“ 東京オリンピック2020年に浮かれる前に − それでエネルギー問題はどうするの? ” 著者の友人のバンカーが、日本の電力危機を救う、今までだれも気付かなかった処方箋を、数値に基づいて書いておりますので、ここに紹介させて頂きます。
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※1以下の文章は著者が個人として完全な「趣味」で書いた文章であり、特定の組織の意見を代表するものではありません。
※2同様に下記内容に基づいて読者が何かしらの投資行動をしても、その結果について一切の責任を著者は負いかねます。
※3初稿は限定公開と致しますが、事前に著者に御一報頂ければシェアと転載を一切拒絶するものではありません。
東京都知事のイスタンブール批判騒動、汚染水漏洩に関する欧米マスコミの突込みを見事に?かわして何と東京が2020年のオリンピック開催地になってしまった。 熱狂に沸く日本人、 「東京都知事は開催地招致を辞退するべきだ」 とネットで言っていた方々はどうするんだろう?
他の都市のプレゼンを見ていないので決定的なことは言えないが、東京への質疑応答に対する回答を見る限り、正直、「よくこんな感じで開催地招致勝ち取れたよな」と思った。 輸送手段に関する質問、汚染水に関する質問、いずれも「お約束します。保証します。」で具体策を言わずに切り抜けていた。
これで招致を勝ち取れるなら、私も明日から職場で上司から責められたら同じフレーズを使ってみたいものである。
世界に対する「約束」と「保証」がどんなに重いものか、2020年に思い知るようなことだけは避けてほしいものである。
マスコミ報道ベースで見る限り、東京には相応に勝算があったのだろう。イスタンブールは反政府デモが発生、元々、政教分離の世俗政権だったが、イスラム政党が台頭していると聞く。
このままイスラム政党が台頭して2020年を迎えたら女性選手の出場に問題が生じてもおかしくなかっただろう。
マドリード、スペインは欧州危機の中心地のひとつで、ギリシアの次はスペインかイタリアかと言われ続けていた。 失業率は一部報道で20%超とも言われており、経済不安や財政力に不安を感じられても仕方ない。
対する東京は原発事故・・・IOCのお偉いさんもきっと頭を抱えて悩まれたのだろう。
反政府デモか、経済不安か、原発事故か、究極の選択だったが、多分、最後はカネがものを言ったと思う。
あとは2020年までに大地震でも起きないように祈るしかないが、候補地が問題だらけだったらもう一度選定をし直しても良かったはず。 ここから先を語りだすと陰謀論しか出てこなさそうなので割愛しよう。 都合よく、候補地選定の直前に候補地にバッドニュースが流れる不思議な招致レースだったと思っている。
そんな冷めた一匹狼だが、もう少し冷めたことを書き連ねてみよう。
輸送手段の質問を聞いていたら東京都知事が 「毎日、何千(百?)万人もの旅客を鉄道網が輸送しています」 みたいなことを仰っていた。
でも、その動力である電気について、今、日本はゆれている。今年は大きな問題もなく、節電の夏を乗り切ったということになるが、電気の供給不安・電気料金の上昇が空洞化を招いているという声も聞こえる。
そもそも工業製品の生産に電気の安定供給は不可欠。 機械が規則正しく動かなければ品質が安定した工業製品は作れない。 その点で3.11までの日本は、諸外国とは異なり、停電もなく、安定した電圧で、安定した電気供給が出来ていた。
それが一変して、2年半近く。電力会社は今どうなっているのか? 例によって、門外漢のド素人が挑む、分析シリーズである。 今回は私の知的好奇心のまま、電気事業連合会の統計データを眺めて色々と調べてた。
因みに私自身、放射能汚染は次世代(日本の未来)のことを思うと大変困るが、日本経済の発展のために脱原発をしてしまうのは反対。 ドイツのように新エネルギーで行くといっても莫大な設備投資、転じて国民負担が増加する。
技術開発で頑張るといっても、新エネルギーはその発祥からして不安定性を抱え持つ。風力にせよ、太陽光にせよ、人間がどんなに頑張っても天気を操れなければ風をふかすことも、雲をどかして日照をコントロールすることもできないからだ。
従って、仮に日本で製造業を維持しようとするならば、不安定性が根底にある新エネルギーに根底から変える事は出来ないだろう。
そうすると既存の火力と水力に頑張ってもらうしかないだろう。 日本の発電量のうち、30%を賄っていたのは原子力、というのは3.11前の話。 3.11以後は、80%から90%が火力発電、残りは水力と原子力といった形だ。 火力発電がメインなのは電気の安定供給という点で一番コントロールしやすいのだろう。
だが、当然、コストも高くなる。原子力は「クリーンで安価」と言われていた。 今回はクリーンかどうかについては議論しないものの、確かに安かったと思われる。 過去20年超を見るに原子力発電のコストは水力といい勝負で3.11までは安い電力だった。
※この発電コストには燃料費、減価償却費、修繕費などが全て含まれていると推察されるが、詳細は非開示のため不明。
2011年になると原子力発電のコストが急激に上昇し、他の電力を引き離す。2012年段階では2012年の火力発電コスト対比で6-7倍になっている(グラフの範疇を逸脱)。
火力発電のコストも上がっている。2008年は資源価格の上昇でコストが上がったが、再び2010年から上昇傾向にあり、2012年には過去ピークの2008年に並んだ。
2008年は国際的な資源価格の上昇、2012年は電力会社の引き合いが増えたということ、また資源価格も徐々に上がっていることが原因であろう。
