2015年03月29日

社員を熱狂的なヤル気にさせる (1)

 外資系企業の日本支社長を3社務め、『ジャイロ経営が社員のヤル気に火をつける』 の著者、秋元征紘氏が、グローバル企業の経営を通じて社員を熱狂的なヤル気にさせる仕組みを語っています。

 私も、米系金融機関で従業員の士気を向上させる委員会を引っ張っていた際に、非常に学ばせて頂きました。

 (引用 『ジャイロ経営が社員のヤル気に火をつける』)

 

 『  「志とパッション」

  私は40年余りのビジネスマンとしてのキャリアのうち、30年近くを外資系企業で過ごした。皮切りは日本KFC,そしてナイキジャパンに移り、95年からはLVMHグループのゲランの日本法人で社長を務めた。

 新卒で入社したのが日本精工で、創造性よりも従順さを求める組織運営に疑問を感じ、日本KFCに移った。業績も国籍も異なるこれらの企業だが、そのいずれにも圧倒的な存在感と卓越したリーダーシップを持つ企業家がいた。

 KFCのカーネル・サンダース、ペプシ・コーラのロジャー・エンリコ、ナイキのフィル・ナイト、そしてLVMHグループのベルナール・アルノー。いずれも地球規模でその名を知られた有名経営者たちである。ただ彼らの企業家としてのあり方はそれぞれ個性的で、けっして一つの型にはめられるものではない。

 私の目の前で、まるで魔法をかけるように現場スタッフのモチベーションを上げてみせたカーネル・サンダース。誰も思いつかないようなビッグ・アイデアでコーラ戦争に勝利したロジャー・エンリコ。

 “Just do it!” を合言葉に消費者とブランド、そして社員の間に強い感情的な絆を築き上げたベルナール・アルノー。

 やり方はそれぞれ異なるが、徹底的に絞り込まれた戦略の確かさと、社員のコミットメントの高さが、彼らに成功をもたらしたことは共通している。

  コミットメントを日本語にすれば 「全力を注いで参加する。」 という表現がもっとも近いだろう。モチベーションとコミットメントは混同されがちだが、全社が作業レベルの短期的なものを指すのに対し、後者はより長期的な仕事そのものに対するヤル気や、主体的なかかわり方を表す。

 強い企業は総じて社員のコミットメントが高い。

 “論理と感情のベクトルを最大化・最適化する”

 名だたる企業家のもとで経営経験を積み、企業が厳しい競争に勝利し続けるためには、戦略=絞り込まれた論理的な計画と、コミットメント=パッションを持った組織構成員の参画の二つが不可欠であると悟った。

  偉大なるブランドはみな、戦略とコミットメント、論理と感情の二つのベクトルを最大化かつ最適化することで勝利してきたのである。

 戦略だけが突出していても、パッションをもってそれを遂行する人がいなければ実現は不可能だし、肝心の戦略がまずければいくらコミットメント・レベルが高くても高くても空回りしてしまう。組織は戦略に従うとともに、戦略は組織に従うのである。

 しかし、ともすれば均衡を失いがちな二つのベクトルのバランスを保ちながら、それぞれを最大化、最適化していくには非常に困難な課題だ。

 この難問を解くカギは、企業家にあった。つまり、カーネル・サンダースであり、ロジャー・エンリコであり、フィル・ナイトであり、ベルナール・アルノーである。

 彼らが考えに考え抜いて絞り込んだ戦略が社員の熱いコミットメントを呼び、両者をもっとも高い水準で均衡させることで、ビジョンは現実のものとなっていったのである。

 もちろん社員を本気にさせ、コミットメントを引き出すのは簡単ではない。その難しさは私自身が経営者として痛感してきたことでもある。仕事に対する愛情や、ヤル気の乏しい社員はどこにでもいる。

 彼らさえいなくなれば組織はよくなると考えたこともあったが、そういう社員が辞めても結局すぐに同じような社員が出てくるだけで、私自身のやり方を変えない限り、問題は解決しないことに気付いた。

 逆に言えば、自分さえ進むべき方向とそのやり方を間違わなければ、大多数の社員のコミットメントは得られるということになる。ポイントは “企業家本人と戦略に対する絶対的な信頼、そして戦略立案プロセスにおける社員の参画の2つである。”

