。馬鹿正直にやると、自分の首を絞めることになりかねません。

 AMPから帰ってきて、私の管理スタイルが一夜にして変わったわけではありません。私はまず、変化が歓迎されそうな分野をいくつか選んで、手をつけました。

 いま、データ重視で、冷酷で厳格、結果がすべてというタイプから、もっと人間味があり、人を大事にするリーダーに変わろうとしています。

 私なら、こんなステップを考えます。まず、部下の中から、高い実績を上げている人を選んでスタートします。私の下には、向かうところ敵なしのチームがひとつあります。

 そのチームはいま、大変だけどやりがいがあるプロジェクトに取り組んでいて、全員が燃えています。

 私ならたぶん、そんなチームと組んで始めるでしょう。そういうチームなら、自分の新しいスタイルを思う存分実験できますから。やり方を変えるというシグナルに動揺しないはずです。

 次のステップとして、チームの中から、信頼して何でも打ち明けられる人を見つけます。そして、その人にこう言うのです。

 「 こういうことをやりたいから力になってほしい。なにか衝突が起きたら、援護射撃をしてほしい。 」 そういう人は、これからどういう方向に進むのか、チーム全員が理解するのに、大きな力になってくれます。

 ≪ 実践派と理論派、右脳人間と左脳人間のビジネスマン ≫

 さて、エンジニア出身のB氏は次のように語る。B氏のAMP体験は、ビジネスの世界は二派 − 実践派と理論派、右脳人間と左脳人間のビジネスマン − に分けられるという事実に関連している。

 前者は直感や感性や経験を重視し、後者は数量分析やスプレッドシートを重視する。

 理論派 ( 左脳人間 ) は、いつも同じ経営のアルゴリズムを使い、経営に関するすべての変数を並べ替えれば、深遠な全体的真実があらわれると信じている。かなり単純な信仰である。

 つまり、方程式を見い出し、それを与えられた難問や機会に適用すれば、成功はあとからついてくるという考え方である。

 しかしAMPの受講生は、そうしたアルゴリズムが神話に等しいことを学ぶ。経営の科学は、科学でもなんでもないというのである。

 メトラスの社長をつとめたキャスリン・アンダーソンは、先に紹介したB氏とは違うスキルをもってハーバードに乗り込んだが、AMPの訓練を受けるうちに、B氏と同じように、難問と機会にタックルする創造的な方法に目を開いていった。

 私はエンジニアとしての訓練を受け、コンピュータ・サイエンスの修士号を持っていました。経営者がマスターしなければならないすべての変数 − 品質管理や顧客サービスや取引先との交渉など − をすべて結びつける方程式があると思って、AMPに行きました。

 私は病的なまでにデータを重視し、解決策はデータの中にあると思っていました。でも、ハーバードを出たときには世界は一変していました。経営は、科学よりも芸術に近いということを学んだのです。

 経費の交渉や戦略立案や人事などのいろいろな問題をすべて同時に、科学的に解決することはできません。理屈だけでなく、直感と分析と常識をうまく組み合わせて、総合的に芸術的に問題に対処するのです。

 このことに気づいて私のマネジメント・スタイルは変わりました。以前は、とことん分析してほしいとスタッフに要求し、小数点以下まで求めていました。

 今は、データだけに頼らず、別の角度からビジネスのいろいろな問題を眺めるようになりました。たとえば、ある状況をメモすることからはじめ、たとえば、それを犬にみたてます。

 みんなで話し合い、みんなが直面している問題を正確に把握できたと自信がもてるまで、イメージを修正していきます。

 分析の初期段階で、もっと見晴らしがよいところまで登って、世界を見下ろす必要があると気づくかもしれません。すると、犬だと思っていたのが実はキリンのような長い首をもっていたのに気づきます。

 この動物は − もちろん、事業戦略の比喩として言うのですが − 弱肉強食の世界で餌食になりやすいとわかってきます。そこで、アルマジロのような強い甲を付けようという話になります。