稼働率にも大きな変化があった。原発は安価のみならず稼働率も高い。最も高い時期には90%に近い時期もあり、3.11前でも60%台の稼働率を有していた。 ところが3.11後は一気に稼働率が下がり、一桁台である。
火力発電の稼働率が原子力発電の穴を埋めるように上がったというのであれば問題ない。 ところが、実際には火力発電の稼働率上昇はゆっくりしており、従前、40%台だったものが漸く60%であり、原子力の乱高下に比べると緩慢である。 古い火力発電所の稼働率云々というところまでデータからは裏づけが取れなかった。
これからどうするか?方法は幾つかあると思う。まずは火力発電の技術革新。燃焼効率を高めるとか熱回収能力を高めるとか火力は火力でも効率を上げる方法。
しかし、二酸化炭素削減の世界的な潮流の中、効率化にも限界があるかもしれない。CO2回収技術と組み合わせてゼロエミッションを中長期的に目指していくことが必要だろう。
世間は新エネルギーに眼がいきがちであるが、私は水力を再活性化できないかとデータを見て思った。 今回はグラフにしていないが、電力設備という点で水力発電設備は合計すると結構、容量が多い。
2012年段階で、日本中の水力発電所の発電能力は3600万KW、対する原子力発電所は4350万KW。 一箇所あたりの発電能力では水力発電所は大きく劣るものの、20%という稼働率をもう少し高められれば火力発電の補助的な役割を果たせるかもしれない。
しかも、水力発電所であれば、CO2排出も限定的ではないだろうか? (勿論、水力発電所には小規模、老朽化、地理的な分散と言う課題があるのだろうけど)前回の分析に引き続き今回も電気事業連合会のデータを手がかりにエネルギー問題をあくまで趣味の範囲で考えていきたいと思う。
実を言うと最初、金融経済におけるポートフォリオ理論に基づき、擬似的なポートフォリオを計算しようとしていた。
エネルギーにおけるリスクとリターンをどう考えるかは多用な考え方があるが、今回は各エネルギー毎の単位マージン(電力料金−発電コスト)を軸にしようとした。 ところが実際に計算をすると「ハイリスク・ハイリターン」にならない。
計算する前は原子力が「ハイリスク・ハイリターン」になると思っていた。つまり、マージンが高い半面、事故が起きるとマージンが大きなマイナスになる(リスクが高い)。
ところが、2012年までの平均ではマージンは最低。試しに2011年と2012年をはずして計算したが、著しい差が生まれない。 他の算出方法だと「ハイリスク・ハイリターン」かもしれないが、単位ごとのエネルギーとしての収益性を計算する限りでは絶対的に収益性が高いエネルギー源とはいえなさそうだ。
報道等では 「発電コストでは原子力が最も優位」 という表現がなされていたが、少なくとも価格を所与としたマージンではそこまで圧倒的な収益性を発揮するという類のものではなさそうだ。
但し、これは水力、火力、原子力で発電量を無視した単純な単位別のマージン。実際には発電量の大半を占めるのは火力であり、火力と原子力を比較すると原子力は火力発電対比では相応のコスト優位性を有しているようだ。 原子力を火力の代替エネルギー源とすれば十分な効果があったとも言えるだろう。
3.11は火力対比でコスト優位性を持つ原子力のリスクが発現してしまった事故だ。「事故さえ起きなければ」原子力にはコスト優位性がある。 しかし、一度、リスクが発現すると原子力のマージンは急激に悪化する。
マージンの標準偏差としてリスクを定義するのであれば原子力マージンのリスクは火力発電の7倍近い。 このリスク(標準偏差の大きな=ボラティリティ)は他のエネルギー源を圧倒している。
見ようによってはこんなにボラティリティの高く、それに見合う圧倒的なコスト優位性がないエネルギー源に国の発電量の30%を依存していいのかという疑問が出てきたとしてもおかしくない。
では、どうすればいいのか?机上の空論ついでに考えてみようと思う。私の答えは水力の稼働率を高めて発電量を確保するというもの。 最後のバブルチャートがその可能性を示唆している。
日本国内の発電設備の最大出力ベースでは火力:水力:原子力の比率は3.6:1:1.2。データ上では原子力と水力の発電設備容量は大きく離れていない。
しかし、過去20年余りの平均稼働率は原子力が60%以上、水力は20%。 発電量の比率では原子力30%に対して水力は10%未満。
一つの仮説だが、原子力の発電量が増えたのは原子力の稼働率の高さに負うところが大きい。 実際に前回示した過去の推移を見ると原子力の稼働率60%超という数字は火力、水力に比べて群を抜いて大きい。
勿論、水力は原子力に比べて発電量がコントロールできない難しさがある点は明記するべきだろう。 火力と原子力の発電は人の手によってコントロールできるが、水力は雨量や河川の流量に発電量が大きく依存する。
新エネルギーに期待する声は大きいが、2012年の発電能力は水力の65分の1。その将来性には未知の可能性があるが、水力に追いつくまでだけでもかなりの設備投資が必要だ。
マージンは実はそこまで悪くないが、水力クラスの商業運転ができるかどうか。 「今の発電設備で、追加的なコストを掛けずに発電量を確保する」 という点では難しい。
今ある設備で、追加コストをあまり掛けずに発電量を底上げするという点では水力の稼働率向上が現実的と思われるが、データに現れていない水力発電設備の老朽化対策にどう対応するか?
風力でも太陽光でもなく水力というのは世間一般の見立てとはかなり突拍子がないもののように思われるが、過去のマージン推移、潜在的な発電能力、上昇余地がある稼働率からすると現実的な路線と思うのだが、中々難しいものだろうか?