 この2つさえやっておけば間違いない。それだけのことができずに多くの企業が道に迷っている。試しに、あなたの会社の中期・長期経営計画を思い出してほしい。

 達成可能な安全圏の数字からなる数値目標はともかく、「意思決定のスピード化」 や 「高付加価値化」 といった定性的な目標に関しては、本音では眉唾ものだと感じている人が多いのではないだろうか。

 なぜなら、その目標は社員が参加して、納得づくで策定されたものではないし、何よりも肝心の経営者が本気でその達成を信じているようには見えない場合が多いからである。問われているのは経営者自身のコミットメントであり、それを裏打ちする企業家としての志、そしてパッションだ。

  “若者が3年で辞める理由”

 せっかく新卒で採用した若手社員が、入社してわずか3年で辞める例が後をたたない。若年層の離職率が高い理由は、彼らと親のふがいなさだけに求めるのは間違いだ。なぜ彼らは会社にも仕事にも魅力を感じられずに辞めていくかというと、次のような理由が見られる。

 @ 経営者に “志” が感じられない。または共感できない。
 A 会社のビジョンやバリュー、戦略がよく理解できない。
 B 経営計画の内容について十分な説明がない。自分の業務との関連性も不明瞭だ。
 C 経営の意思決定が遅く、またそのプロセスが不透明である。
 D 戦略や目標は突然上から押し付けられるもので、その決定に関する機会が与えられない。
 E 公正な評価に基づく昇給・昇格、人材開発が行われていない。
 F 官僚的な企業文化になじめない

 このような組織であれば、若者が辞めたくなるのも当然だろう。戦前の封建主義的な文化がまだ依然として残っており、今日でも同様の “ひずみ” はある。その “ひずみ”が社員のコミットメントを喪失させているのである。

  “ピープルズ・ビジネスの達人”

 優れた企業家はいちように、社員のコミットメントを引き出すことに長けている。アクセルを大きく踏み込んで一気に加速するタイプの人もいれば、万全のチューンアップと緻密なルート計画で誰よりも先にチェッカーフラッグを受ける者もいた。

 KFC(ケンタッキー・フライドチキン)の創業者、カーネル・サンダースが来日したとき、私は初めて社員のパッションに火がつく瞬間を目撃した。

 1955年に創業したKFCは、カーネル・サンダースが開発した11種類の秘伝のスパイスと圧力釜を用いたオリジナル・チキン・レシピを武器に、またたく間に全米にフランチャイズを拡げた。

 「アメリカでもっとも多くの百万長者を生んだ」 ビジネスとして隆盛を極めたKFCだったが、1970年代に入ると、世界的に肥大したフランチャイズ・システムのなかで創業の原点を忘れ、次第に方向性を見失うようになっていった。

 KFCを買収したヒューブライン社は、後にクラフト・フーズやフィリップモリスのCEOを務め、大物経営者として知られるマイク・マイルズを送り込み、ブランド再興に着手した。

 マイルズが行ったのが 「QSCVOOFAMP」 計画である。Quality(優れた製品品質) Service (店舗スタッフのフレンドリーで行き届いたサービス)Cleanliness (清潔な店舗)Values (価格に見合った価値) の4つの要素の水準を高めることが、競合に勝利するためには重要と考えたのだ。

 マイルズはさらにそこに, Other Operating Factors (店舗イメージや設備、情報管理システム) Advertising (広告・宣伝) Merchandising (商品化計画) Promotion (販売促進) を新たに加えて、これらすべての要素について創業時の原点に立ち返り、あらためて競争優位性を築くという戦略を打ち立てた。

 これだけではない。マイルズは直接顧客に接する店舗スタッフや加盟店オーナー、KFCのバックオフィスの社員、サプライヤーなど世界のKFCビジネスにかかわる数十万人の人たちにその精神を正しく理解させようとしたのである。

 この困難な課題に挑戦するため、マイルズは、10年前に引退していたカーネル・サンダースをブランドのシンボルとするために引っ張り出してきた。

 すでに80歳を超えて、体調も万全ではなかったサンダースにとって、世界中の店を回ることは体力的にも精神的にもきつかったはずだが、誰よりもKFCを愛していた彼は、マイルズの要請を快く引き受けたのだ。 』

 (つづく)
posted by ヒデキ at 16:06| Comment(0) | TrackBack(0) | MBAの知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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