 このプロセスは、私たちが直面しそうなすべての問題がはっきり見えてくるまで、そして、その問題にどう対処すればいいかがはっきり見えてくるまで続けます。

 これは、私のチームと私自身がデータの狭い世界から、コンセプトとアイデアの広大な宇宙に飛び出すための創造的なプロセスなのです。

このプロセスは、私がAMPから持ち帰ったおみやげみたいなものです。AMPを受講して、経営では、こまかい数字よりも、全体を見渡す視野のほうが大切だと気づいたのです。

 ( つづく )





 ( 引用: ハーバードAMPのマネジメント )


2012年02月25日

ハーバード・ビジネススクール (25) リーダーが犯しやすい最大の過ち

 【 ハーバード・ビジネススクールの教授陣の著作より紹介します。連載記事はカテゴリー欄から通してご覧ください 】


 ハーバードが企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースである。

 リーダーが犯しやすい最大の過ち 

 リーダーが犯しやすい最大の過ちは、流行を追いかけることだと、AMPは教えている。移り気なリーダーは、確固たるスタイルを築き上げて、そのスタイルを守ろうとせず、あちこち目移りばかりしている。

 人の真似ばかりをして、次から次へと新しいやり方を試し、日替り定食よろしく、方法論を変えるから、下で働く者は大混乱に陥る。

 さらに悪いことに、方向性がなく、焦点の定まらない無能な上司だというレッテルを貼られる。

 グローバルな電話会社の副社長で、AMP卒業生のB女史は語る。

 「 ハーバードAMPに行くと、つぎあわせの経営スタイルを避けるよう教わります。すぐれた経営者のやり方を研究し、そのやり方をお手本にして自分の頭で考えていくのです。

 それを続けていると、すぐれた経営者というのは、これだという経営スタイルを選び、そのスタイルに時間をかけて投資していることがわかってきます。

 それで私のやり方も大きく変わりました。私はそれまで、すぐれたリーダーというのはみな、頭がいいから人の上に立っているのだと思いました。

 先端テクノロジーなどの時代の動きに目敏く、天才的な頭脳と先見性によって、大勢の人たちを率いているのだと思っていました。

 でも、AMPに行って、数字に強い人の真似をする必要はないと分かりました。私は人間関係に強いのです。

 人と人との心の触れ合いが大切な仕事に強いのです。その自分の強みを活かせばいいのだと気がつきました。

 AMPを受講してわかってきた大切な点がもう一つあります。それは、反感をおぼえるリーダーシップのスタイルに無理やり自分を合わせるより。自分の持ち味を活かして人をリードしたほうが、はるかにうまくいくということです。

 みんなが助け合うチームをつくればよいのだと自信をもったB女史は、自分が目指すリーダーシップの基本要素を3つあげてくれた。


 みんなが助け合うチームをつくればよいのだと自信をもったB氏は、自分が目指すリーダーシップの基本要素を三つあげてくれた。

 ● 強力なリーダーシップは、人の正しい採用からはじまる。自分の経営スタイル
のもとで力を発揮する人を集める。

 ● チームの弱点を補ってくれる人を雇う。あるレベルでは、これは簡単である。
 自分のチームがxと yに強く、z に弱いのであれば、zの弱点を埋めることに力を
集中すべきことは誰にでもわかる。

 しかし、チームの弱点がすなわち自分の弱点であるという現実を直視せざるをえ
なくなると、ことは厄介である。

 自分の足りない能力を補うために、新しい人を入れる必要があると認めるのはつ
らいことだが、それを素直に認め、そして、実際に行動に移せるかどうかが、真の
リーダーになれるかどうかの試金石になる。

 ● お金だけでは、やる気を引き出せない。部下に強い関心をもつことのほう
が、はるかに効果がある。

 部下が仕事に、人生に、何を求めているか、それをまず理解しなければならない。理解したら、その求めているものが得られるように後押ししてやることである。

 たとえば、もっと力をつけたいと思っている部下がいたら、研修を受けさせたり、OJTの機会を与えたり、仕事にもっと大きな責任を持たせたりして、その成長を助けてやることである。

