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売買取引
それでは個別取引を見ていこう。最初は、ビジネスの基本であり、多くの人にとって身近な取引な取引である売買取引から見ていこう。ここでのポイントは発生主義である。
“ 売買はツケが基本 ”
企業が商品を購入したり販売したりする場合、同時に現金の授受をするようなことはしないのが普通である。例えば、物を購入する場合、当月末締めで購入先から請求書が送られてきて、翌月末にまとめて払うのが普通である。
売った側からしてみれば、物理的にモノを売ってから数か月遅れで現金が入る。つまり、ビジネスにおける売買は「ツケ」が基本である。ツケによる取引を掛取引という。
このようにツケを基本とするのは、多数の売買取引の都度いちいち現金のやり取りをしていたら大変だからである。このように、一定期間相手に支払い猶予を与える取引を信用取引と言う。
現金の支払についてはツケになっているが、売り手が販売し、買い手が購入したという事実は発生しているため、発生主義を大原則とする会計の立場としては、この事実を認識しなければならない。
もし、100円の売買を現金取引でやったのであれば、売り手と買い手の取引は以下の仕訳で表現される。
売り手
( 借方 ) 現金 100 ( 貸方 ) 売上高 100
(B/S 資産の増加 ) (P/L 収益の増加 )
買い手
( 借方 ) 仕入 100 ( 貸方 ) 現金 100
(P/L 費用の増加 ) (B/S 資産の減少 )
売り手の仕訳は、売上高という収益が発生した結果、現金という資産が増加したことを表している。
一方、買い手の仕訳は、仕入という費用が発生した結果、現金という資産が減少したことを表している。
では、これが現金取引ではなく信用取引になったらどうなるだろうか。信用取引であっても、発生主義の観点からは既に売上と仕入は発生している。違いは、現金の出入りはまだなく、ツケの状態であるという点である。
会計では、このツケの状態を売掛金(accounts receivable : AP)という勘定を使って表現する。売掛金とは売り手の請求権(債権=資産)を意味し、買掛金とは買い手の支払い義務(債務=負債)を意味する。
売掛金と買掛金を使うと、先ほどの取引で販売時、仕入れ時の仕訳は以下のようになる。
売り手
( 借方 ) 売掛金 100 ( 貸方 ) 売上高 100
( B/S 資産の増加 ) ( P/L 収益の増加 )
買い手
( 借方 ) 仕入 100 ( 貸方 ) 買掛金 100
( P/L 費用の増加 ) ( B/S 負債の増加 )
これは、収益と費用が発生し、それに伴い債権と債務が増加したという取引である。この仕訳けにより、現金の移動がなくても収益と費用が認識されることになり、発生主義の要請を満たすことになる。
一方、実際に入金と出金があったときは、以下のような取引が発生する。
売り手
( 借方 ) 現金 100 ( 貸方 ) 売掛金 100
( B/S 資産の増加 ) ( B/S 資産の減少 )
買い手
( 借方 ) 買掛金 100 ( 貸方 ) 現金 100
( B/S 負債の減少 ) ( B/S 資産の減少 )
売り手の仕訳は、現金という資産の増加の結果、売掛金という債権 (資産) が消滅したということを意味しており、買い手の仕訳は、現金という資産の減少の結果、買掛金という債務 (負債) が消滅したということを意味している。
いずれも、収益、費用とは切り離された債権、債務の増減取引である。
”売掛金すべてが回収できるとは限らない”
信用取引においては、収益と入金は切り離されている。実際に入金があるかどうかは債権回収の問題になる。
販売先の経営状態が問題なければ、例えば当月締め翌月払いのように、予め約束した支払サイクル通りに入金されるだろう。しかし、販売先の経営状態が悪化し資金繰りが悪くなってくると、期限どおりに支払われなかったり、最悪の場合は踏み倒されることもあり得る。
このような事態に備えて、会計では貸し倒れ引当金 ( allowance for bad debts ) を計上する。貸倒引当金とは、見込まれる損失額を費用として前倒しで計上するとともに、同額だけ債権額を減額するものである。
のちほど詳しく説明するが、一般に引当金 ( allowance ) とは以下の4要件が満たされるときには必ず計上しなければならない。
@ 将来の費用または損失
A その原因が当期以前の事象に起因
B 将来の費用または損失の発生可能性が低い
C 将来の費用または損失の合計を合理的に見積もれる
本質的な要件とは@ と Aであり、この要件が満たされるときに費用を前倒し計上する根拠は、原因は既に発生しているという発生主義であり、その原因を生んだ売上に対応させようという費用収益対応原則であり、バッド・ニュースは早めに開示しようという保守主義の原則である。
今、期末の売掛金の残高が1,000円だとする。このうち、2%は回収不能になるということがかなりの確率で合理的に算定されたとする。このとき、貸倒引当金を計上する期においては以下のような仕訳が行なわれる。
( 借方 ) 貸倒引当金繰入額 20 ( 貸方 ) 貸倒引当金 20
( P/L 費用の増加 ) ( B/S 負債の増加 )
貸倒引当金は将来のキャッシュ減額要因であるので負債であるが、貸借対照表上は売掛金から控除される形で計上される。この結果、売掛金は正味の回収可能額で表示されることになる。
また、貸倒引当金繰入額は通常販売費及び一般管理費に計上され、この期の費用として処理される。
翌期以降、実際に貸倒が起こった場合、以下のような仕訳をする。
( 借方 ) 貸倒引当金 20 ( 貸方 ) 売掛金 20
( B/S 負債の減少 ) ( B/S 資産の減少 )
これは、売掛金という資産が実際に回収不能になったが、前期以前に予め認識してあった減収要因である貸倒引当金 ( 負債 ) を取り崩している処理である。
貸倒引当金を計上した期に既に費用は計上しているので、実際に貸倒が発生した当期は、貸倒引当金という負債を取り崩すことによって費用は発生しない。
逆に、実際には貸倒が発生しなかった場合には貸倒引当金を収益に戻し入れる。
( 借方 ) 貸倒引当金 20 ( 貸方 ) 貸倒引当金戻入益 20
( B/S 負債の減少 ) ( P/L 収益の増加 )
当期に収益を20円増加させることによって、前期以前に前倒しで費用に計上した20円
を会計期間にまたがって帳消しするのである。この収益は前期以前に行なった処理の修正という性質を持つので、特別利益に計上される。
まとめ
◎ 売る方も買う方も掛取引が基本
◎ 発生主義の下では、売買行為の発生とそれに伴う現金の支払回収は別個に認識・計上する。
◎ 売上債権には貸倒引当金を設定する。
( 引用: MBA 財務会計 3 )
2013年04月28日
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