 メンターになり、サポーターになることが、あなたのリーダーの地位を強固なものにしていく。

 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

 B氏はこう語る。

 「 状況の変化に応じて、マネジメントのスタイルを変えているのですか? 」

 そうです。コリン・パウエル ( 元米国防総省 統合参謀総長 ) がこんなことを言っていました。

 有能なリーダーになりたいなら、自分のスタイルに柔軟性をもたせ、部下の力量に合わせて、どういうスタイルを取ればいいかを考えなければならない。

 いつもいつも部下が自分に合わせるべきだと思ってはいけない。たしかにその通りだと思ったので、以来、私はずいぶんやり方を変えています。

 といっても、限度はあります。譲れないところはあります。状況によっては、私の方針を曲げるわけにはいかないと、みんなに言わなければならないときもあります。

 私に合わせる気がないのなら、チームから出ていきなさいと。

 「 企業文化が自分のスタイルに合わないと気づいて悩んでいるマネージャーにアドバイスはありますか? 」

 辞めるべきです。自分の経験からそう言うのです。私も同じような状況で苦しんだことがありますから。

 私は22年も同じ会社にいますが、いろいろな部署で働いてきたのです。うちは、大きな会社の中に小さな会社がたくさんあるようなものいでですから。

 一度、自分のやり方とまわりの文化が、まるで水と油だと気づいたことがあります。

 信頼している何人かに、相談しました。私はこう言いました。かならずわかってもらえると思うし、なんとか折り合いをつけられると思うと。

 すると、顔をまじまじと見られ、 「 甘いなあ 」 と言われました。ほんとうにその通りでした。
ほとんどの人が 「我慢すれば何とかなる 」 と言い聞かされてきたと思います。

 私の父もたぶん、そう信じていたでしょう。でも、私は違う現実に直面したのです。そんな状況に置かれたら、さっさと立ち去るのが賢明な選択である、という現実に。

 「 AMPを受講する前は、違う種類のマネージャーでしたか? 」

 ええ。絶対に妥協は許さないという、ストイックな求道僧のようなマネージャーでした。 

 ( つづく )



 ( 引用: ハーバードAMPのマネジメント )


2012年01月14日

ハーバード・ビジネススクール (24) 先制攻撃のリーダーシップ

 【 ハーバード・ビジネススクールの教授陣の著作より紹介します。連載記事はカテゴリー欄から通してご覧ください 】


 ハーバードが企業の上級管理者向けに提供しているAMP ( アドバンスド・マネジメント・プログラム ) は9週間のコースである。

 この連載では、すぐに仕事に生かせる新しい発想と不朽の真理、そして、自分の仕事、自分の競争相手、自分のスタッフ、自分のキャリアに対する見方が一変するヒントが山ほど出てくるだろう。

 これを読んだ皆さんは、マネージャーとして、リーダーとして、将来のCEOとしての自分の役割についても考え方が変わってくるはずだ。

 ある米通信最大手の副社長はこう言っている。

 「 ハーバードAMPで学び、AMPに貢献したことで、私は初めて、トップクラスの人たちと競争していける自信がわいてきた。 」

  AMPの内幕 

 AMPへの参加は、学究生活に戻ることだと言って差し支えない。キャンパスに到着すると ( 管理職の受講生の大半は、その地位にふさわしい優雅な暮らしに慣れている。 )、ハーバード・ビジネススクールのマッカーサー・ホールで部屋を割り当てられる。

 交流のために設けられたロビーを8つの個室が取り囲む形になっていて、そうしたブロックがならんでいるのがドミトリーである。

 受講生は週に6日授業を受け、平均して1日に14時間勉強する。会社の仕事はすべて誰かにバトンタッチし、家族は家に残し、脇目もふらずに勉強する環境に置かれる。

 AMPの学習課程 

 1週目から2週目

 受講生は、会社の中で直面する経営上の難問とチャンスを思い出して整理し、それをもとに自分の目標と目的の優先順位をつけるよう求められる。

 AMPは経営者の視野を広げることに重点を置いているので、受講生はつつましい国内プレーヤーからグローバルの覇者になった有名企業の発展の歴史を学びながら、自分の縄張りから外に出るよう求められる。

 変化を起こすには、どの変数を動かせば良いか、変数の調整で会社がどう変わっていくかを学ぶのが、ケーススタディのポイントである。

 このオープニング段階では、希望すれば会計や財務の基本を学ぶクラスにも出られる。

 3週目から8週目

 この期間がプログラムの核心であり、経営管理能力を高めるために設けられたさまざまなコースで特訓を受ける。

 9週目

 ここでまた広い視野に戻り、それまで学んだことを経営プロセスの全体像のなかでとらえなおし、CEO、あるいは経営陣の一人、あるいは取締役としての重責を果たせるだけの力をつける。

 この段階で、民営化、企業再建、環境対策、グローバルな事業提携、ITの影響、競争優位などの問題点も取り上げられる。

 これらはすべて、ケーススタディにうまく組み込まれているため、授業には現実感と緊張感がある。

 仕上げ

 教授陣は、AMP修了者が会社に戻ってから何をすべきかについて、相談に乗る。ここで学んだ知識と技能を、待ち受けている問題の解決にどう活かすかに焦点を絞る。

 AMP受講生の典型的な一日 

 7時 クレスギー・ホールで朝食をとりながらディスカッション。

 8時 メンバーの決まったディスカッション・グループが集まり、ケーススタディの準備をしながら、問題点を整理する。

 9時15分 授業1 「 競争と戦略 」。 ディズニーのヨーロッパ進出と、それが同社に与えた戦略的影響についての講義。

 10時30分 休憩

 10時50分 授業2 「 情報と組織のコントロール・システム 」。シンガポール・トレードネットを実例として取り上げ、ITがいかにして一国の競争力を変えてしまうかを考える。

 12時 クレスギー・ホールのファカルティ・クラブで昼食。

 1時15分 授業3 「 組織効率 」。アップル・コンピュータの組織と文化の再編について、教授と受講生がディスカッションし、市場で起きている現実の変化を考える。

 2時30分 自由時間。選択科目を受講したり、ゲストの講演を聞いたり、自習したり、勉強会を開いたりして過ごす。

 6時30分 クレスギー・ホールのファカルティ・クラブで、夕食をとりながらグループ・ディスカッション

 8時 読書と予習

  ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ ◎ 

  先制攻撃のリーダーシップ

 企業の経営幹部に助言をするのが自分の仕事だが、私はいつもリーダーシップの問題に焦点をあててきた。

 人間の集団を、企業の競争優位の原動力に変えるには、何よりも強力なリーダーシップが求められることを知ったからである。

 チームでも、課でも、部でも、会社でも、すばらしい業績をあげている組織はどこも、どうすればみんなの力を結集できるかを知っているリーダーに率いられている。

 そうしたリーダーはまた、チームの結束を強め、人々を奮い立たせ、凡庸のリーダーのもとでぶち当たる壁を突き破る術を知っている。部下の上司を見る目と部下の仕事ぶりの間には、直接の相関関係があることを発見した。

 ほとんど例外なく、すぐれたリーダーは信頼され、尊敬されている。崇拝されていると言ってもいい。

 まわりを明るくするだけでなく、一旦緩急あれば、みんなの先頭に立って、厄介な問題、ときには怖じ気をふるうような問題の解決に乗り出す。

 敢然と矢面に立ち、リスクを恐れず、批判覚悟で困難な決断を下す。

 この勇気と才覚と手腕と決断力が、人々の胸をうち、人々に自信を与え、この人のあとについていきたいという気持ちを起こさせる。

 あの人に続けという熱気がうずまくようになれば、目標達成のために、組織はまさに全軍躍動となる。 すばらしい結果が出て、競争相手は頭を抱え、事業は発展していく。

 AMPを受講したつもりで、ハーバードの教授から、そして受講生 ( 現場でリーダーとしての力量をいかんなく発揮してきた人たち ) から、リーダーシップの要諦を学んでいこう。

 AMPの教材、クラス討論、自主トレ、グループ学習の力によく注意を払えば、リーダーとして成功する方程式を手に入れることができる。

 1. 超一流の意思決定者、すなわちビジネス界の 「 トップガン 」 は、決して後手にまわることがなく、競争相手に、市場動向に、景気循環に、先制攻撃を仕掛けていることがわかる。

 2. 彼らは、ポリティックス ( 社内政治 ) と競争圧力と景気動向が複雑に入り組む迷路を走り抜ける技をもち、どんな仕事をしてもキャリアアップのチャンスを逃さない術を心得ている。

 3.  先制攻撃リーダーシップの戦略と戦術を学べば、私たちも、衆に抜きんでて、実績をあげ、あなたが率いなければならない人たちを心服させ、あなたの仕事ぶりをじっと見ている上司の度肝を抜くような成功を手に入れることができる。

 この3つを頭にたたきこんでおくことである。

 人によっては、すぐれたリーダーになる一番の近道は、お手本を見つけることである。大手食品会社の上級副社長である女性のA氏は、AMPを受講して、自己分析の鏡をみたとき、自分が優柔不断であることがわかった。

 自分がどちらに動いても、CEOや取締役会との間に波風が立つに違いない。そう思うと決断が鈍り、自分の手腕と経験がもっとも求められているときに、ぐずぐずと決断をさきのばしにしていることが多かった。

 避難ごうごうの決断を下すより、決断をしないことのほうが深刻な事態を招く。リーダーシップが不在で、問題が山積し、みんなが方向を失い、不安が組織全体に広がっていくと、その会社が迅速に行動できずに残した空白を、競争相手が埋めてくれる。

 A氏が、ハリー・トルーマン大統領のエピソードを聞いたのは、AMPのグループ討論のときだった。トルーマン大統領は歴史上もっとも困難な決断を迫られたといっていいだろう。

 日本への原爆投下は是か非か、という決断である。大統領はいろいろな角度から検討に検討を重ね、さんざん悩んだあげく、軍にゴーサインを出した。A氏の心にいちばん残ったのは次のことだった。

 トルーマン大統領はひとたび決断をくだすと、補佐官のクラーク・クリフォードに
 「 私はもうやすむ 」 と告げて、ベッドに入ってぐっすりと眠った。

 これで本当によかったのかと悩むことはなかった。周知のように、トルーマン大統領の決断は非常に批判と議論をよび、今日もなお根強い批判がある。

 しかし、トルーマン大統領は、どんなに激しい非難を浴びようと、それで自分の人気がどれだけ落ちようと、難しい決断をくだすことが自分の責務であると腹をくくっていた。孤独な決断は、リーダーが必ず直面する試練であると達観していた。A氏はこう語る。

 『 私は以前、自分の命取りになりかねないような決断に迫られると、いつも凍りつき、いきなりヘッドライトを浴びた鹿のように固まってしまいました。

 頭の中で声がするんです。CEOは怒らないだろうか? 取締役会のご機嫌を損ねないだろうか? いまではこう考えるようになりました。

 なにか決断を下せば、どこからか必ず批判は出てくるでしょう。でも、自分は正しい決断をしたという確信があれば、トルーマン大統領のようにぐっすり眠って、後ろを振り返らないことはできるし、そうすべきだと思います。

 ときには、上司に反対されて、決めたことを撤回せざるを得ないこともありますが、それには上にいくための授業料だと思います。

 結果論であれこれ言われるのは気持ちのいいものではありませんが、私の仕事と私のチームはいま、先頭を走っています。競争相手に大きく差をつけています。

 それは、私たちが果断にすばやく動くからです。私が重視しているのは、その事実です。批判されることもありますが、私たちは勝っています。その事実が、私の自負心と私のキャリアの大きな支えになっています。 』

 リーダーシップのダイナミクスを新しい観点からとらえなおし、リーダーシップに伴う権限と特権を存分に活かす新しい方法を学ぶこと、それが先制攻撃リーダーシップの要諦である。

 決断力も創造力も協調性もあり、はるか先を見据えながら地にしっかりと足をつけている。そんなリーダーになる意志を手にして、これからの道を歩んでいこう。

 大勢に抜きんでて、トップへの階段を着実に登っていく − それが皆さんの目標なのだから。

 ( 引用: ハーバードAMPのマネジメント )


2011年12月02日

ハーバード・ビジネススクール (23)

 【 ハーバード・ビジネススクールの教授陣の著作より紹介します。連載記事はカテゴリー欄から通してご覧ください 】

 アドバンスド・マネジメント・プログラム ( AMP ) はこれまでずっと、理論的研究と実社会の知恵を融合させれば、人格、能力ともにすぐれたリーダーを育成できるという理念に導かれてきた。

 毎年、春と秋に、世界で名だたる一流企業のシニア・マネージャーが猛特訓を受けるために、ハーバード・ビジネススクールのキャンパスに集まってくる。

 会社の将来を背負う人たちに、最良の教授の指導を受け、ベストカンパニーのベストプラクティス ( 最良の方法 ) を学び、志を同じくする者と同じ釜の飯を食って、人間的にも一回り大きくなってほしいというのが、高い授業料を負担する会社の願いである。

 このプログラムに参加すると、これまでの信念が大きく揺らぐ。深い真実と効率的な経営を追求するために、日常的な世界からは切り離される。

 この特権的な環境の中で、受講生はせせこましい職掌の壁を打ちやぶり、新しい能力と視野を理解し獲得する術を学ぶ。

 AMPではビジネスの現場でなによりも求められる5つのスキルを中心に、カリキュラムが組まれている。

 ● 意思決定と動機づけ

 ● 組織のパワーアップ

 ● グローバル市場での競争力強化

 ● 品質改善、生産性向上、チームワーク

 ● 企業ファイナンスの理解

 AMPはまた、卓越したマネジメントの柱になる次の3点も重視している。

 1. 脱専門化 − マネージャーはこまかな問題にとらわれず、チームメンバーの専門技能と経験をうまく組み合わせて、大きな相乗効果を産み出さなければならない。

 AMPの受講生は、多岐にわたる知識と能力が求められるミッションを実行する術を教え込まれる。

 2. 外に目をむける − 内向きで視野が狭く、毎日、言われた仕事をこなすだけのマネージャーが多すぎる。

 社内の序列の外で働いている力、なんらかの形で自分の仕事に大きな影響を及ぼしている力を、無視できると信じ込んでいるようだ。組合の動きも、環境問題も、規制当局も、あるいは外国政府の規制さえも、本来は無視できないはずだ。

 そうした動きに目をつぶっていれば、到底エリートにはなれない。AMPでは、ありとあらゆる外部要因を考慮にいれながら事業目的を達成する創造的な解決策を教えている。

 3. リーダーシップ − 優秀なリーダーは、これから学ぶことに比べれば、今知っていることなどものの数に入らないことを知っている。

 目標達成への近道発見につながるアイデアや発想やひらめきに心を開いているから、アドバイザー、部下、取引先、コンサルタント、競争相手との対話をつねに忘れない。

 目標の追求と達成に欠かせないこのコミュニケーションは、AMPでは 「 発見の旅 」 と呼んでいる。

 エグゼクティブは世界一のマネージャーになることを目指して、この旅を続けるのだ。

 これらの能力を磨き、視野を広げ、新しい知識を身につけた受講生は、自分の部署を、あるいは会社全体を、自信をもって堂々と率いていけるようになる。

 アシュランド・オイルのフィリップ・アシュケトルはこう回想している。

 「 ハーバード AMPに行ってこいと社長からご指名を受けたとき、うちの会社ではそれが出世の通過儀礼でしたから行きましたけど、正直言って、学んだことよりも、行った事実の方が大事だろうと思っていたのです。

 ところが実際に受けてみると、私の人生で何物にも代えがたい学習経験になりました。得たものは二つあります。

 一つは、効率的なマネジメント、ビジネス・ビルディングの手法について、大きな発見があったこと。

 もう一つは、自分は会社を動かせる、つまりCEOになれる、しかもそれは遠い将来の話ではないと思うようになったことです。

 AMPを受講するまでは、ポストが空くののを待っていればよいと思っていたのですが、AMPから帰ってくるときには、アクセルをいっぱいに踏み込もうと決意したのです。

 AMPで得た知識が力になり、もっと大きな野心、もっと大きな夢を持っていいという自信が生まれたのです。

 そして、それからわずか3年後に、私は年商10億ドルのグローバル企業、ライコールド・ケミカルズのCEOになっていたのです。念願のトップの座につき、現在その会社の業績を伸ばしているのは、間違いなくAMPのおかげで、実に多くのことが役立ちました。

 たとえば、ITというものをビジネスの観点からはじめて見ることができたのです。それまでは、ITと聞けば、データを集めてレポートにやたら数字を並べるだけのものだと思っていました。ITをうまく使えば、市場で差別化を図れ、その競争力を維持できるということを教わったのです。

 今の会社でその知識を活かし、組織改革を図りました。私がCEOに就任したとき、ライコールドにはピラミッドの階層があまりに多すぎて、どうにも身動きがとれなくなっていたのです。

 そこで、人間と機能を結びつける手段としてITを使い、事業部を4つ廃止し、それをたくさんの事業チームに置き換えました。

 そして、チームリーダーが直接経営陣に報告する体制に改め、どのチームも会社の共同資源を活用できるようになりました。年商10億ドルの大企業に、ベンチャー企業がいくつも生まれたようなものです。

 かつてイスラエル陸軍の司令官だったモシュ・レビにとっても、AMPは跳躍の機会となった。

 レビはいま、キャンプデービッドやバッキンガム宮殿など、国の安全に関わる施設にセキュリティサービスを提供しているセーフガーズ・テクノロジーズ社のCEOである。

 「 AMPを受けると、自分の業績、チャレンジ、成功に必要な能力の水準をつねに上げていく方法を考えるようになります。私はハーバードに行って、一流企業のエグゼクティブのほかに、ワールドクラスの起業家とも知り合いになりました。

 AMPでの経験を土台に、私にだって大きな会社を経営できると思うようになりました。そこで、ハーバードをあとにするとすぐに、セーフガード・テクノロジーズの買収に乗り出したのです。当時はイギリスに本社があるコングロマリットの子会社でした。

 大事なのは、いろいろ勉強になっただけでなく、心が奮い立つことです。やろうと決めたら、かならず実現できることを、教えてくれるのです。私はセーフガーズを自分のものにしようと決めてから1年もたたないうちに、それを手中に収めていました。

 LBO ( レバレッジド・バイアウト: 買収先の資産及びキャッシュフローを担保に負債を調達し、買収した企業の資産の売却や事業の改善などを買収後に行うことによってキャッシュフローを増加させることで負債を返済していくM&A手法 ) でしたから、少ない現金出資で済みました。

 要するに、AMPのおかげでいろいろな可能性が見えてきたのです。 」

 AMPは現実を見据えている。消費者市場、金融市場、法廷闘争、役員室などできびしい試練を受けてきたものを教材にしているから、カリキュラムは生きたものであり、進化している。ビジネスに精通した超一流の人たちが教鞭をとり、伝説の経営者も臨時講師としてやってくる。

 出世のどの段階にあろうと、頂点を目指すエグゼクティブすべてにとって、これほど有益なものはない。

 AT&Tの元副社長のキャスリン・アンダーソンは言う。

 「 AMPに参加するまえ、私は経営の科学的モデルを模索していました。あらゆる問題に単純明快な答えを出すアルゴリズムがあると思っていたのです。しかし、そのようなモデルは存在しませんでした。

 日々直面するさまざまな問題には、アートとサイエンスを組み合わせ、難題やチャンスの性質に応じて、それぞれ異なった技能と感性で対応しなければならないのです。AMPを受講して、それがわかりました。

 そして、こちらも重要ですが、一定の方法論という ”お守り” なしに経営に取り組む勇気を与えられました。 」 

                   ( つづく )